調べた際のメモです。個人的には電磁的記録提供命令に注目しています。
経緯
- 法制審議会は、諮問第122号を受けて、令和4年7月から令和5年12月までの間、刑事法(情報通信技術関係)部会(酒巻部会長)を置き、情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備について検討を行った。
- 準備として、令和3年3月から令和4年3月にかけて、刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会が行われている。
- 法制審議会は、令和6年2月15日、第119回会議において、部会において決定された要綱案が報告され、原案どおり採択され、法務大臣に答申された。
- 要綱案に対しては、日本弁護士連合会が電磁的記録提供命令の創設を含む刑事訴訟法等の改正に当たり、プライバシーの権利等を保護するための修正を求める意見書を法務大臣に提出している。
電磁的記録提供命令について
- 中身は捜査関係事項照会の強制処分バージョンであり、事業者の協力が必要な情報収集(ここが捜索差押の典型的なケースとは異なる)について、罰則をもって協力させること(捜索差押許可状ではこれができない)に意味があるのではないかと思われる。平成26年警察白書においても、Subpoena類似の制度の必要性を訴える記載があった。
- 久保委員(弁護士)の懸念にももっともな部分もあるが、刑事局としては現行刑訴法からすると提案されているセーフガードで十分という立場なのだと思われる。現行刑訴法自体にも不十分なところは多いと思われるが、(電磁的記録提供命令に関して提起された)問題に対処する一つの方法は、個人情報保護法の警察(公安委員会)に対する執行を強化し、必要に応じて(特に捜査においては本人に情報を提供するという個人情報保護の基本的な手法が取れない場面も多いことに鑑みて)特別の立法をすることではないかと思われる。
- 部会議事録において、電磁的記録提供命令について言及している箇所は以下のとおり。
要綱案の概要
- 訴訟に関する書類の電子化
- 電磁的記録による公判調書の作成等
- 電磁的記録である訴訟に関する書類等の閲覧・謄写
- 申立て等及びその記録の電子化
- 電磁的方法による告訴・告発等
- 電磁的記録の送達
- 公判廷における電磁的記録の取調べ等
- 供述の内容を記録した電磁的記録等の作成及び取扱い
- その他所要の規定の整備
- 電磁的記録による令状の発付・執行等に関する規定の整備
- 電磁的記録による召喚状、勾引状、勾留状及び鑑定留置状の発付・執行
- 電磁的記録による差押状等の発付・執行
- 電磁的記録による刑事訴訟法第119条の証明書等の提供
- 電磁的記録による刑事訴訟法第168条第2項の許可状の発付・執行
- 電磁的記録による逮捕状の発付・執行
- 検察官等がする差押え等に係る電磁的記録による令状の発付・執行
- 電磁的記録による刑事訴訟法第225条第3項の許可状の発付・執行
- 電磁的記録による収容状の発付・執行
- その他所要の規定の整備
- 電磁的記録を提供させる強制処分の創設
- 裁判所による電磁的記録提供命令
- 命令拒絶事由
- 目録の交付
- 移転をさせた電磁的記録の原状回復
- 捜査機関による電磁的記録提供命令
- 捜査機関による電磁的記録提供命令についての準用
- 不服申立て
- 罰則
- 記録命令付差押え(刑事訴訟法第99条の2)の廃止
- その他所要の規定の整備
- 電磁的記録である証拠の開示等
- 電磁的記録である証拠の閲覧等の機会の付与
- 電磁的記録をもって作成された証拠の一覧表の提供等
- 訴訟に関する書類の電子化
- 刑事施設等との間における映像と音声の送受信による勾留質問・弁解録取の手続を行うための規定の創設
- 裁判所と刑事施設等との間における映像と音声の送受信による勾留質 問の手続
- 検察庁と刑事施設との間における映像と音声の送受信による弁解録取 の手続
- 映像と音声の送受信による裁判所の手続への出席・出頭を可能とする制度の創設
- 映像と音声の送受信による公判前整理手続期日等への出席・出頭
- 映像と音声の送受信による公判期日への出席・出頭
- 映像と音声の送受信による裁判員等選任手続期日への出席・出頭
- その他所要の規定の整備
- 証人尋問等を映像と音声の送受信により実施する制度の拡充
- 証人尋問を映像と音声の送受信により実施する制度の拡充
- 鑑定を命ずる手続を映像と音声の送受信により実施する制度の拡充
- 通訳を映像と音声の送受信により実施する制度の拡充
- その他所要の規定の整備
- 刑事施設等との間における映像と音声の送受信による勾留質問・弁解録取の手続を行うための規定の創設
- 電磁的記録をもって作成される文書の信頼を害する行為を処罰するための罰則の創設
- 公電磁的記録文書等偽造等の罪
- 虚偽公電磁的記録文書等作成等の罪
- 電磁的記録免状等不実記録の罪
- 偽造公電磁的記録文書等行使等の罪
- 私電磁的記録文書等偽造等の罪
- 虚偽電磁的記録診断書等作成の罪
- 偽造私電磁的記録文書等行使の罪
- その他所要の規定の整備
- 電子計算機損壊等による公務執行妨害の罪の創設
- 新たな犯罪収益の没収の裁判の執行及び没収保全等の手続の導入
- 暗号資産等の没収の裁判の執行等
- 暗号資産等の没収保全手続
- 罰則
- その他所要の規定の整備
- 通信傍受の対象犯罪の追加
- 電磁的記録をもって作成される文書の信頼を害する行為を処罰するための罰則の創設