改正犯収法の条文を読むのが面倒だったので関連資料をChatGPTに入れて解説を書かせたところ、思いの外よいものが出てきたので、一部手を加えた上で、サンプルとして公開します。
特定の捜査手法について、(令状によらない)詳細な組織的統制を定めている点は、サイバー対処能力強化法整備法による警職法改正を想起しました。
プロンプト
添付資料をよく調べて、改正法の解説をドラフトして。条文と背景・趣旨などが分かる形にして。概要(全体像)→改正項目ごとの概要(背景、趣旨、目的、項目ごとの全体像など)→具体的な条文の解説、という流れにして。条文を引用するときは、「(●条)」という形で番号を明示して。条文番号は原則として「第」を省略するが、枝番のため、「第」を省略してしまうと次のレベルの数字との区別がつかなくなる箇所に限って「第」を付けて。
(添付ファイル:法律案、新旧対照表、懇談会報告書、資金決済WG報告書)
GPT 5.5のThinking modeです。相当量のカスタムプロンプトを事前に設定しています。
資料
目次
- 概要
- 1. 預貯金通帳等の不正譲渡等に係る罰則の引上げ
- 2. 「送金バイト」を利用する行為に対する新たな罰則
- 3. 「架空名義口座」を利用した口座等犯罪利用防止措置の創設
- 4. 特定信託受益権に係るトラベルルールの整備
- 5. 監督違反等の罰則整理、関連法令改正及び施行期日
概要
本改正は、金融サービスを悪用したマネー・ローンダリング対策として、主に次の4つを内容とする。
- 預貯金通帳等の不正譲渡等に係る罰則の引上げ
預貯金通帳、キャッシュカード、暗号資産交換用情報、電子決済手段等取引用情報等の不正な譲受け・譲渡し等について、法定刑を引き上げる。 - 「送金バイト」を利用する行為に対する新たな罰則の創設
他人に報酬を支払って、その者自身の口座等を利用させて財産を移転させる行為について、新たに処罰規定を設ける。 - 「架空名義口座」を利用した口座等犯罪利用防止措置の創設
警察官が、金融機関等の協力を得て犯罪利用防止措置用口座等を開設し、口座売買や送金バイトの募集者に対して措置を行い、犯罪利用口座等への財産移転を防止する制度を設ける。 - 特定信託受益権に係るトラベルルールの整備
受益証券発行信託に係る特定信託受益権のうち無記名受益権に該当しないものについては、従前どおり電子決済手段のトラベルルールの対象から除外する一方、受益証券発行信託によらない特定信託受益権については、送付人・受取人情報を把握する必要があるため、トラベルルールの対象とする。
改正の背景には、特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺等の被害拡大、振込型被害の増加、他人名義口座や暗号資産等を利用したマネー・ローンダリングの増加がある。懇談会報告書は、令和6年の財産犯被害額が約4,021億円、詐欺被害額が約3,075億円に達したこと、特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の被害がさらに増加していることを指摘している。
なお、特定信託受益権については、資金決済WG報告書が背景である。従来、特定信託受益権は、トラベルルールの対象から除外されていたが、受益証券発行信託によらない特定信託受益権の発行が検討されるようになった。この場合、受益権原簿による送付人・受取人情報の把握ができず、電子決済手段等取引業者等に送付人及び受取人の情報を把握させる必要があることが指摘されていた。
1. 預貯金通帳等の不正譲渡等に係る罰則の引上げ
1.1 概要
現行法は、預貯金通帳、キャッシュカード、暗号資産交換用情報、電子決済手段等取引用情報等について、不正な譲受け、譲渡し、提供、勧誘等を処罰している。本改正は、これらの行為について、基本類型の法定刑を「1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金」から「3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金」に、業として行う類型を「3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金」から「5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金」に引き上げる。
対象は、預貯金通帳等に限られず、高額電子移転可能型前払式支払手段利用情報、為替取引カード等、電子決済手段等取引用情報、電子決済等利用情報、暗号資産交換用情報にも及ぶ。
1.2 背景・趣旨
懇談会報告書は、預貯金口座等が特殊詐欺等の前提となる犯罪に利用されていること、令和6年の犯罪収益移転防止法28条違反の検挙件数が4,362件に達し、平成23年の検挙件数1,260件の約3.5倍となっていること、金融機関による預貯金口座の利用停止・強制解約等も令和6年度に128,301件に上っていることを指摘している。
同報告書は、預貯金通帳等の不正譲渡等について、特殊詐欺等の前提となり得る犯罪であり、近年の特殊詐欺等の被害拡大により当罰性が一層高まっているとする。また、預貯金口座等の利用の適正という社会的法益の保護の重要性も増しているとして、法定刑の引上げを方向性として示している。
1.3 具体的な条文の解説
改正後の本人特定事項隠蔽目的の本人確認義務違反については、法定刑が「3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科」に引き上げられる(25条)。
預貯金通帳等については、他人になりすまして預貯金契約に係る役務の提供を受ける目的で、預貯金通帳等を譲り受ける行為、交付を受ける行為又は提供を受ける行為が「3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科」とされる。有償で預貯金通帳等を譲り受ける行為等も同様である(26条1項)。また、相手方に当該目的があることを知って譲り渡す行為等、及び正当な理由なく有償で譲り渡す行為等も同様に処罰される(26条2項)。業としてこれらの罪に当たる行為をした者は、「5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金又は併科」とされる(26条3項)。
同様の罰則引上げは、高額電子移転可能型前払式支払手段利用情報(27条)、為替取引カード等(28条)、電子決済手段等取引用情報(29条)、電子決済等利用情報(30条)、暗号資産交換用情報(31条)にも及ぶ。これにより、預貯金口座だけでなく、前払式支払手段、資金移動、電子決済手段、電子決済等、暗号資産交換に係る各種金融サービスの不正利用防止が一体的に強化される。
2. 「送金バイト」を利用する行為に対する新たな罰則
2.1 概要
本改正は、他人に報酬を支払い、その者自身の預貯金口座等を利用して財産を移転させる行為を「特定役務利用財産移転行為」として定義し、正当な理由なく有償でその行為を依頼し、誘引し、引き受け、又は実行する行為を処罰する新設規定を設ける(32条)。
2.2 背景・趣旨
懇談会報告書は、匿名・流動型犯罪グループが、SNS等を通じて送金代行の名目で者を募集し、応募者本人の預貯金口座等に入金された財産を別の口座や暗号資産口座等に送金させる手口を「送金バイト」として説明している。典型的には、口座名義人が自己名義口座の管理を継続したまま、報酬を得て入金財産を別口座へ移転する。
現行の犯罪収益移転防止法28条等は、他人になりすまして口座等の役務提供を受けることを目的とする預貯金通帳等の譲受け・譲渡し等を処罰対象としている。しかし、「送金バイト」では、送金行為者自身が自己名義口座を用いて送金しており、送金依頼者が口座名義人になりすまして役務提供を受けているとはいえない。また、送金依頼者に提供される情報は通常、口座番号等にとどまり、キャッシュカード暗証番号やネットバンキングID・パスワードのような口座内資金を直接移動させるための情報ではない。このため、現行法の適用は基本的に困難とされている。
懇談会報告書は、「送金バイト」を利用する行為が、実質的には他人名義の銀行口座等を不正に利用する行為であり、現行28条等に該当する行為と実質的に同価値である一方、現行法では処罰が困難であるとして、新たな罰則の創設を方向性として示している。
2.3 具体的な条文の解説
新設される32条1項は、通常の商取引又は金融取引として行われることその他の正当な理由がないのに、自己又は第三者が管理し、又は管理しようとする財産を移転する目的で、人に有償で特定役務利用財産移転行為を依頼した者を処罰する。法定刑は「2年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科」である。また、同じ目的で、有償で特定役務利用財産移転行為をするよう広告その他これに類似する方法により人を誘引した者も同様に処罰される(32条1項)。
32条2項は、依頼を受ける側を処罰する。通常の商取引又は金融取引として行われることその他の正当な理由がないのに、他人の依頼を受け、その依頼者に32条1項前段の目的があることを知って、有償で特定役務利用財産移転行為をした者が処罰される。また、特定役務利用財産移転行為を引き受けることを示して、有償での実施を自己に依頼するよう人を勧誘し、又は広告等により誘引した者も処罰対象となる(32条2項)。
32条3項は、業として32条1項前段又は32条2項前段の罪に当たる行為をした者について、法定刑を「3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科」とする(32条3項)。
32条4項は、「特定役務利用財産移転行為」を定義する。対象となる行為は、次の3類型である。
- 預貯金契約等役務を利用して自己以外の者に財産を移転する行為である(32条4項1号)。
- 預貯金契約等役務を利用して受け取った財産に相当する財産の全部又は一部を自己以外の者に移転する行為である(32条4項2号)。
- 預貯金契約等役務を利用して財産を受け取ることを約し、当該財産に相当する財産の全部又は一部を自己以外の者に移転する行為である(32条4項3号)。
「預貯金契約等役務」には、預貯金契約、高額電子移転可能型前払式支払手段利用契約、電子決済手段等取引契約、電子決済等利用契約、暗号資産交換契約に係る役務のほか、預貯金取扱事業者又は資金移動業者との間における為替取引による送金又は受取に係る役務が含まれる(32条4項1号イからホまで)。
この規定は、有償性、目的、正当な理由の不存在を要件とすることで、食事代の立替精算、家族間の送金代行、法令上認められた為替取引など、正当な社会経済活動として行われる送金代行行為を処罰対象から除外する構造を採っている。懇談会報告書も、正当な社会経済活動等の一環で行われる送金代行行為を規制対象から除く必要性を示している。
3. 「架空名義口座」を利用した口座等犯罪利用防止措置の創設
3.1 口座等犯罪利用防止措置の創設
3.1.1 概要
本改正は、犯罪収益移転防止法に「第四章の二 口座等犯罪利用防止措置」を新設し、警察官が、警察本部長の指揮を受けて、金融機関等に犯罪利用防止措置用口座等の開設又は設定を求めることができる制度を設ける(19条の2)。その上で、口座売買や送金バイトを募集・誘引する者に対し、警察官が身分等を秘して犯罪利用防止措置用通帳等を譲渡・提供し、又は口座等関係情報を提供するなどの措置を行うことができる(19条の3)。
3.1.2 背景・趣旨
懇談会報告書は、これまでの対策として、本人確認方法の厳格化、インターネット上の口座売買勧誘情報の削除、在留外国人の在留期間満了後の口座管理の厳格化、犯罪利用口座の凍結、金融機関のモニタリング強化等を挙げた上で、預貯金口座等が悪用されて行われる特殊詐欺等の情勢は悪化していると指摘している。
このため、罰則の見直しだけではなく、預貯金口座等が犯罪に利用されることを防止する新たな施策として、警察が金融機関等の協力を得て開設する「架空名義口座」を利用した措置を導入する必要があるとされている。懇談会報告書は、この措置を、預貯金口座等の犯罪利用を防止する行政上の目的を有する行政警察活動と位置付けている。
3.1.3 具体的な条文の解説
19条の2は、警察官が、口座等犯罪利用防止措置を実施するため、警察本部長の指揮を受けて、特定事業者に対し、犯罪利用防止措置用口座等を開設又は設定するよう求めることができると定める(19条の2)。対象となる特定事業者は、預貯金取扱事業者、高額電子移転可能型前払式支払手段発行者、資金移動業者、電子決済手段等取引業者、電子決済等取扱業者等、暗号資産交換業者である(19条の2第1号から第6号まで)。
「犯罪利用防止措置用口座等」とは、警察本部長と特定事業者との契約により開設又は設定される口座等であり、当該口座等が口座等犯罪利用防止措置のために用いられるものであることが相手方等に推知されないようにする措置が講じられるものをいう(19条の2)。
19条の3は、警察官が、預貯金口座等の犯罪利用を防止するため必要があると認めるとき、犯罪利用防止措置用通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供すること、特定役務利用財産移転行為を受託して財産受取に必要な口座等関係情報を提供すること、その他犯罪利用防止措置用口座等又は犯罪利用防止措置用通帳等を用いた措置を講ずることができると定める(19条の3)。
同条は、警察官が当該措置を的確に実施するために必要な範囲で、氏名、身分、犯罪利用防止措置用通帳等又は口座等関係情報が犯罪利用防止措置用口座等に係るものであること等を隠し、又は偽ることができるとする(19条の3)。対象となる相手方は、預貯金通帳等、電子決済手段等取引用情報、暗号資産交換用情報等を譲渡・提供するよう勧誘又は誘引する者、及び有償で特定役務利用財産移転行為を依頼又は誘引する者であり、正当な理由があると認められる者は除かれる(19条の3第1号・第2号)。
19条の4は、警察官が口座等犯罪利用防止措置を講じた場合に、必要があると認めるときは、特定事業者に対し、犯罪利用防止措置用口座等に係る取引情報の提供その他必要な協力を求めることができるとする(19条の4)。
3.2 犯罪利用防止措置用口座等に移転された財産の返還
3.2.1 概要
本改正は、口座等犯罪利用防止措置の結果、犯罪利用防止措置用口座等に財産が移転された場合、その財産を警察本部長が保管し、原則として移転を行った者に返還する制度を設ける(19条の5、19条の6)。
3.2.2 背景・趣旨
懇談会報告書は、「架空名義口座」に移転された財産は、本来警察にとって取得原因のないものであり、警察は入金者に返還する必要があるとしている。その一方で、入金者が犯罪グループである場合や、入金財産が犯罪収益である場合には、返還が犯罪捜査や犯罪収益の剝奪を妨げるおそれがあるため、一定の場合に返還手続を留保できる仕組みが必要であるとしている。
3.2.3 具体的な条文の解説
19条の5は、口座等犯罪利用防止措置が講じられた場合に、犯罪利用防止措置用口座等への財産移転があったとき、又は犯罪利用防止措置用通帳等の譲渡等の対価その他の事由により警察官へ財産移転があったとき、警察本部長が当該財産を保管しなければならないと定める(19条の5第1項)。保管財産が滅失・毀損するおそれがある場合又は保管・返還に過大な費用等を要する場合には、換価して金銭を保管できる(19条の5第2項)。
19条の6は、警察本部長が、保管原因行為を行った者に対し、保管財産を返還するものとする。ただし、この節の規定の施行又は犯罪捜査に支障を及ぼすおそれがある場合、犯罪利用防止措置用口座等に係る払戻請求訴訟や強制執行・仮差押え・仮処分手続がある場合、国家公安委員会規則で定める事情がある場合には、事情がやんだ後に返還する(19条の6第1項)。
返還に要する費用は返還を受ける者の負担とされ(19条の6第3項)、返還財産には利息を付さない(19条の6第5項)。これは、懇談会報告書が示す「本制度の持続可能性の確保」と「より多くの被害者の救済」の観点に対応する。
19条の7は、返還のため、警察本部長に必要な調査義務を課し、公務所又は公私の団体に照会して必要事項の報告を求める権限を認める(19条の7第1項・第2項)。返還を受けるべき者を認めたときは、その者に返還手続を通知しなければならない(19条の7第3項)。
19条の8は、調査しても返還を受けるべき者又はその所在が判明しない場合に、警察本部長が警察庁長官に公告を求め、警察庁長官が必要事項を公告する制度を定める(19条の8)。19条の9は、返還時に返還を受けるべき者であることを確認し、受領書と引換えに返還すること、返還のため必要があるときは報告・資料提出を求め、又は警察官に質問させることができることを定める(19条の9)。
19条の10は、公告の日から6月を経過しても返還を受けるべき者又はその所在が判明しない場合、又は返還請求権が放棄された場合に、返還請求権が消滅すると定める(19条の10)。
3.3 特定被害回復給付金制度
3.3.1 概要
本改正は、返還請求権が消滅した保管財産について、一定の場合に、特殊詐欺等の被害者に対する「特定被害回復給付金」の原資とする制度を設ける。これにより、犯罪利用防止措置用口座等に直接入金した者への返還ができない場合でも、当該財産を被害回復に活用することが可能となる(19条の11以下)。
3.3.2 背景・趣旨
懇談会報告書は、公告しても返還できない保管財産について、何らかの詐取金や被害金に由来する蓋然性が高いことを踏まえ、「架空名義口座」に直接財産を移転した被害者以外の被害者の被害回復のための給付金原資とすることが望ましいとしている。
また、支給対象については、振り込め詐欺救済法における振込利用犯罪行為の被害者を参考に、預貯金口座等を通じて被害金を移転させた被害者を中心とする方向性が示されている。現金手交型などは、保管財産との追跡が実務上困難であるため、支給対象から除くこともやむを得ないとされている。
3.3.3 具体的な条文の解説
19条の11は、「特定被害回復給付金」「給付資金」「支給対象犯罪行為」「費用」を定義する。支給対象犯罪行為は、詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為であって、人に移転元預貯金口座等に対する財産移転を行わせることにより財産を害したものとされる(19条の11第3号)。
19条の12は、公安委員会が、支給対象犯罪行為により財産を失った対象被害者又はその一般承継人に対し、特定被害回復給付金を支給すると定める(19条の12)。
19条の13は、支給を受けることができない者を定める。損害の全部について塡補又は賠償がされた者、支給対象犯罪行為を実行した者、共犯として加功した者、関連して不正な利益を得た者、財産喪失について自己に不法な原因がある者、その他支給を受けることが社会通念上適切でない者等は、給付を受けることができない(19条の13)。
19条の14は、返還請求権が消滅した保管財産について、移転元預貯金口座等がある場合、警察本部長が公安委員会に対し、特定被害回復給付金支給手続の開始を求めなければならないとする(19条の14第1項)。公安委員会は、求めがあったときは、遅滞なく支給手続開始決定をし、当該保管財産を給付資金として保管する(19条の14第2項・第4項)。
3.4 適用除外及び振り込め詐欺救済法との関係
3.4.1 概要
本改正は、口座等犯罪利用防止措置を円滑に実施するため、犯罪利用防止措置用口座等に係る一定の取引について、特定事業者の取引時確認等の義務の適用を除外する。また、警察官が措置又は準備のために行う行為について、預貯金通帳等の不正譲渡等に係る罰則や「送金バイト」関連罰則の一部を適用しないことを明記する(19条の28)。
3.4.2 背景・趣旨
懇談会報告書は、協力する金融機関が法令違反や訴訟リスクにさらされないよう、法的な立場を安定させる必要があると指摘している。また、犯罪利用防止措置用口座等に入金された財産については、振り込め詐欺救済法による手続の対象ではなく、本制度による返還又は給付金原資等となることを明確にすべきとされている。
3.4.3 具体的な条文の解説
19条の28第1項は、犯罪利用防止措置用口座等に係る取引について、取引時確認、確認記録の作成・保存、疑わしい取引の届出等に係る一定規定を適用しないと定める(19条の28第1項)。
19条の28第2項は、警察官が口座等犯罪利用防止措置又はその準備のために行う行為について、預貯金通帳等、高額電子移転可能型前払式支払手段利用情報、為替取引カード等、電子決済手段等取引用情報、電子決済等利用情報、暗号資産交換用情報に係る不正譲渡等の罰則、及び32条2項前段の規定を適用しないと定める(19条の28第2項)。
19条の28第3項は、特定事業者が、警察の求めに応じて開設・設定した犯罪利用防止措置用口座等に係る通帳等を警察官に交付又は提供する行為について、不正譲渡等の罰則を適用しないと定める(19条の28第3項)。
19条の28第4項は、犯罪利用防止措置用口座等について、振り込め詐欺救済法2章から4章までの規定を適用しないと定める(19条の28第4項)。これにより、犯罪利用防止措置用口座等に入金された財産は、振り込め詐欺救済法上の被害回復分配金手続ではなく、本改正で新設される返還手続及び特定被害回復給付金手続によって処理される。
4. 特定信託受益権に係るトラベルルールの整備
4.1 概要
本改正は、電子決済手段等取引業者が外国所在電子決済手段等取引業者との間で電子決済手段の移転を継続的又は反復して行う契約を締結する際の確認義務について、特定信託受益権の除外範囲を見直すものである(10条の2)。具体的には、従来「特定信託受益権」全体が除外されていたところ、除外対象を、信託法185条3項に規定する受益証券発行信託に係るものであって、同法110条3項に規定する無記名受益権に該当しないものに限定する(10条の2)。
4.2 背景・趣旨
2022年の犯罪収益移転防止法改正では、電子決済手段等取引業者に対し、電子決済手段の移転時に送付人及び受取人の情報を取得し、受取人が利用する電子決済手段等取引業者に通知する義務、すなわちトラベルルールが新設された。特定信託受益権については、当時、受益証券発行信託の信託受益権として発行され、譲渡の際に受益権原簿の書換えが行われることが想定されていたため、発行者である信託会社等が受益権原簿により受益者情報及び取引経路を把握できるものとして、トラベルルールの対象から除外された。
その後、受益証券発行信託の仕組みによらない特定信託受益権の発行を検討する動きがみられ、この場合には、受益者情報を把握できる受益権原簿が存在せず、信託会社等が特定信託受益権の送付人及び受取人の情報を把握できない。このため、受益証券発行信託によらない特定信託受益権については、トラベルルールの適用等を通じて電子決済手段等取引業者等に送付人及び受取人の情報を把握させる必要があるとされた。
4.3 具体的な条文の解説
10条の2は、電子決済手段等取引業者が外国所在電子決済手段等取引業者との間で、電子決済手段の移転を継続的又は反復して行うことを内容とする契約を締結する際に、当該外国所在電子決済手段等取引業者について所定事項を確認しなければならない旨を定める規定である(10条の2)。
本改正では、まず、10条の2の適用主体である「電子決済手段等取引業者」の範囲について、資金決済法62条の8第2項により電子決済手段等取引業者とみなされる特定事業者の参照対象に、2条2項25号に掲げる特定事業者を追加する(10条の2)。
次に、「電子決済手段」の定義部分について、除外される特定信託受益権を、信託法185条3項に規定する受益証券発行信託に係るものであって、同法110条3項に規定する無記名受益権に該当しないものに限定する(10条の2)。この結果、受益証券発行信託によらない特定信託受益権、又は無記名受益権に該当する特定信託受益権は、10条の2における「電子決済手段」から除外されず、外国所在電子決済手段等取引業者との契約締結時確認の対象となる(10条の2)。
さらに、電子決済手段の移転から除外される「電子決済手段の交換等」について、従前の「同条10項」という参照を、「資金決済に関する法律2条10項」に改める(10条の2)。これは、10条の2内部で資金決済法2条5項の電子決済手段、同条9項の特定信託受益権、同条10項の電子決済手段の交換等を参照する構造を明確にする技術的整備である。
5. 監督違反等の罰則整理、関連法令改正及び施行期日
5.1 監督違反等の罰則整理
改正法は、既存の罰則規定を整理し、条番号を移動させる。18条の規定による命令違反は33条に置かれ、法定刑は「2年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科」とされる(33条)。報告・資料提出義務違反、虚偽報告、質問への不答弁、虚偽答弁、検査拒否等については、34条に置かれ、法定刑は「1年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科」とされる(34条)。
法人両罰規定についても、条番号の整理と罰金額の調整が行われる。新旧対照条文では、31条が35条へ移動し、命令違反等に係る法人罰の対象条文・罰金額が改められている。
5.2 関連法令改正
特定複合観光施設区域整備法については、犯罪収益移転防止法の罰則条文の移動に伴い、引用条文の整備が行われる(附則3条・4条)。
5.3 施行期日
本改正は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内で政令で定める日から施行される。ただし、第一条、附則2条及び附則3条の規定は、公布の日から起算して1月を経過した日から施行される(附則1条)。施行に関し必要な経過措置は、罰則に関する経過措置を含め、政令で定める(附則2条)。