令和8年犯罪収益移転防止法改正の概要(ChatGPT生成)

改正犯収法の条文を読むのが面倒だったので関連資料をChatGPTに入れて解説を書かせたところ、思いの外よいものが出てきたので、一部手を加えた上で、サンプルとして公開します。

特定の捜査手法について、(令状によらない)詳細な組織的統制を定めている点は、サイバー対処能力強化法整備法による警職法改正を想起しました。

 

プロンプト

添付資料をよく調べて、改正法の解説をドラフトして。条文と背景・趣旨などが分かる形にして。概要(全体像)→改正項目ごとの概要(背景、趣旨、目的、項目ごとの全体像など)→具体的な条文の解説、という流れにして。条文を引用するときは、「(●条)」という形で番号を明示して。条文番号は原則として「第」を省略するが、枝番のため、「第」を省略してしまうと次のレベルの数字との区別がつかなくなる箇所に限って「第」を付けて。

(添付ファイル:法律案、新旧対照表、懇談会報告書、資金決済WG報告書)

GPT 5.5のThinking modeです。相当量のカスタムプロンプトを事前に設定しています。

 

資料

 

目次

 

概要

本改正は、金融サービスを悪用したマネー・ローンダリング対策として、主に次の4つを内容とする。

  1. 預貯金通帳等の不正譲渡等に係る罰則の引上げ
    預貯金通帳、キャッシュカード、暗号資産交換用情報、電子決済手段等取引用情報等の不正な譲受け・譲渡し等について、法定刑を引き上げる。
  2. 「送金バイト」を利用する行為に対する新たな罰則の創設
    他人に報酬を支払って、その者自身の口座等を利用させて財産を移転させる行為について、新たに処罰規定を設ける。
  3. 「架空名義口座」を利用した口座等犯罪利用防止措置の創設
    警察官が、金融機関等の協力を得て犯罪利用防止措置用口座等を開設し、口座売買や送金バイトの募集者に対して措置を行い、犯罪利用口座等への財産移転を防止する制度を設ける。
  4. 特定信託受益権に係るトラベルルールの整備
    受益証券発行信託に係る特定信託受益権のうち無記名受益権に該当しないものについては、従前どおり電子決済手段のトラベルルールの対象から除外する一方、受益証券発行信託によらない特定信託受益権については、送付人・受取人情報を把握する必要があるため、トラベルルールの対象とする。

改正の背景には、特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺等の被害拡大、振込型被害の増加、他人名義口座や暗号資産等を利用したマネー・ローンダリングの増加がある。懇談会報告書は、令和6年の財産犯被害額が約4,021億円、詐欺被害額が約3,075億円に達したこと、特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の被害がさらに増加していることを指摘している。

なお、特定信託受益権については、資金決済WG報告書が背景である。従来、特定信託受益権は、トラベルルールの対象から除外されていたが、受益証券発行信託によらない特定信託受益権の発行が検討されるようになった。この場合、受益権原簿による送付人・受取人情報の把握ができず、電子決済手段等取引業者等に送付人及び受取人の情報を把握させる必要があることが指摘されていた。

1. 預貯金通帳等の不正譲渡等に係る罰則の引上げ

1.1 概要

現行法は、預貯金通帳、キャッシュカード、暗号資産交換用情報、電子決済手段等取引用情報等について、不正な譲受け、譲渡し、提供、勧誘等を処罰している。本改正は、これらの行為について、基本類型の法定刑を「1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金」から「3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金」に、業として行う類型を「3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金」から「5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金」に引き上げる。

対象は、預貯金通帳等に限られず、高額電子移転可能型前払式支払手段利用情報、為替取引カード等、電子決済手段等取引用情報、電子決済等利用情報、暗号資産交換用情報にも及ぶ。

1.2 背景・趣旨

懇談会報告書は、預貯金口座等が特殊詐欺等の前提となる犯罪に利用されていること、令和6年の犯罪収益移転防止法28条違反の検挙件数が4,362件に達し、平成23年の検挙件数1,260件の約3.5倍となっていること、金融機関による預貯金口座の利用停止・強制解約等も令和6年度に128,301件に上っていることを指摘している。

同報告書は、預貯金通帳等の不正譲渡等について、特殊詐欺等の前提となり得る犯罪であり、近年の特殊詐欺等の被害拡大により当罰性が一層高まっているとする。また、預貯金口座等の利用の適正という社会的法益の保護の重要性も増しているとして、法定刑の引上げを方向性として示している。

1.3 具体的な条文の解説

改正後の本人特定事項隠蔽目的の本人確認義務違反については、法定刑が「3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科」に引き上げられる(25条)。

預貯金通帳等については、他人になりすまして預貯金契約に係る役務の提供を受ける目的で、預貯金通帳等を譲り受ける行為、交付を受ける行為又は提供を受ける行為が「3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科」とされる。有償で預貯金通帳等を譲り受ける行為等も同様である(26条1項)。また、相手方に当該目的があることを知って譲り渡す行為等、及び正当な理由なく有償で譲り渡す行為等も同様に処罰される(26条2項)。業としてこれらの罪に当たる行為をした者は、「5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金又は併科」とされる(26条3項)。

同様の罰則引上げは、高額電子移転可能型前払式支払手段利用情報(27条)、為替取引カード等(28条)、電子決済手段等取引用情報(29条)、電子決済等利用情報(30条)、暗号資産交換用情報(31条)にも及ぶ。これにより、預貯金口座だけでなく、前払式支払手段、資金移動、電子決済手段、電子決済等、暗号資産交換に係る各種金融サービスの不正利用防止が一体的に強化される。

2. 「送金バイト」を利用する行為に対する新たな罰則

2.1 概要

本改正は、他人に報酬を支払い、その者自身の預貯金口座等を利用して財産を移転させる行為を「特定役務利用財産移転行為」として定義し、正当な理由なく有償でその行為を依頼し、誘引し、引き受け、又は実行する行為を処罰する新設規定を設ける(32条)。

2.2 背景・趣旨

懇談会報告書は、匿名・流動型犯罪グループが、SNS等を通じて送金代行の名目で者を募集し、応募者本人の預貯金口座等に入金された財産を別の口座や暗号資産口座等に送金させる手口を「送金バイト」として説明している。典型的には、口座名義人が自己名義口座の管理を継続したまま、報酬を得て入金財産を別口座へ移転する。

現行の犯罪収益移転防止法28条等は、他人になりすまして口座等の役務提供を受けることを目的とする預貯金通帳等の譲受け・譲渡し等を処罰対象としている。しかし、「送金バイト」では、送金行為者自身が自己名義口座を用いて送金しており、送金依頼者が口座名義人になりすまして役務提供を受けているとはいえない。また、送金依頼者に提供される情報は通常、口座番号等にとどまり、キャッシュカード暗証番号やネットバンキングID・パスワードのような口座内資金を直接移動させるための情報ではない。このため、現行法の適用は基本的に困難とされている。

懇談会報告書は、「送金バイト」を利用する行為が、実質的には他人名義の銀行口座等を不正に利用する行為であり、現行28条等に該当する行為と実質的に同価値である一方、現行法では処罰が困難であるとして、新たな罰則の創設を方向性として示している。

2.3 具体的な条文の解説

新設される32条1項は、通常の商取引又は金融取引として行われることその他の正当な理由がないのに、自己又は第三者が管理し、又は管理しようとする財産を移転する目的で、人に有償で特定役務利用財産移転行為を依頼した者を処罰する。法定刑は「2年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科」である。また、同じ目的で、有償で特定役務利用財産移転行為をするよう広告その他これに類似する方法により人を誘引した者も同様に処罰される(32条1項)。

32条2項は、依頼を受ける側を処罰する。通常の商取引又は金融取引として行われることその他の正当な理由がないのに、他人の依頼を受け、その依頼者に32条1項前段の目的があることを知って、有償で特定役務利用財産移転行為をした者が処罰される。また、特定役務利用財産移転行為を引き受けることを示して、有償での実施を自己に依頼するよう人を勧誘し、又は広告等により誘引した者も処罰対象となる(32条2項)。

32条3項は、業として32条1項前段又は32条2項前段の罪に当たる行為をした者について、法定刑を「3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科」とする(32条3項)。

32条4項は、「特定役務利用財産移転行為」を定義する。対象となる行為は、次の3類型である。

  1. 預貯金契約等役務を利用して自己以外の者に財産を移転する行為である(32条4項1号)。
  2. 預貯金契約等役務を利用して受け取った財産に相当する財産の全部又は一部を自己以外の者に移転する行為である(32条4項2号)。
  3. 預貯金契約等役務を利用して財産を受け取ることを約し、当該財産に相当する財産の全部又は一部を自己以外の者に移転する行為である(32条4項3号)。

「預貯金契約等役務」には、預貯金契約、高額電子移転可能型前払式支払手段利用契約、電子決済手段等取引契約、電子決済等利用契約、暗号資産交換契約に係る役務のほか、預貯金取扱事業者又は資金移動業者との間における為替取引による送金又は受取に係る役務が含まれる(32条4項1号イからホまで)。

この規定は、有償性、目的、正当な理由の不存在を要件とすることで、食事代の立替精算、家族間の送金代行、法令上認められた為替取引など、正当な社会経済活動として行われる送金代行行為を処罰対象から除外する構造を採っている。懇談会報告書も、正当な社会経済活動等の一環で行われる送金代行行為を規制対象から除く必要性を示している。

3. 「架空名義口座」を利用した口座等犯罪利用防止措置の創設

3.1 口座等犯罪利用防止措置の創設

3.1.1 概要

本改正は、犯罪収益移転防止法に「第四章の二 口座等犯罪利用防止措置」を新設し、警察官が、警察本部長の指揮を受けて、金融機関等に犯罪利用防止措置用口座等の開設又は設定を求めることができる制度を設ける(19条の2)。その上で、口座売買や送金バイトを募集・誘引する者に対し、警察官が身分等を秘して犯罪利用防止措置用通帳等を譲渡・提供し、又は口座等関係情報を提供するなどの措置を行うことができる(19条の3)。

3.1.2 背景・趣旨

懇談会報告書は、これまでの対策として、本人確認方法の厳格化、インターネット上の口座売買勧誘情報の削除、在留外国人の在留期間満了後の口座管理の厳格化、犯罪利用口座の凍結、金融機関のモニタリング強化等を挙げた上で、預貯金口座等が悪用されて行われる特殊詐欺等の情勢は悪化していると指摘している。

このため、罰則の見直しだけではなく、預貯金口座等が犯罪に利用されることを防止する新たな施策として、警察が金融機関等の協力を得て開設する「架空名義口座」を利用した措置を導入する必要があるとされている。懇談会報告書は、この措置を、預貯金口座等の犯罪利用を防止する行政上の目的を有する行政警察活動と位置付けている。

3.1.3 具体的な条文の解説

19条の2は、警察官が、口座等犯罪利用防止措置を実施するため、警察本部長の指揮を受けて、特定事業者に対し、犯罪利用防止措置用口座等を開設又は設定するよう求めることができると定める(19条の2)。対象となる特定事業者は、預貯金取扱事業者、高額電子移転可能型前払式支払手段発行者、資金移動業者、電子決済手段等取引業者、電子決済等取扱業者等、暗号資産交換業者である(19条の2第1号から第6号まで)。

「犯罪利用防止措置用口座等」とは、警察本部長と特定事業者との契約により開設又は設定される口座等であり、当該口座等が口座等犯罪利用防止措置のために用いられるものであることが相手方等に推知されないようにする措置が講じられるものをいう(19条の2)。

19条の3は、警察官が、預貯金口座等の犯罪利用を防止するため必要があると認めるとき、犯罪利用防止措置用通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供すること、特定役務利用財産移転行為を受託して財産受取に必要な口座等関係情報を提供すること、その他犯罪利用防止措置用口座等又は犯罪利用防止措置用通帳等を用いた措置を講ずることができると定める(19条の3)。

同条は、警察官が当該措置を的確に実施するために必要な範囲で、氏名、身分、犯罪利用防止措置用通帳等又は口座等関係情報が犯罪利用防止措置用口座等に係るものであること等を隠し、又は偽ることができるとする(19条の3)。対象となる相手方は、預貯金通帳等、電子決済手段等取引用情報、暗号資産交換用情報等を譲渡・提供するよう勧誘又は誘引する者、及び有償で特定役務利用財産移転行為を依頼又は誘引する者であり、正当な理由があると認められる者は除かれる(19条の3第1号・第2号)。

19条の4は、警察官が口座等犯罪利用防止措置を講じた場合に、必要があると認めるときは、特定事業者に対し、犯罪利用防止措置用口座等に係る取引情報の提供その他必要な協力を求めることができるとする(19条の4)。

3.2 犯罪利用防止措置用口座等に移転された財産の返還

3.2.1 概要

本改正は、口座等犯罪利用防止措置の結果、犯罪利用防止措置用口座等に財産が移転された場合、その財産を警察本部長が保管し、原則として移転を行った者に返還する制度を設ける(19条の5、19条の6)。

3.2.2 背景・趣旨

懇談会報告書は、「架空名義口座」に移転された財産は、本来警察にとって取得原因のないものであり、警察は入金者に返還する必要があるとしている。その一方で、入金者が犯罪グループである場合や、入金財産が犯罪収益である場合には、返還が犯罪捜査や犯罪収益の剝奪を妨げるおそれがあるため、一定の場合に返還手続を留保できる仕組みが必要であるとしている。

3.2.3 具体的な条文の解説

19条の5は、口座等犯罪利用防止措置が講じられた場合に、犯罪利用防止措置用口座等への財産移転があったとき、又は犯罪利用防止措置用通帳等の譲渡等の対価その他の事由により警察官へ財産移転があったとき、警察本部長が当該財産を保管しなければならないと定める(19条の5第1項)。保管財産が滅失・毀損するおそれがある場合又は保管・返還に過大な費用等を要する場合には、換価して金銭を保管できる(19条の5第2項)。

19条の6は、警察本部長が、保管原因行為を行った者に対し、保管財産を返還するものとする。ただし、この節の規定の施行又は犯罪捜査に支障を及ぼすおそれがある場合、犯罪利用防止措置用口座等に係る払戻請求訴訟や強制執行・仮差押え・仮処分手続がある場合、国家公安委員会規則で定める事情がある場合には、事情がやんだ後に返還する(19条の6第1項)。

返還に要する費用は返還を受ける者の負担とされ(19条の6第3項)、返還財産には利息を付さない(19条の6第5項)。これは、懇談会報告書が示す「本制度の持続可能性の確保」と「より多くの被害者の救済」の観点に対応する。

19条の7は、返還のため、警察本部長に必要な調査義務を課し、公務所又は公私の団体に照会して必要事項の報告を求める権限を認める(19条の7第1項・第2項)。返還を受けるべき者を認めたときは、その者に返還手続を通知しなければならない(19条の7第3項)。

19条の8は、調査しても返還を受けるべき者又はその所在が判明しない場合に、警察本部長が警察庁長官に公告を求め、警察庁長官が必要事項を公告する制度を定める(19条の8)。19条の9は、返還時に返還を受けるべき者であることを確認し、受領書と引換えに返還すること、返還のため必要があるときは報告・資料提出を求め、又は警察官に質問させることができることを定める(19条の9)。

19条の10は、公告の日から6月を経過しても返還を受けるべき者又はその所在が判明しない場合、又は返還請求権が放棄された場合に、返還請求権が消滅すると定める(19条の10)。

3.3 特定被害回復給付金制度

3.3.1 概要

本改正は、返還請求権が消滅した保管財産について、一定の場合に、特殊詐欺等の被害者に対する「特定被害回復給付金」の原資とする制度を設ける。これにより、犯罪利用防止措置用口座等に直接入金した者への返還ができない場合でも、当該財産を被害回復に活用することが可能となる(19条の11以下)。

3.3.2 背景・趣旨

懇談会報告書は、公告しても返還できない保管財産について、何らかの詐取金や被害金に由来する蓋然性が高いことを踏まえ、「架空名義口座」に直接財産を移転した被害者以外の被害者の被害回復のための給付金原資とすることが望ましいとしている。

また、支給対象については、振り込め詐欺救済法における振込利用犯罪行為の被害者を参考に、預貯金口座等を通じて被害金を移転させた被害者を中心とする方向性が示されている。現金手交型などは、保管財産との追跡が実務上困難であるため、支給対象から除くこともやむを得ないとされている。

3.3.3 具体的な条文の解説

19条の11は、「特定被害回復給付金」「給付資金」「支給対象犯罪行為」「費用」を定義する。支給対象犯罪行為は、詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為であって、人に移転元預貯金口座等に対する財産移転を行わせることにより財産を害したものとされる(19条の11第3号)。

19条の12は、公安委員会が、支給対象犯罪行為により財産を失った対象被害者又はその一般承継人に対し、特定被害回復給付金を支給すると定める(19条の12)。

19条の13は、支給を受けることができない者を定める。損害の全部について塡補又は賠償がされた者、支給対象犯罪行為を実行した者、共犯として加功した者、関連して不正な利益を得た者、財産喪失について自己に不法な原因がある者、その他支給を受けることが社会通念上適切でない者等は、給付を受けることができない(19条の13)。

19条の14は、返還請求権が消滅した保管財産について、移転元預貯金口座等がある場合、警察本部長が公安委員会に対し、特定被害回復給付金支給手続の開始を求めなければならないとする(19条の14第1項)。公安委員会は、求めがあったときは、遅滞なく支給手続開始決定をし、当該保管財産を給付資金として保管する(19条の14第2項・第4項)。

3.4 適用除外及び振り込め詐欺救済法との関係

3.4.1 概要

本改正は、口座等犯罪利用防止措置を円滑に実施するため、犯罪利用防止措置用口座等に係る一定の取引について、特定事業者の取引時確認等の義務の適用を除外する。また、警察官が措置又は準備のために行う行為について、預貯金通帳等の不正譲渡等に係る罰則や「送金バイト」関連罰則の一部を適用しないことを明記する(19条の28)。

3.4.2 背景・趣旨

懇談会報告書は、協力する金融機関が法令違反や訴訟リスクにさらされないよう、法的な立場を安定させる必要があると指摘している。また、犯罪利用防止措置用口座等に入金された財産については、振り込め詐欺救済法による手続の対象ではなく、本制度による返還又は給付金原資等となることを明確にすべきとされている。

3.4.3 具体的な条文の解説

19条の28第1項は、犯罪利用防止措置用口座等に係る取引について、取引時確認、確認記録の作成・保存、疑わしい取引の届出等に係る一定規定を適用しないと定める(19条の28第1項)。

19条の28第2項は、警察官が口座等犯罪利用防止措置又はその準備のために行う行為について、預貯金通帳等、高額電子移転可能型前払式支払手段利用情報、為替取引カード等、電子決済手段等取引用情報、電子決済等利用情報、暗号資産交換用情報に係る不正譲渡等の罰則、及び32条2項前段の規定を適用しないと定める(19条の28第2項)。

19条の28第3項は、特定事業者が、警察の求めに応じて開設・設定した犯罪利用防止措置用口座等に係る通帳等を警察官に交付又は提供する行為について、不正譲渡等の罰則を適用しないと定める(19条の28第3項)。

19条の28第4項は、犯罪利用防止措置用口座等について、振り込め詐欺救済法2章から4章までの規定を適用しないと定める(19条の28第4項)。これにより、犯罪利用防止措置用口座等に入金された財産は、振り込め詐欺救済法上の被害回復分配金手続ではなく、本改正で新設される返還手続及び特定被害回復給付金手続によって処理される。

4. 特定信託受益権に係るトラベルルールの整備

4.1 概要

本改正は、電子決済手段等取引業者が外国所在電子決済手段等取引業者との間で電子決済手段の移転を継続的又は反復して行う契約を締結する際の確認義務について、特定信託受益権の除外範囲を見直すものである(10条の2)。具体的には、従来「特定信託受益権」全体が除外されていたところ、除外対象を、信託法185条3項に規定する受益証券発行信託に係るものであって、同法110条3項に規定する無記名受益権に該当しないものに限定する(10条の2)。

4.2 背景・趣旨

2022年の犯罪収益移転防止法改正では、電子決済手段等取引業者に対し、電子決済手段の移転時に送付人及び受取人の情報を取得し、受取人が利用する電子決済手段等取引業者に通知する義務、すなわちトラベルルールが新設された。特定信託受益権については、当時、受益証券発行信託の信託受益権として発行され、譲渡の際に受益権原簿の書換えが行われることが想定されていたため、発行者である信託会社等が受益権原簿により受益者情報及び取引経路を把握できるものとして、トラベルルールの対象から除外された。

その後、受益証券発行信託の仕組みによらない特定信託受益権の発行を検討する動きがみられ、この場合には、受益者情報を把握できる受益権原簿が存在せず、信託会社等が特定信託受益権の送付人及び受取人の情報を把握できない。このため、受益証券発行信託によらない特定信託受益権については、トラベルルールの適用等を通じて電子決済手段等取引業者等に送付人及び受取人の情報を把握させる必要があるとされた。

4.3 具体的な条文の解説

10条の2は、電子決済手段等取引業者が外国所在電子決済手段等取引業者との間で、電子決済手段の移転を継続的又は反復して行うことを内容とする契約を締結する際に、当該外国所在電子決済手段等取引業者について所定事項を確認しなければならない旨を定める規定である(10条の2)。

本改正では、まず、10条の2の適用主体である「電子決済手段等取引業者」の範囲について、資金決済法62条の8第2項により電子決済手段等取引業者とみなされる特定事業者の参照対象に、2条2項25号に掲げる特定事業者を追加する(10条の2)。

次に、「電子決済手段」の定義部分について、除外される特定信託受益権を、信託法185条3項に規定する受益証券発行信託に係るものであって、同法110条3項に規定する無記名受益権に該当しないものに限定する(10条の2)。この結果、受益証券発行信託によらない特定信託受益権、又は無記名受益権に該当する特定信託受益権は、10条の2における「電子決済手段」から除外されず、外国所在電子決済手段等取引業者との契約締結時確認の対象となる(10条の2)。

さらに、電子決済手段の移転から除外される「電子決済手段の交換等」について、従前の「同条10項」という参照を、「資金決済に関する法律2条10項」に改める(10条の2)。これは、10条の2内部で資金決済法2条5項の電子決済手段、同条9項の特定信託受益権、同条10項の電子決済手段の交換等を参照する構造を明確にする技術的整備である。

5. 監督違反等の罰則整理、関連法令改正及び施行期日

5.1 監督違反等の罰則整理

改正法は、既存の罰則規定を整理し、条番号を移動させる。18条の規定による命令違反は33条に置かれ、法定刑は「2年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科」とされる(33条)。報告・資料提出義務違反、虚偽報告、質問への不答弁、虚偽答弁、検査拒否等については、34条に置かれ、法定刑は「1年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又は併科」とされる(34条)。

法人両罰規定についても、条番号の整理と罰金額の調整が行われる。新旧対照条文では、31条が35条へ移動し、命令違反等に係る法人罰の対象条文・罰金額が改められている。

5.2 関連法令改正

特定複合観光施設区域整備法については、犯罪収益移転防止法の罰則条文の移動に伴い、引用条文の整備が行われる(附則3条・4条)。

5.3 施行期日

本改正は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内で政令で定める日から施行される。ただし、第一条、附則2条及び附則3条の規定は、公布の日から起算して1月を経過した日から施行される(附則1条)。施行に関し必要な経過措置は、罰則に関する経過措置を含め、政令で定める(附則2条)。

CDNプロバイダの過失責任とDNSブロッキング・本人確認義務―KADOKAWAほか対Cloudflare事件一審判決の示唆

Cloudflare判決に関するメモを公開します(2025年12月8日脱稿)。2万字超の原稿なので、先に「まとめ」を引用しておきます。

本稿で行った本判決の分析を整理すると、以下のとおりである。

第1に、本判決は、①95%以上のキャッシュヒット率、②本人確認プロセスの欠如、③DMCA通知を考慮して、情プラ法2条1項による免責を認めず、かつ過失による出版権侵害の幇助を認めた。①②は適法なコンテンツにおいても同様であることからすれば、決定的なのは③である。このように「中立的な道具」の提供者の責任が主観により左右される状況は、Winny事件決定に類似する。

第2に、CDNは他人の通信を媒介する電気通信役務であると解されているが、権利侵害通知への対応を義務付けることは、通信の秘密を侵害しない。本判決が注意義務を設定する上で通信の秘密に言及していないのは、単にそれが問題とならない場面だからである。

第3に、不法行為法上の過失(注意義務)という形であれ、CDNプロバイダにサービスの提供停止を義務付けることは、コンテンツの発信者の表現の自由の制約となる。本件で表現の自由が問題とならなかったのは、情プラ法3条1項が適用される場面では、同項の要件に、既に媒介者としての役割への配慮が織り込まれているからである。

これらの分析を前提に、関連政策への示唆を整理すると、以下のとおりである。

第1に、CDNプロバイダに情プラ法第5章を適用し、迅速化規律・透明化規律を及ぼすことは、合理的な選択肢である。そのような選択肢がある限り、「滑りやすい坂道」であり、通信サービスの信頼性を毀損する可能性の高いDNSブロッキングは、憲法上正当化されない。このことは、オンラインカジノとの関係でも同様である。

第2に、本人確認については、第三者への萎縮効果を考慮して、その要否と範囲の双方について、慎重な検討が必要である。

 

 

はじめに

KADOKAWA対Cloudflare判決は、インターネット上の権利侵害について、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)の責任を認めた我が国で最初の裁判例である。CDNは、後述のとおり、現代のインターネットにおいて重要な役割を担っており、本判決は、実務的にも理論的にも重要な意義を有する。

また、総務省においては、現在、オンラインカジノを巡って、ブロッキングの議論の「第3ラウンド」が行われている。DNSブロッキングは、そもそも有効性が疑わしい上、「滑りやすい坂道」であり、通信サービスの信頼性を毀損する可能性が高い。そうであればこそ、本判決の含意を正確に読み取り、ブロッキングとの関係を整理する必要がある。

本稿では、このような問題意識から、主として通信の秘密・表現の自由に焦点を当てて、本判決を分析する。具体的には、まず、事実の概要と判旨を紹介した上で、CDNとは何かと、本判決の構造を確認する。そして、本判決による情プラ法3条1項の解釈適用及び過失による幇助の認定の分析と、脅迫電報事件判決・DNSブロッキング、Google事件決定、Winny事件決定との比較を通じて、本判決が通信の秘密・表現の自由とどのようにして両立しているかを明らかにする。その上で、DNSブロッキングに対するLRAとしてのCDNプロバイダに対する規律の余地を検討する。

事実の概要

原告KADOKAWA、原告講談社、原告集英社及び原告小学館は、いずれも書籍出版事業を営む株式会社であり、各原告は、判決別紙著作物目録記載1~4の各漫画について、電磁的記録物を用いた公衆送信を含む出版権の設定を受けている。

海賊版サイトFの運営者(本件運営者)は、原告らの許諾を得ることなく、同サイトに対応するサーバ(本件オリジンサーバ)に本件各著作物の複製データ(本件コンテンツ)を記録し、そのURLを有する複数のウェブサイト(本件各ウェブサイト)を通じて、日本国内のエンドユーザを含む不特定多数の者がストリーミング方式で原作どおり本件各著作物を閲読できる状態に置いた。

本件各ウェブサイトは、合計4082タイトル・12万3631話のコンテンツ(本件各著作物を含む。)を、全てのエンドユーザに対して無料で配信していた。配信されていた本件各著作物の話数は、本件著作物1が46話、本件著作物2が141話、本件著作物3が1027話、本件著作物4が122話であった。コンテンツ名称欄には一律に「Raw-Free」との表示がされ、「Raw」は海賊版を意味するインターネット用語であると認められたほか、各ページには「(省略).com」との透かしが挿入されていた。これらを除き、サイトの言語は日本語であった。

被告Cloudflare, Inc.は、世界各地(東京・大阪を含む)に設置した自社サーバ(被告サーバ)を用いて、オリジンサーバに代わりコンテンツを配信するCDNサービス(被告サービス)を提供する米国法人である。本件運営者は遅くとも令和2年4月7日までに被告との間で本件各ウェブサイトにつき被告サービス利用契約を締結し、レジストラにおいて被告をネームサーバとして指定するなどの設定を行った結果、本件各ウェブサイトへのアクセスは、地理的に近接する被告サーバに向かうよう構成された。

本件各ウェブサイトのエンドユーザが本件コンテンツのページにアクセスすると、DNSの名前解決により被告サーバが窓口となり、被告サーバに当該コンテンツのキャッシュデータ(本件キャッシュデータ)が存在しない場合には、被告サーバが本件オリジンサーバに送信を要求し、オリジンサーバから送信された本件コンテンツを被告サーバがエンドユーザに送信するとともに、そのデータを記録媒体に自動的にキャッシュする(ホスト型配信)。本件キャッシュデータが記録されている場合には、被告サーバは当該キャッシュデータをエンドユーザに自動送信することにより配信を行い(キャッシュ型配信)、一定期間経過後にはキャッシュデータが自動削除され、再度ホスト型配信が行われる仕組みであった。

被告は、被告サービスの利用契約締結時の本人確認手続につき簡略な方法による運用を行っており、本件運営者との間で締結された本件利用契約の締結時も同様であった。

原告らは、各自が出版権を有する本件各著作物について、本件各ウェブサイトが無断配信を行っているとして、令和2年4月7日(小学館分)、同年12月7日(集英社分)、令和3年11月12日(KADOKAWA及び講談社分)に、DMCA第512条に基づく著作権侵害通知(本件通知)を代理人弁護士名義で被告の電子メールに送付したが、その後も本件各ウェブサイトにおいて本件各著作物の配信が継続した(なお、送付先電子メールアドレスがDMCA通知用のものであったか等は、判決文には明示されていない。)。その後、被告は令和3年2月2日に本件ウェブサイト1、令和4年3月10日に本件ウェブサイト2についてキャッシュサービス停止措置を実施し、さらに令和4年3月16日に本件ウェブサイト2、同月19日に本件ウェブサイト1について被告サービスの提供を終了した。

原告らは、被告が本件各ウェブサイトに対して被告サービスを提供し、被告サーバから本件コンテンツ又は本件キャッシュデータを日本国内のエンドユーザに自動公衆送信したことにより、各原告の出版権(公衆送信権)が侵害されたと主張し、主位的に被告を公衆送信の主体とする不法行為責任に基づき、予備的に本件運営者による出版権侵害の幇助者としての共同不法行為責任に基づき、各原告につき1億2650万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めて訴えを提起した。

訴訟では、【争点1】日本の裁判所の国際裁判管轄の有無、【争点2-1】被告の公衆送信主体性、【争点2-2】特定電気通信役務提供者の責任制限規定の適用の有無、【争点2-3】出版権侵害の幇助の成否、【争点2-4】キャッシングに係る権利制限規定の適用の有無、【争点3】損害額が問題となった。

判旨

判決は、国際裁判管轄を認めた上で、被告の公衆送信主体性を否定しつつ、出版権侵害の幇助を認め、主張された損害額の大部分の賠償を命じた(請求一部認容)。以下、争点2-1から争点2-3に関する判示を引用する。

【争点2-1】被告の公衆送信主体性(消極)

「自動公衆送信が、装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると、その主体は、当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当である。そして、当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており、これに継続的に情報が入力されている場合には、当該装置に情報を入力する者が送信の主体であり、また、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している当該装置の公衆送信用記録媒体に情報が記録されている場合には、当該記録媒体に情報を記録する者が送信の主体であるものと解される」。

「…被告サーバはインターネットに接続されることにより、本件エンドユーザの求めに応じ、被告サーバに入力された情報(ホスト型配信における本件コンテンツ)及び被告サーバの記録媒体に記録された情報(キャッシュ型配信における本件キャッシュデータ)を自動的に送信しているといえる。/送信の主体が被告であるとしても本件運営者であるとしても、送信の相手方である本件エンドユーザが公衆に当たることは明らかであるから、被告サーバを用いて行われる自動送信は、公衆によって直接受信されることを目的とするものであり、被告サーバは自動公衆送信装置に当たる(著作権法2条1項9号の5)。そうすると、ホスト型配信においては被告サーバへの入力をする者、キャッシュ型配信においては被告サーバの記録媒体に記録をする者が、自動公衆送信の主体である。/そこで、まず、ホスト型配信における被告サーバから本件エンドユーザへの送信について検討するに、…ホスト型配信における被告サーバへの本件コンテンツの入力は、本件エンドユーザからの求めに応じ、本件オリジンサーバから被告サーバに本件コンテンツが自動送信されることにより行われている。そして、…このような自動送信は、本件運営者が、自ら本件コンテンツを本件オリジンサーバに記録し、被告サービスを利用するための設定をすることにより可能になったものといえるから、被告サーバへの入力をする者は本件運営者であるというべきである。/次に、キャッシュ型配信について、…キャッシュ型配信において送信される本件キャッシュデータは、ホスト型配信の際に被告サーバに入力された本件コンテンツが、被告サーバの記録媒体に自動的に記録(キャッシュ)されたものである。…ホスト型配信において被告サーバに本件コンテンツを入力する者は本件運営者であるといえること、上記の記録(キャッシュ)は、被告サーバのキャッシュ機能によって自動的にされるものであることに照らせば、被告サーバの記録媒体に本件キャッシュデータを記録する者も本件運営者であるというべきである。/以上によれば、ホスト型配信及びキャッシュ型配信における自動公衆送信の主体は被告ではなく本件運営者であったといえる。」。したがって、被告による出版権侵害は認められない。

【争点2-2】特定電気通信役務提供者の責任制限の適用の有無(消極)

情プラ法3条1項2号の要件について、「…本件通知の内容からすれば、本件通知により、①日本の弁護士が通知人であり、通知人が原告らを代理し、原告らが本件各著作物の著作者を代理していること、②本件各著作物が著作権者及び原告らの許諾なく違法に本件各ウェブサイトにおいて掲載されているとして著作権侵害を通知するものであることを理解することができる。/また、電子メールによる本件通知には、本件各ウェブサイト上の本件コンテンツのページのURLも記載されていたのであるから、当該ページにアクセスすれば、本件コンテンツのタイトル欄に無料の海賊版であることを示す「Raw-Free」という記載があり、各頁に本件各ウェブサイトのドメイン名の透かしが挿入されていることを、さらに、同ページを起点とすれば、本件各ウェブサイトにおいて、本件コンテンツを含む多数(4000タイトル以上)のコンテンツが全て無料で配信され、全てのコンテンツについて「Raw-Free」の記載やドメイン名の透かしが挿入されていることを読み取ることができたといえる…。/そして、通常、これほど多数のタイトルの漫画の複製データが全てのエンドユーザに対して無料で配信されることは考え難いから、上記記載や透かしと相まって、本件各ウェブサイトがいわゆる海賊版サイトであることは一見して明らかであったといえる。/以上によれば、被告は、通常の注意を払っていれば、被告サービスを利用する本件各ウェブサイトにおける本件コンテンツの配信により、本件各著作物に係る他人の著作権法上の権利(公衆送信権)が侵害されていることを知ることができたと客観的に考えられるから、「当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があった」」といえ、同号の要件を満たす。

情プラ法3条1項柱書の要件について、「同項所定の送信防止措置とは、特定電気通信による情報の流通による権利の侵害を防止するために必要な限度において、関係役務提供者が当該措置を講ずることが技術的に可能なものを指す」。「まず、被告サービスの提供を停止すれば、本件コンテンツ(4タイトル)のみならず、本件各ウェブサイト上の他の4000タイトル以上のコンテンツについても、被告サービスを通じた配信が停止される。しかし、…海賊版サイトである本件各ウェブサイトにおいて、本件コンテンツ以外のコンテンツについて、権利者の許諾を得ていたとは通常考えられないところ、海賊版サイトでは、多くのコンテンツが配信されていることにより、より多くのアクセスを集め、その結果、各コンテンツを単体で配信するよりもアクセス数が増加するという関係にあるものといえる。そうすると、本件コンテンツ以外のコンテンツの配信は本件コンテンツの配信による出版権の侵害を助長するものであり、それらのコンテンツについて被告サービスを通じた配信を停止することになったとしても、まったく無関係な情報の配信を停止するものとまではいえない。/また、被告サービスの提供が停止されれば、本件各ウェブサイトからの被告サービスを通じた情報の送信は、その内容を問わず、将来にわたってできなくなる。しかし、本件運営者は、本件各ウェブサイトについて、引き続き、本件オリジンサーバからコンテンツの配信をすることは妨げられない…から、本件運営者の表現の自由を不当に制限するものであるとはいえない。以上によれば、被告サービスの提供の停止は、ホスト型配信及びキャッシュ型配信による原告らの出版権の侵害を防止するために必要な限度の措置であったというべきであり、「技術的に可能」(同項柱書)といえる。」。したがって、被告の出版権侵害の幇助による損害賠償責任について、責任制限規定の適用はない。

【争点2-3】出版権侵害の幇助の成否(積極)

幇助の事実について、「…被告サービスにより、本件運営者は多数の分散配置された被告サーバから本件キャッシュデータを送信することが可能となったといえるところ、本件各ウェブサイトのアクセス数は最大で月間合計3億回を超え…、これに対するキャッシュヒット率は95~99パーセントであった…のであるから、被告サービスの利用による本件オリジンサーバの負荷の分散の程度は大きく、本件運営者は、被告サービスにより、多くの配信を効率的に行うことができたものといえる。/そして、被告は、被告サービスの利用契約を締結する際の本人確認手続を簡略化する方針を採用していたところ…本件情報開示命令に対する開示結果に照らせば、本件利用契約に際して何らの本人確認手続が行われなかったものと推認され、これを覆す的確な証拠は見当たらない。そうすると、本件運営者は、オリジンサーバのIPアドレスが明らかにならないというリバースプロキシが一般に備える匿名性に加え、本件利用契約に関する法的な開示手続がされたとしても権利行使を受けるおそれがないという強度な匿名性が確保された状況下で、上記のような効率的な配信をすることができたものといえる。/以上によれば、被告は、本件各ウェブサイトについて被告サービスを提供することにより、本件運営者による原告らの出版権の侵害を容易にしたということができ、これは、本件運営者による原告らの出版権の侵害の幇助行為に当たるといえる。」

過失について、「被告は、本件通知により、本件各著作物に係る著作権法上の権利(公衆送信権)が侵害されていることを知ることができ、…被告は、被告サービスの提供を停止することによって、原告らの出版権の侵害を回避することが可能であったといえる。/そして、本件通知の受領から被告サービスの提供を停止するまでに必要な期間については、本件通知の受領後、その内容を確認して権利の侵害を判断し内部的な手続をするために必要な期間を考慮し、1か月と認めるのが相当である。/以上に照らせば、被告は、本件通知の受領から1か月を経過した時点(以下「本件時点」という。)で、被告サービスの提供を停止することができたと認められるから、同時点で被告サービスの提供を停止する義務を負うところ、これを怠ったものといえる。」したがって、被告の出版権侵害の過失による幇助が認められる。

解説

CDNとは何か*1

CDNは、エンドユーザーの近くでコンテンツをキャッシュする地理的に分散したサーバ群である。ユーザー(=コンテンツの発信者)は、自らWebサーバを設置するか、ホスティングサービスプロバイダが提供するWebサーバを利用してコンテンツをインターネット上に公開するが(これらのサーバはオリジンサーバと呼ばれる。)、地理的に遠くにいるエンドユーザー(=コンテンツの受信者)がアクセスする場合、伝送に起因する遅延が生じる。また、アクセスが集中した場合、オリジンサーバとその周辺のネットワークの処理能力に起因する遅延が生じたり、応答不能となることがある(逆に、それに耐えるようにしようとすれば、広い帯域の回線が必要になる。)。CDNを使うことで、大半のアクセスに対してはキャッシュサーバのみが応答し、キャッシュサーバにキャッシュが存在しない場合やキャッシュの有効期限が切れた場合にのみ、キャッシュサーバからオリジンサーバへのアクセスが発生するようになるため、ロード時間が短縮され、可用性が向上する。なお、CDNのキャッシュサーバを含め、あるサーバに代わって他のサーバが応答することや、そのようなサーバを、リバースプロキシと呼ぶ。

通常、我々がWebサイトにアクセスする場合、我々は、ドメイン名を入力し、DNSサーバに名前解決を要求し、DNSサーバが応答したIPアドレスにアクセスすることで、当該Webサイトに係るリソースを取得する。CDNを使用する場合、オリジンサーバとキャッシュサーバには、当然ながら異なるIPアドレスが割り当てられるが、CDNプロバイダにDNSの機能の一部を委譲する(Akamai等の場合)か、CDNプロバイダが提供するDNSを使用し(Cloudflareの場合)、CDNプロバイダが名前解決要求に対し最適なキャッシュサーバのIPアドレスを応答することで、エンドユーザーは、キャッシュサーバにアクセスするよう誘導される。

このことは、ユーザーからは、オリジンサーバのIPアドレスが隠蔽されることを意味する。すなわち、海賊版サイトによって権利を侵害された者は、キャッシュサーバのIPアドレスしか観測できないが、当該IPアドレスを管理しているISPに照会しても、CDNプロバイダが契約者であることしか分からない。CDNプロバイダに対しては、契約者情報やオリジンサーバのIPアドレスの開示を要求することが考えられるが、これらによってコンテンツの発信者の身元を特定できるかは、CDNプロバイダや(オリジンサーバに係る)ホスティングサービスプロバイダが本人確認を実施しているか等に依存する。

なお、このことは、必ずしもCDN固有の問題ではない。オリジンサーバ(ホスティングサーバ)のみを使う場合でも、ホスティングサービスプロバイダが適切に本人確認を実施していなければ、発信者の身元を特定することはできない(ISP経由での身元特定の余地はある。)。しかしながら、漫画の海賊版サイトのように大量のトラフィックを処理する必要がある場合、単なるホスティングサービスだけでは足りず、CDNが不可欠である。

法的背景と本判決の構造*2

出版権は、著作権の支分権である複製権(著作権法21条)又は公衆送信権(同法23条1項)の保有者(「複製権等保有者」と総称される。)が出版又は公衆送信(≒オンラインパブリッシング)を引き受ける者に設定することができる、制限物権的な権利である(同法79条1項)。出版権者は、設定行為で定めるところにより、著作物について、原作のまま公衆送信を行う権利の全部又は一部を専有する(同法80条1項2号)。出版権が侵害されたときは、出版権者は、侵害者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)及び差止請求をすることができる(著作権法112条1項)。本件は、出版社が出版権侵害を主張し、損害賠償を請求した事案である。

本件で、原告は、損害賠償請求の根拠として、①被告(Cloudflare)自らが公衆送信を行ったという主張と、②公衆送信を行ったのは海賊版サイトの運営者だが、被告はこれを幇助したという主張の2つを行った。幇助とは、他人の不法行為を容易にすることであるが、その効果は、当該他人と連帯して損害賠償債務を負うことであり(民法719条1項)、少なくとも本件のような事案では、①との間で認められる賠償額に変わりはない。裁判所は、①について、まねきTV事件判決*3を引用してこれを否定し*4(争点2-1)、②について、CDNによる負荷分散の度合いと本人確認のプロセスの欠如に基づいて幇助の事実を認め、DMCA通知に基づいて過失を認めた(争点2-3)。

もっとも、本件では、キャッシング(caching)という行為態様に起因して、被告は、①情プラ法(旧プロ責法)上の関係役務提供者の損害賠償責任の制限(情プラ法3条1項)、②著作権法上の電子計算機における著作物の利用に付随する利用に係る権利制限(著作権法47条の4第1項)という、2つの特別な主張をなし得た。裁判所は、①について、DMCA通知とそこにURLが記載されたサイトの外観から、免責の要件を満たさないとし(争点2-2)、②について、キャッシュされたデータの自動公衆送信が権利制限の対象となるのは、それが記録に際して行われる場合に限られるが、CDNによるコンテンツ配信はそれを満たさない*5として(争点2-4)、いずれも否定した。

以上のとおり、裁判所は、出版権侵害の過失による幇助を認め、ライセンス料相当額による損害額算定規定(著作権法114条3項)に基づき算定される損害額の賠償を被告に命じた。

情プラ法3条1項の解釈・適用及び過失による幇助の認定と通信の秘密・表現の自由

判決の読解

情プラ法3条1項柱書及び2号は、「①特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、②当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(…関係役務提供者…)は、これによって生じた損害については、③権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。…」「二 当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。」とされている。本件では、柱書の「技術的に可能」要件と、2号の要件が問題となった。

裁判所は、2号の要件に関して、DMCA通知の内容が、弁護士が著作者を代理して著作権侵害を通知するものであったこと、コンテンツのページのURLが記載されており、当該ページにアクセスすれば海賊版サイトであることは一見して明らかであったことから、「相当の理由」があったと認めた。柱書の要件に関しては、従来、「関係役務提供者に期待される措置は、あくまで権利の侵害を防止するために必要な限度にとどまる」、「例えば、問題とされる情報の送信を防止するためには他の関係ない大量の情報の送信を停止しなければならないような場合や、インターネットへの接続自体をさせない等、当該情報の発信者の情報発信のすべてを停止するしかない場合には、関係役務提供者がその措置を講ずることが「技術的に可能」とは言えない」と解されてきたが*6、裁判所は、これを踏襲しつつ、本件では、ドメイン全体のキャッシングを止めることになるとしても*7、CDNの提供停止は「技術的に可能」な措置に当たるとした。このような判断方法は、情プラ法3条1項の解釈に照らして不合理なものではないと思われる。

また、裁判所は、過失による出版権侵害の幇助に関して、①(a)95%以上のキャッシュヒット率から推認される負荷分散の度合いと、(b)本人確認(身元確認)プロセスの欠如による匿名性を理由に、幇助の事実(すなわち、被告が出版権侵害を容易にしたこと)を認めた上で、②DMCA通知から1か月が経過した時点で、CDNサービスの提供を停止することで出版権侵害を回避できたとして、幇助に係る過失を認めている。この点についても、(読み方には注意する必要があるにせよ)不合理なところはないと考えられる。

以下、通信の秘密*8及び表現の自由との関係について、関連する3つの判例との関係を検討する。

脅迫電報事件判決・DNSブロッキングからの検討

脅迫電報事件判決*9は、闇金業者から脅迫電報を受けた債務者が、NTT東西に対し、当該電報を受け付け、配送したことが不法行為に当たるとして慰謝料を請求した事案において、「原告が作為義務の内容としている被告らの行為は、要するに、被告らが受付ないし配達を行おうとする電報の電文が脅迫を内容とすることを覚知した場合に、当該電報の受付ないし配達を差し止めるべきとするものであるが、仮にそのような作為義務を認めるとすれば、被告らがそのような行為を行うためには、被告らの取り扱う電報全てにつき、事前にその内容を個別的に審査せざるを得ないことになる」、「電気通信事業者ないしその従業者が電気通信役務を提供するに際し、その取扱いの過程において通信内容を事実上覚知することがあり得るとしても、その通信に係る情報の内容面については全く関知せず、受信者にそのまま伝達することが当然に求められている」、「原告らの主張するような作為義務を電気通信事業者である被告らに課するとすれば、被告らとしては、…取り扱う全ての電報についてその内容を個別的に把握し、審査しなければならないことになるところ、このことによる社会的な悪影響は極めて重大であり、ひいては電報、葉書といった社会的に有用な通信手段の存立を危うくする」などとして、NTT東西の注意義務を否定した。これらのことは、基本的にDNSブロッキングにも当てはまると考えられる*10

DNSブロッキングと比較すると、CDNの提供停止には、いくつかの重要な違いがある。

まず、事実関係として、DNSブロッキングにおいては、コンテンツの受信者とISPの契約関係は継続し、当該契約に基づくサービスの提供に際してブロッキングが行われ、このことが、通信の秘密の侵害(知得・窃用)に当たるとされる*11。一方、CDNの提供停止においては、コンテンツの発信者とCDNの契約関係は解消され、サービスの提供が終了する。これまでのところ、通信の秘密は、通信サービスの提供それ自体を求める権利を含むとは(憲法上も電気通信事業法*12上も)考えられていない。このような事実関係の違いは、DNSブロッキングは、受信者側のサービス提供者(ISP)が実施するのに対して、CDNの提供停止は、発信者側のサービス提供者が実施するという違いに起因するものといえる。

もちろん、サービス提供の停止それ自体が通信の秘密の侵害とならないとしても、サービス提供を停止すべきコンテンツをキャッシングしていないか体系的に監視することは、通信の秘密を侵害するか、少なくとも自由な表現を損なうことになる。例えば、CDNは、「正規版」のコンテンツ配信サイトの運営にとっても不可欠な存在であるが、CDNプロバイダがコンテンツの体系的な監視に基づいて「ブロッキング」を実施したり、ブロッキングを実施する能力を背景にコンテンツの取り下げを求めるようになるとすれば、決済において既に生じている*13のと同様の大きな問題が生じる。しかしながら、本判決が設定した注意義務は、実質的には、権利者からの個別の通知に誠実に対応すべきというものであり、そのような体系的監視を求めるものではない。情プラ法3条1項は、米国の通信品位法、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)、EUの電子商取引指令などと同様に、まさしくそのような体系的監視を回避しつつ、個別の権利侵害に対応するインセンティブは損なわないようにするという思想の下で規定されたものであり*14、通信の秘密や表現の自由への配慮は、同項が定める具体的な要件に織り込み済みであるといえる。したがって、同項の要件を満たす以上、通信の秘密や表現の自由との関係は問題とならないと考えられる。

Google事件決定からの検討

Google事件決定*15は、逮捕されその事実を報道された者が、Googleに対し、検索エンジンの検索結果からの関係記事のURL等の削除を求めた事案において、「検索事業者による検索結果の提供は、公衆が、インターネット上に情報を発信したり、インターネット上の膨大な量の情報の中から必要なものを入手したりすることを支援するものであり、現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たして」おり、「検索事業者による特定の検索結果の提供行為が違法とされ、その削除を余儀なくされるということは、上記方針に沿った一貫性を有する(注:検索事業者自身の)表現行為の制約であることはもとより、検索結果の提供を通じて果たされている上記役割に対する制約でもあるといえる」として、「検索事業者が、ある者に関する条件による検索の求めに応じ、その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは、…当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので、その結果、当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対し、当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができる」とし、当該事案において、削除を否定した。

Google事件決定では、検索エンジンの「情報流通の基盤」としての役割が、「明らか」要件を導いている*16。別の言い方をすれば、検索エンジンが多くの人々の情報発信や情報摂取*17に貢献しているという事実が、「天秤」をデフォルトで検索エンジン側に傾けている*18。CDNは、現代のインターネットにおいて極めて重要な役割を担っており*19、検索エンジンと同様の「情報流通の基盤」と言って差し支えないと思われる。

もっとも、このことが、直ちにCDNの責任を緩和すべき(例えば、情プラ法3条1項の要件を緩和すべき)ことを意味するわけではない。この点について議論の蓄積は乏しいが、法体系に即して考えると、情プラ法第2章及び第3章は、コンテンツの媒介者(法律上は特定電気通信役務提供者)を対象としているが、検索エンジンにおける検索結果は、検索事業者自身が発信するコンテンツであり*20、Google事件決定は、このことを前提に、媒介者に類似する側面を考慮して*21、「明らか」要件を課したものと言える。これに対し、CDNの提供者は、まさしく媒介者であり、媒介者としての側面は、情プラ法3条1項の立法に当たって考慮済みである。同項は、典型的には個別のホスティングサービスにも適用されるものであり、CDNの重要な役割を考慮していないようにも思われるが、同項は、CDNと比べても中立的な媒介者としての側面がより強いと思われるISPにも同様に適用されるものであり(その結果、CDNと異なり、ISPに責任が認められる可能性はほぼなくなる。)、CDNを特別扱いしないことも必ずしも不合理ではない(言い換えれば、立法に当たって考慮済みであると考えてよい)と思われる。

Winny事件決定からの検討

Winny事件決定*22は、「Winny」が海賊版コンテンツの共有に使われ、その開発者が著作権侵害罪の幇助(故意が必要である。)で起訴された事案において、「新たに開発されるソフトには社会的に幅広い評価があり得る一方で、その開発には迅速性が要求されることも考慮すれば、かかるソフトの開発行為に対する過度の萎縮効果を生じさせないためにも、単に他人の著作権侵害に利用される一般的可能性があり、それを提供者において認識、認容しつつ当該ソフトの公開、提供をし、それを用いて著作権侵害が行われたというだけで、直ちに著作権侵害の幇助行為に当たると解すべきではない」として、「かかるソフトの提供行為について、幇助犯が成立するためには、一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり、また、そのことを提供者においても認識、認容していることを要する」、「①(a)ソフトの提供者において、当該ソフトを利用して現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識、認容しながら、その公開、提供を行い、実際に当該著作権侵害が行われた場合や、(b)当該ソフトの性質、その客観的利用状況、提供方法などに照らし、同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で、提供者もそのことを認識、認容しながら同ソフトの公開、提供を行い、②実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り、当該ソフトの公開、提供行為がそれらの著作権侵害の幇助行為に当たる」とし、当該事案において、幇助犯の成立を否定した。

Winny事件決定では、Winnyがいわゆる中立的な道具であることが、故意(=認識・認容)の内容として、上記①(a)(b)のとおり具体的なものを要求する解釈を導いている。CDNも中立的な道具であり、同様な解釈が必要ではないかとも思われるが、私見を述べれば、このことも、情プラ法3条1項に織り込み済みであると思われる。Winny事件決定は、相当に具体的な認識・認容を要求しているのに対し、情プラ法3条1項(2号)は「相当の理由」で足りるとしており、情プラ法のほうがCDNプロバイダに不利にも見えるが、これは、Winny事件では、ソフトウェアの公開が問題となっており、その提供に当たってユーザーを選択したり、後から提供を停止することはできなかったのに対し、CDNではサービス(特定電気通信役務)の提供が問題となっており、その提供に当たってユーザーを選択したり、後から提供を停止することができた、という事案の違いに基づくものであり、不合理なものではないと考えられる。

小括

以上のとおり、本判決は、(基本的には)通信の秘密や表現の自由に直接には言及していないが、情プラ法3条1項という枠組みや、注意義務の設定を通じて、これらの権利・自由への配慮を織り込んでいると言える。本判決を他の事件に応用したり、政策立案において参照するに当たっては、このような背景に十分留意する必要があると思われる。

なお、判決が出版権幇助を認定するに当たって、本人確認プロセスの欠如を考慮しているが、このことは、CDNによる負荷分散それ自体が違法とは言えないのと同様に、本人確認を行わなかったこと自体を違法とするものではないと解される。被告は、適法なコンテンツの発信者に対しても、本人確認なしにCDNによる負荷分散を可能にしていたのであり、違法性を基礎づけているのは、あくまで通知に誠実に対応しなかったことである。

関連政策への含意―DNSブロッキングのLRAとしてのCDN「ブロッキング」

海賊版ブロッキングを巡っては、2019年、政府が法律に基づかないDNSブロッキングを慫慂し、通信事業者が実質的に敗訴する事態が生じた*23。また、現在、オンラインカジノに係るアクセス抑止のあり方が検討されており、DNSブロッキングやCDNの提供停止も選択肢とされている*24。後者に係る検討会の中間整理(2025年9月)では、ブロッキングについて、有効性(手段が目的を促進するか*25)、必要性(より権利制限的でない他の手段(LRA)が存在しないか)、許容性(狭義の比例性)、実施根拠(立法の必要性)、妥当性(制度的枠組み)が論点とされている。

LRAに関して、(エンド)ユーザーへの影響度は、これまで述べたDNSブロッキングやCDNの仕組みに照らすと、大まかに言えば、DNSブロッキング>CDNプロバイダへのコンテンツの監視の義務付け>CDNプロバイダの通知への対応の義務付け(通知に適切に対応するための体制整備義務)であり、これらとは別次元の問題として、CDNにユーザーの本人確認義務を課すかどうかという問題があると思われる。このため、IP通信というより低い(つまり、基層的な)レイヤーに働きかけるものであり、そのため「滑りやすい坂道」であり、長年にわたり築かれてきた通信サービスの信頼性を毀損する可能性の高いDNSブロッキングに踏み込む前に、決済サービス(オンラインカジノの場合。既に令和7年資金決済法改正が行われたところである。)やインターネット広告(海賊版サイトの場合)*26と合わせて、まずはCDNプロバイダへの働きかけを検討する必要があると思われる。

CDNへの働きかけとして、最も端的なのは、まずは、情プラ法施行規則8条6項を改正した上で、情プラ法第5章の大規模特定電気通信役務提供者として指定することだと思われる。すなわち、CDNプロバイダはコンテンツの媒介者であり、現状においても、権利侵害通知に適切に対応することが期待されている。コンテンツの媒介者に対する規律としては、もともと、私法上のセーブハーバールールとしてのプロ責法3条のみが置かれてきたが、テラスハウス事件を契機として*27、令和6年プロ責法改正が行われた。具体的には、同改正においては、①大規模SNS・掲示板の提供者を総務大臣が「大規模特定電気通信役務提供者」(以下「指定役務提供者」と略称する。)として指定し(同法21条)、②指定役務提供者に、(a)権利者からの通知(法律上は被侵害者からの申出)を受け付ける方法の公表(同法22条)、(b)当該方法により通知を受けた場合の調査の実施(同法23条)*28、(c)調査専門員の選任(同法24条)、(d)7日以内の権利者に対する通知(同法25条、情プラ法施行規則16条)、(e)投稿の削除等(法律上は送信防止措置の実施)の基準の公表とそれによらない削除等の禁止(同法26条)、(f)削除等を行った場合の発信者に対する通知(同法27条)、(g)削除等の実施状況等(いわゆる透明性レポート)の公表(同法28条)を義務付け((a)-(d)が迅速化規律、(e)-(g)が透明化規律と呼ばれる。)、③総務大臣に行政的な監督権限を付与することとされた(裏を返せば、体制整備義務ないし手続的な行為規制というアプローチを通じて、総務大臣の介入を構造的・手続的なものに限定し、個別のコンテンツの削除は裁判所のみが命令できることとする配慮が行われた。)。情プラ法施行規則8条6項は、指定役務提供者の指定要件として、「不特定の利用者間の交流を主たる目的としたもの」であることを定めており、それ自体は、誹謗中傷対策という令和6年プロ責法改正の本来の文脈に即したものであるが*29、基本的な指定要件である「情報の流通について侵害情報送信防止措置の実施手続の迅速化及び送信防止措置の実施状況の透明化を図る必要性」(情プラ法21条1項柱書)や、情プラ法施行規則8条6項の委任の趣旨である「その利用に係る特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害が発生するおそれ」(同法21条1項3号)(当該権利には当然知的財産権も含まれる。)の観点からは、CDNをカテゴリカルに除外する理由はなく、具体的な義務規定に照らしても、指定は一定の効果があると思われる(実際、EUのデジタルサービス法の「通知と対応」メカニズムは、CDNにも当然に適用される*30。同法前文28項、29項、16条、17条参照。)。なお、この場合、大規模SNS・掲示板と大規模CDNでは、「大規模」性を測定するために適切な指標は異なると思われることには留意する必要がある。

現行の迅速化規律は、専ら権利侵害情報を対象としているが*31、現在、法令違反情報の通知についても、迅速化規律に相当する規律を設けることが検討されている*32。仮にそのような規律を設けることとなった場合、オンラインカジノのような必ずしも権利侵害を伴わない違法サイトについても、サイト全体が違法コンテンツである限り、CDNプロバイダを通じたアクセス抑止が可能になると思われる。

一方、本人確認については、第三者への萎縮効果を考慮すると、慎重に検討する必要があり*33、仮に導入する場合でも、料金やトラフィック量によって対象を合理的な範囲に限定できないかも検討する必要があろう。例えば、(サブ)ドメインを単位として、明らかに商業ベースのもののみを対象とすることでも実効性が確保できるのであれば、萎縮効果を最小限に抑えることができる可能性がある。

まとめ

本稿で行った本判決の分析を整理すると、以下のとおりである。

第1に、本判決は、①95%以上のキャッシュヒット率、②本人確認プロセスの欠如、③DMCA通知を考慮して、情プラ法2条1項による免責を認めず、かつ過失による出版権侵害の幇助を認めた。①②は適法なコンテンツにおいても同様であることからすれば、決定的なのは③である。このように「中立的な道具」の提供者の責任が主観により左右される状況は、Winny事件決定に類似する。

第2に、CDNは他人の通信を媒介する電気通信役務であると解されているが、権利侵害通知への対応を義務付けることは、通信の秘密を侵害しない。本判決が注意義務を設定する上で通信の秘密に言及していないのは、単にそれが問題とならない場面だからである。

第3に、不法行為法上の過失(注意義務)という形であれ、CDNプロバイダにサービスの提供停止を義務付けることは、コンテンツの発信者の表現の自由の制約となる。本件で表現の自由が問題とならなかったのは、情プラ法3条1項が適用される場面では、同項の要件に、既に媒介者としての役割への配慮が織り込まれているからである。

これらの分析を前提に、関連政策への示唆を整理すると、以下のとおりである。

第1に、CDNプロバイダに情プラ法第5章を適用し、迅速化規律・透明化規律を及ぼすことは、合理的な選択肢である。そのような選択肢がある限り、「滑りやすい坂道」であり、通信サービスの信頼性を毀損する可能性の高いDNSブロッキングは、憲法上正当化されない。このことは、オンラインカジノとの関係でも同様である。

第2に、本人確認については、第三者への萎縮効果を考慮して、その要否と範囲の双方について、慎重な検討が必要である。

*1:Cloudflare, What is a content delivery network (CDN)?, https://www.cloudflare.com/learning/cdn/what-is-a-cdn/

*2:本件類似の仮想事例を検討したものとして、丸橋透「プロバイダ責任制限法」ジュリスト1573号78頁(2022)。

*3:最判平成23年1月18日民集65巻1号121頁。

*4:本判決が、規範的侵害主体論をこのように簡単に排斥したことの評価は分かれうる(東京高判平成17年3月3日判時1893号126頁(罪に濡れたふたり事件)、知財高判平成24年2月14日判時2161号86頁(Chupa Chups事件)参照)。

*5:本判決は、争点2-4に関し、①フォワードプロキシによるキャッシングは著作権法47条の4第1項2号、リバースプロキシによるキャッシングは同項柱書の問題とした上で、②いずれにおいても、自動公衆送信が権利制限の対象となるのは、それが「記録に際して」行われる場合に限られるとし(松田政行編『著作権法コンメンタール 別冊 平成30年・令和2年改正解説』48頁(勁草書房、2022)〔澤田将史〕参照)、③CDNにおいては、「記録に際して」公衆送信が行われるのではないとして、同項の適用を否定した。しかしながら、仮に規範的侵害主体論が認められるのでない限り、そもそも被告の行為に出版権の権利制限規定である47条の4第1項を適用する余地はないのではないか。

*6:総務省総合通信基盤局消費者行政第二課「プロバイダ責任制限法逐条解説」(2023年3月)14頁。「技術的に可能」というと、比較衡量を許さない趣旨にも見えるが、むしろ逆である。

*7:出版権は著作物ごとに設定されるものであり、同一ドメインに他者の出版権を侵害するコンテンツが存在するとしても、そのことが原告との関係で違法となるわけではないことに留意すべきである。

*8:通信の秘密に関する基本的文献としては、以下がある。概説書として、曽我部真裕ほか『情報法概説〔第2版〕』(弘文堂、2019)の3章2節(曽我部真裕)、小向太郎『情報法入門〔第7版〕』(NTT出版、2025)の3-1節。電気通信事業法上の通信の秘密について、多賀谷一照監修・電気通信事業法研究会編著『電気通信事業法逐条解説〔再訂増補版〕』74頁以下(情報通信振興会、2024)、鎮目征樹ほか編『情報刑法Ⅰ―サイバーセキュリティ関連犯罪』(弘文堂、2022)の5章(西貝吉晃)。論文として、宍戸常寿「通信の秘密について」企業と法創造9巻3号14頁(2013)、宍戸常寿「通信の秘密に関する覚書」高橋和之先生古稀記念487頁(有斐閣、2013)、曽我部真裕「通信の秘密の憲法解釈論」Nextcom 16号14頁(2013)、曽我部真裕「通信の秘密」法学セミナー786号(2020)、神足祐太郎「通信の秘密をめぐる議論の諸相」レファレンス834号43頁(2020)。

*9:大阪地判平成16年7月7日判例時報1882号87頁。

*10:安心ネットづくり促進協議会児童ポルノ対策作業部会法的問題検討サブワーキング「法的問題検討サブワーキング報告書」(2010年3月30日公開)4頁、オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会「オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会 中間論点整理」(2025年9月)(「オンカジ中間整理」)3頁、14頁。

*11:安心ネットづくり促進協議会児童ポルノ対策作業部会法的問題検討サブワーキング・前掲注(10)4頁。

*12:CDNは、他人の通信を媒介する電気通信事業であるとされている( 総務省「電気通信事業参入マニュアル[追補版]」(2023年1月30日最終改訂)20頁)。ただし、このことが直ちにCDNプロバイダがISP類似の機能を果たしていることを意味するわけではないことについて、石田慶樹ほか「インターネットにおけるCDNの役割に関する考察」情報法制レポート2号41頁(2021)。

*13:例えば、落合早苗「「金融検閲」から生まれつつある「言葉狩り」」コピライト770号1頁(2025)。

*14:媒介者責任全般に関して、神足祐太郎「諸外国におけるインターネット媒介者の「責任」」レファレンス839号131頁(2020)、丸橋透「媒介者の責任―責任制限法制の変容」ジュリスト1554号(2021)。

*15:最決平成29年1月31日民集71巻1号63頁。

*16:比較衡量テスト自体は、逆転事件(最判平成6年2月8日民集48巻2号149頁)、長良川事件(最判平成15年3月14日民集57巻3号229頁)を通じて形成されてきたものである。

*17:最大判昭和56年4月14日民集35巻3号620頁。

*18:博多駅事件決定(最大決昭和44年11月26日刑集23巻11号1146頁)との関係を含め、曽我部真裕「「インターネット上の情報流通の基盤」としての検索サービス」論究ジュリスト25号47頁(2018)参照。タトゥー医師法違反事件(最判令和2年9月16日刑集74巻7号805頁)における草野補足意見も参照。

*19:石田ほか・前掲注(12)42頁。

*20:したがって、仮に検索事業者に(差止めではなく)損害賠償を請求した場合、情プラ法3条1項ただし書きに該当し、同項の責任制限は適用されないと考えられる。その上で、不法行為法上、検索事業者にどのような注意義務が課されるのか(例えば、民法709条の解釈として、情プラ法3条1項が適用される場合と同等の水準まで緩和された注意義務が課されるのか)は、別途問題となりうる。

*21:成原慧「検索エンジンをめぐる表現の自由と人格権―平成29年最高裁決定及び同決定以降の検索結果削除に関する裁判例の検討」情報法制研究7号50頁(2020)。

*22:最決平成23年12月19日刑集65巻9号1380頁。

*23:東京高判令和元年10月30日公刊物未登載(令元(ネ)2753 号)(オンカジ中間整理25頁注19に引用されている。)。成原慧「海賊版サイトのブロッキングをめぐる法的問題」法学教室453号45頁(2018)、曽我部真裕「2018年情報通信法制タスクフォース 著作権侵害サイトのブロッキングに対する意見表明」情報法制レポート1号118頁(2021)も参照。

*24:オンカジ中間整理。

*25:オンカジ中間整理18頁〜20頁において、iCloudプライベートリレーに言及があるが、プライベートリレーは、AppleとCloudflareを含むCDNプロバイダの連携によって構築されている。すなわち、ユーザー→Apple管理下の入口プロキシ(Ingress Proxy)→CDNプロバイダ管理下の出口プロキシ(Egress Proxy)→接続先サーバ、という順でリレーし、AppleとCDNプロバイダの間で情報を遮断することで、Appleに対しては接続先サーバが隠蔽され、CDNプロバイダに対してはユーザーが隠蔽される(言い換えれば、通常のVPNサーバを入口サーバと出口サーバに分離することで、VPNプロバイダによる検閲を不可能にしているといえる。)。名前解決には、CDNプロバイダのDNSサーバが使用される(したがって、ISPのDNSブロッキングが回避される。)。本稿執筆時点で、プライベートリレーは、iCloud+(オンラインストレージ、プライベートリレーなどからなり、月額150円からである。)に加入している全てのユーザーが利用でき、設定も極めて容易である。Apple, iCloudプライベートリレーについて, https://support.apple.com/ja-jp/102602; Cloudflare, iCloud Private Relay: information for Cloudflare customers, https://blog.cloudflare.com/icloud-private-relay/.

*26:デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 デジタル広告ワーキンググループ「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 デジタル広告ワーキンググループ 中間取りまとめ」(2025年9月17日)。

*27:なお、テラスハウス事件は、第一義的には、放送事業者の「システミックリスク」ないしガバナンスの問題である。

*28:調査義務が課されるのは、「被侵害者から前条第一項の方法(注:指定役務提供者が定め、公表した方法)に従って侵害情報送信防止措置を講ずるよう申出があったとき」に限られる。通知の窓口の一本化は、実務上重要である。

*29:なお、情プラ法施行規則8条6項は、「不特定の利用者間の交流を主たる目的としたものであって前号の特定電気通信役務に専ら付随的に提供されるもの」(同項2号)を規制対象から除外している。例えば、ヤフーコメント(ヤフーニュースのコメント欄)が該当すると考えられる。

*30:Cloudflare自身の対応として、Cloudflare, All you need to know about the Digital Services Act, https://blog.cloudflare.com/digital-services-act/; Cloudflare’s 2024 Transparency Reports - now live with new data and a new format, https://blog.cloudflare.com/cloudflare-2024-transparency-reports-now-live-with-new-data-and-a-new-format/; EU Digital Services Act, https://www.cloudflare.com/ja-jp/eu-digital-services/.

*31:総務省「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律第26条に関するガイドライン」(令和7年9月25日最終改訂)のうち法令違反情報に関する部分は、迅速化規律とは関係がない。

*32:デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 デジタル空間における情報流通に係る制度ワーキンググループ「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 デジタル空間における情報流通に係る制度ワーキンググループ 中間取りまとめ」(2025年9月17日)。

*33:デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 デジタル空間における情報流通に係る制度ワーキンググループ・前掲注(31)67頁〜68頁。

【最高裁】亡母が受けたいじめの調査記録が子に関する保有個人情報に当たらないとした判決について

2月に出た保有個人情報開示請求に関する判例について書いていきます。

 

前提

  • 本件では、廃止された行個法が適用されている。
  • 行個法12条1項(開示請求権)は、「何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長に対し、当該行政機関の保有する自己を本人とする保有個人情報の開示を請求することができる。」としていた。
  • 行個法45条1項(適用除外)は、「第四章(注:12条を含む)の規定は、刑事事件若しくは少年の保護事件に係る裁判、検察官、検察事務官若しくは司法警察職員が行う処分、刑若しくは保護処分の執行、更生緊急保護又は恩赦に係る保有個人情報(当該裁判、処分若しくは執行を受けた者、更生緊急保護の申出をした者又は恩赦の上申があった者に係るものに限る。)については、適用しない。」としていた。
  • 行個法2条2項1号は、個人情報を、「生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。」「一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等…により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」と定義していた。
  • これらの規定は、行個法廃止後も、実質的に維持されている(個情法2条1項1号(ただし、「容易に」の文言あり)、76条1項、124条1項)。

 

本件の概要

  • 「1 本件は、上告人が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(令和3年法律第37号による廃止前のもの。以下「法」という。)12条1項に基づき、処分行政庁に対し、上告人の死亡した母(以下「亡母」という。)が収容されていた刑務所(以下「本件刑務所」という。)において同室者から受けたいじめに関する事案を調査した記録(以下「本件調査記録」という。)に記録されている情報(以下「本件情報」という。)等の開示を請求したところ、その全部を開示しない旨の決定(以下「本件決定」という。)を受けたため、被上告人を相手に、その取消しを求める事案である。」
  • (事実関係略)
  • 「3 原審は、上記事実関係等の下において、(①)亡母が、同室者から受けたいじめに関し、同室者又は被上告人に対する損害賠償請求権を有していた場合には上告人がこれを相続するところ、本件調査記録は上記請求権の存否を判断するための最も重要な証拠の一つであるから、本件情報は上記請求権の存否に密接な関連を有する情報として、上告人を本人とする保有個人情報に当たるとした上で、(②)刑の執行に係る保有個人情報が開示されれば、刑の執行を受けた者が生存するか否かにかかわらず、そのプライバシー権や名誉権が著しく侵害されるおそれがあることなどから、本件情報は法45条1項所定の保有個人情報に当たるとして、本件決定のうち本件情報を開示しないものとした部分に係る上告人の請求を棄却した。所論は、本件情報が同項所定の保有個人情報に当たるとした原審の判断には、同項の解釈適用の誤りがあるというものである。」
  • 「4 法は、生存する個人に関する情報であって、所定の要件に該当するものを 「個人情報」と定義した上で(2条2項)、個人情報のうち、刑の執行に係る保有 個人情報については、当該執行を受けた者に係るものに限り、第4章の規定を適用しないこととして開示請求等の対象から除外している(45条1項)。/亡母は生存する個人ではなく、本件情報が亡母に関するものとして法45条1項所定の保有個人情報に当たるものということはできず、また、上告人は刑の執行を受けた者ではなく、本件情報が上告人に係るものとして同項所定の保有個人情報に当たるとみる余地もない。したがって、本件情報が同項(注:45条1項。2条2項ではない。)所定の保有個人情報に当たるとした原審の判断(注:上記②の判断)には、同項の解釈適用を誤った違法がある。
  • 「5 もっとも、法12条1項に基づく開示請求が認められるためには、開示請求 に係る保有個人情報が開示請求者を本人とするものであることを要する(注:上記①はこれを肯定)。そして、本件情報が開示請求者である上告人を本人とする保有個人情報に当たるか否かを判断するに当たっては、本件情報が、上告人に関する情報であって、これに含まれる記述等により上告人を識別することができるものであるか否かを検討する必要がある(法2条2項)。/そこで検討すると、亡母の同室者又は被上告人に対する損害賠償請求権は、上告人がその発生の可能性を主張しているにとどまるものであって、上告人がこれを有しているとはいえない。そうである以上、本件調査記録に記録された亡母に関する情報は、上告人が有する損害賠償請求権に関する情報であるということはできず、上告人に関する情報であるとはいえないし、本件調査記録に記録された亡母に関する情報をもって上告人を識別することができるということもできない。このことは、本件調査記録が上記請求権の存否に関する重要な証拠であるか否かや、本件情報が上記請求権の存否に密接に関連する情報であるか否かによって、左右されるものではない。/そして、他に、本件調査記録に、上告人に関する情報であって、氏名、生年月日その他の記述等により上告人を識別することができるものが記録されていることをうかがわせる事情も見当たらない。/したがって、本件情報は、上告人を本人とする保有個人情報に当たらないというべきである。」

 

コメント

  • 本判決は、本件情報(≒本件調査記録の記載内容)が上告人に関する情報であるかについて、「亡母の同室者又は被上告人に対する損害賠償請求権は、上告人がその発生の可能性を主張しているにとどまるものであって、上告人がこれを有しているとはいえない」から、「本件調査記録に記録された亡母に関する情報は、上告人が有する損害賠償請求権に関する情報であるということはでき」ないとしている。これは、いわば、損害賠償請求権の発生が立証されていないことを理由に、本件情報が上告人に関する情報であることを否定したものであり、裏を返せば、損害賠償請求権の発生を立証すれば、本件情報が上告人に関する情報に当たる余地を認めているようにも見える。しかしながら、仮にそのような解釈が取られているのだとすれば、次の疑問がある。すなわち、第1に、本件情報が損害賠償請求権の存否に関わるからといって、相続が生じた場合には、それだけで、本件情報が相続人に関する情報に「も」なるというのは、不合理ではないか。第2に、仮に上記のような解釈を取る場合、損害賠償請求権の発生を立証するために本件情報の開示を求めている上告人に、損害賠償請求権の発生の立証を求めることになるが、これは、不合理ではないか。
  • 個情法の感覚からすると、上告人に関する個人情報該当性を否定した結論自体に違和感はない。本件は、不法行為に係る紛争の一部であり、本来的には、民事訴訟法上の証拠収集制度を充実させることで解決すべき問題だと思われる。民事訴訟法上の証拠収集制度が不十分であるがゆえに、他の制度に過剰な期待が持たれる場面は多い。
  • なお、行個法(それを引き継いだ個情法第5章も同様)は、いわゆる制度の谷間を埋めるべく、「保有個人情報」を主たる規律の対象とし、行政文書への記録を要求する代わりに、個人情報ファイルに記録されていない個人情報についても規律を及ぼしたが、本判決は、それでも解決しない問題があることを示しているように思われる。

デジタルオペレーショナルレジリエンス法(DORA)の概要

EUのDORAに関する(極めて簡潔な)メモです。なお、CTPPに該当するクラウドサービスプロバイダ(CSP)は、基本的にNIS2指令の対象になっていると思われ、CSPのセキュリティに関する規制の全体像を把握するには、NIS2指令も参照する必要があります。

 

  • 「デジタルオペレーショナルレジリエンス法(DORA)(規則2023/2554)は、EUの金融エンティティに関するデジタルオペレーショナルレジリエンスについて包括的な枠組みを確立する。金融セクターの全てのエンティティはDORAの適用対象となり、金融エンティティにICTサービスを提供し、かつ重要(critical)と特定されたICTサードパーティプロバイダー(CTPPs)は、EUの監督枠組みの適用対象となる。DORAの監督枠組みは、3つの欧州監督機構(ESAs)(すなわち、欧州銀行監督機構(EBA)、欧州証券市場監督機構(ESMA)、欧州保険・職域年金監督機構(EIOPA))に対し、主管監督当局としての役割を付与し、EU金融セクターに対して生じ得るリスクについて、CTPPsが汎欧州的規模で適切に監視されることを確保する」(EBA)。
  • DORAは、7章からなる。第1章は総則、第2章はICTリスク管理、第3章はICT関連インシデント管理等、第4章はデジタルオペレーショナルレジリエンステスト、第5章はICTサードパーティリスク管理、第6章は情報共有取決め、第7章は当局の監督権限を定める。
  • 第2章は、ICTリスク管理の一般的な枠組みを定める。第1節(=第5条)は、ガバナンス及び組織を規定する。第2節(第6条〜第16条)は、ICTリスク管理のプロセスと主要なリスク管理措置を定める。
  • 第3章は、インシデントレスポンスを定める。特に、第19条は、インシデント報告を定める。
  • 第4章は、デジタルオペレーショナルレジリエンステスト(≒セキュリティテスト)について定める。テストとして、一般的なテスト(最低年1回実施)と、TLPT(最低3年に1回実施)が定められている。TLPTは、脅威インテリジェンスに基づくレッドチーミングテストである。
  • 第5章は、ICTに関するサードパーティリスク管理を定める。
    • 第1節(第26条〜第30条)は、金融機関のサードパーティリスク管理義務を定める。特に、第30条は、金融機関とICTサードパーティサービス提供者(クラウドサービスプロバイダ等)の間の契約で合意すべき事項を定める。
    • 第2節(第31条〜第44条)は、CTPPの義務と欧州当局(EBA、EIOPA、ESMA)の監督権限を定める。当局は、CTPPの指定権限、情報提出要求・立入検査権限、勧告権限を有し、CTPPは、勧告に応答する義務を負う(従う義務はない)。当局は、CTPPが勧告の応諾を拒否した場合、最終手段として、金融エンティティに当該CTPPとの契約を終了させることを要求することができる。なお、これら以外に、DORAは、CTPPに直接に義務を課すことはしていない。
  • 第6章は、サイバー脅威情報・インテリジェンスの共有取決め(ISAC等)について定める。
  • 第7章は、加盟国当局の監督権限(基本的に金融機関に対するもの。)を定める。

「行政手続等での本人確認におけるデジタルアイデンティティの取扱いに関するガイドライン解説書」について

デジタル庁が2月に公表した「行政手続等での本人確認におけるデジタルアイデンティティの取扱いに関するガイドライン解説書(DS-512)」を読んだので、それについて書いていきます。しばらくインプットに集中していたからなのか、いつも以上に雑駁ですみません…

 

総論

  • 本文書は、昨年公表された「行政手続等での本人確認におけるデジタルアイデンティティの取扱いに関するガイドライン(DS-511)」の解説書である。ガイドラインが政府情報システムに関するルール設定を目的としている(Normative)のに対して、本文書は、情報提供を目的としている(Informative)。本文書は、ガイドラインよりも頻繁な改訂を予定しており、そのことを反映して、「本人確認に関する直近の動向(2026年初頭)」から始まっている(2頁)。
  • 「本人確認手法の検討方法」(30頁〜)は、リスクマネジメント(リスクアセスメント、PIA、DPIA)の例としても参考になると思われる。
  • 主要な本人確認書類の解説(51頁〜)は、マネロン・金融犯罪対策に関わる人は一読すべきだと思われる。

 

各論

  • 署名用電子証明書は、「電子署名を目的とした機能であるため、対象手続が電子署名を必要としない場合においては、券面事項入力補助AP等他の機能の 利用を検討すべき」(57頁)との記述は、興味深い。それ自体としては当然の内容ではありつつ、カード代替電磁的記録との使い分けを意図しているのかもしれない。なお、本ガイドラインにおいてというよりは一般的にだが、カード代替電磁的記録についての説明はもう少しあってもよいのではないかと思う。また、「使い分け」に関連して、「最新の利用者情報提供サービス」を使うためにJPKIを使用しているケースがどの程度あるのかが気になった。
  • カード代替電磁的記録について、選択的開示ができることが明記されているが(54頁)、選択的開示を行う場合(つまり、全属性の開示を行わない場合)、番号法上の「カード代替電磁的記録」を送信しているわけではないことになるのだろうか。番号法上、「カード代替電磁的記録」は、「前項第一号から第五号までに掲げる事項(注:個人番号カードの記載事項)及び本人の写真…に係る電磁的記録」である必要がある。
  • 本人確認書類の解説の箇所で、貸し借りに言及がなされているが、本人協力型の不正は対処が難しいと(改めて)感じる。貸し借りを完全に封じることができたとしても、本人がサービスを第三者のために悪用することは可能であるのであり(本人しか悪用できないようにすれば、アイデンティティ管理のミッションは一通り完了するかもしれないが)、送金代行行為の処罰が提案されたのは、そのことの帰結かもしれない。
  • 本人確認書類の解説の箇所は、実は、網羅的ではないものの、各種の本人確認(=身元確認)手法のリスクアセスメントシートにもなっており、犯収法施行規則にも見直しを迫るものになっているように思われる。なお、現行規則の下でも、金融機関には、マネロンガイドラインの下で、同様のリスクアセスメントが求められる。
  • Verifiable Credentialsはガイドライン・解説書のスコープから除外されているものの、「スマートフォンに搭載された本人確認書類等の扱いについて」(76頁〜)は、かなりVCを想定した記載に見える。
  • パスキーは、特に金融分野で(特に各種監督指針改正により)にわかに知られるようになっていると思われるが、当然silver bulletではなく、82頁に要点が簡潔にまとめられている。デジタル署名なので、暗号アルゴリズム自体が安全でも、鍵管理が不適切なら簡単に破られるという、暗号に関して従来から言われてきたことがそのまま当てはまるのだと思われる。
  • 「「利用者の責任」から「システムの責任」へ」(89頁)は、証券口座乗っ取り事案の処理や、暗号資産という究極の「利用者の責任」モデルに関連する、興味深い指摘である。PSD3のconfirmation of payeeに関するルールも、これと似た発想なのではないか。

「AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル型コード(仮称)(案)」について

「AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル型コード(仮称)(案)」に関するメモです。

 

  • AI推進法との不整合
    • AI推進法は、イノベーション促進とリスク対応の両立、国際整合性、政府の情報統制や過剰規制の回避を趣旨としており、EU法を移植することは同法全体の趣旨に反するのではないか。
    • AI推進法13条の「国際的な規範の趣旨に即した指針の整備」を定めているが、EU法の透明性義務は世界的に特異なものであり、これのみを参照することは同条の趣旨に反するのではないか。
    • AI推進法16条は、包括的な事前規制よりも、真に悪質な事案への対処を優先する趣旨と解されるところ、本コードを正当化するような態様で悪質事案が生じていることが示されたとは言えず、そのような状態でコードを策定することは同条の趣旨に反するのではないか。
  • 機関投資家と生成AI事業者の立場の違い等
    • 機関投資家は、顧客・受益者に対してフィデューシャリー・デューティーを負うが、生成AI事業者は、著作権者に対しては著作権を侵害しない義務を負うに過ぎないから、スチュワードシップ・コードを参照する合理性がないのではないか。
    • スチュワードシップ・コードを参照したのは、OECD勧告にいう“stewardship”を意識したのかもしれないが、OECD勧告における"stewardship"は危険源の管理者としての責任を意味しており、機関投資家の顧客・受益者利益を最大化する義務とは異なるのではないか。
    • 市場原理(競争)に言及があるが、生成AI利用者にとっては学習段階での権利侵害の有無は関係がない事柄であり、また、生成AI事業者と著作権者は当然には取引関係にはないから、市場原理が働くことはないのではないか。
    • 生成AI事業者と権利者の相互理解に言及があるが、知的財産権は、文化の発展等の観点から、対価回収の機会の保障と第三者の自由の保障の比較衡量の上にその保護範囲が定められ、準物権又は法定債権として行使されるものである(これに対し、ファンドをどのように運用するかは基本的に市場に委ねられている。)から、相互理解を促進すべき場面とは異なるのではないか。
  • 日EUの著作権法制の違い等
    • EUのDSM著作権指令4条では、合法アクセスやオプトアウト尊重が要件とされており、開発過程の慣行(ペイウォールの尊重、robots.txtの尊重等)が侵害の成否に影響しやすい。これに対し、日本の著作権法30条の4では、非享受目的や権利者の利益を不当に害しないことが要件とされており、これらは規範的かつ外形的事実(そこから推認可能な事実を含む。)から判断だから、EUのように広範囲な開発過程の開示を求める必要性が乏しいのではないか。
    • 特定URLが学習データに含まれるかについての回答は、EUでも求められておらず、出力から推認できるため必要性が乏しく、開発者負担が過大であるため相当性を欠くのではないか。
    • 本コードは、学習データのログ保存について、AI事業者ガイドラインを引用しているが、被引用箇所は、出力(推論)に関するものであって、学習に関するものではないのではないか。

韓国「人工知能発展と信頼基盤造成等に関する基本法施行令」の仮訳

韓国の「人工知能発展と信頼基盤造成等に関する基本法施行令」(인공지능 발전과 신뢰 기반 조성 등에 관한 기본법 시행령)の仮訳をClaudeで作成しましたので、公開します。

※本記事は大統領令の仮訳です。法律の仮訳はこちらにあります。

 

 

第1章 総則

第1条(目的)

この令は「人工知能発展と信頼基盤造成等に関する基本法」で委任された事項及びその施行に必要な事項を規定することを目的とする。

第2条(法の適用除外人工知能)

「人工知能発展と信頼基盤造成等に関する基本法」(以下「法」という。)第4条第2項で「大統領令で定める人工知能」とは、次の各号に該当する業務のみを遂行するために開発・利用される人工知能をいう。

  1. 次の各目のいずれか一つに該当する業務であって国防部長官が指定する業務
    • ア.「国防情報化基盤造成及び国防情報資源管理に関する法律」第2条第3号による国防情報通信網及び同条第4号による国防情報システムの構築・運営
    • イ.「防衛事業法」第3条第3号による武器体系及び同条第4号による戦力支援体系の開発・運用
  2. 次の各目のいずれか一つに該当する業務であって国家情報院長が指定する業務
    • ア.「経済安保のためのサプライチェーン安定化支援基本法」第15条第1項による早期警報システムの運営・管理
    • イ.「国家研究開発革新法」第21条第2項により保安課題として分類された研究開発課題の保安業務
    • ウ.「国家資源安保特別法」第20条第2項によるサイバー保安予防・対応体系の構築・運営
    • エ.「国家先端戦略産業競争力強化及び保護に関する特別措置法」第2条第1号による国家先端戦略技術の流出及び侵害行為等の調査及び措置
    • オ.「国民保護と公共安全のためのテロ防止法」第2条第6号による対テロ活動
    • カ.「防衛産業技術保護法」第2条第1号による防衛産業技術の保護と同法第11条による防衛産業技術の流出及び侵害を防止するために必要な調査及び措置
    • キ.「産業技術の流出防止及び保護に関する法律」第2条第2号による国家核心技術の流出及び侵害を防止するために必要な調査及び措置
    • ク.「電子政府法」第56条第3項により国家情報院長が安全性を確認した保安措置
    • ケ.「統合防衛法」第9条の2第1項による情報センター及び同条第2項による合同情報調査チームの対共(對共)情報業務
    • コ.「防諜業務規定」第3条による防諜業務
    • サ.「国家情報院法」第4条第1項第1号から第5号までに該当する業務
  3. 次の各目のいずれか一つに該当する業務であって警察庁長が指定する業務
    • ア.「国家先端戦略産業競争力強化及び保護に関する特別措置法」第2条第1号による国家先端戦略技術の流出及び侵害行為等の捜査及び措置
    • イ.「国民保護と公共安全のためのテロ防止法」第2条第6号による対テロ活動
    • ウ.「防衛産業技術保護法」第2条第1号による防衛産業技術の保護と同法第11条による防衛産業技術の流出及び侵害を防止するために必要な捜査及び措置
    • エ.「産業技術の流出防止及び保護に関する法律」第2条第2号による国家核心技術の流出及び侵害を防止するために必要な捜査及び措置
    • オ.「防諜業務規定」第3条による防諜業務
    • カ.「情報及び保安業務企画・調整規定」第2条第5号による情報事犯等に対する捜査及び逮捕

第2章 人工知能の健全な発展と信頼基盤造成のための推進体系

第3条(人工知能基本計画の樹立)

① 法第6条第1項但書で「大統領令で定める軽微な事項を変更する場合」とは、次の各号のいずれか一つに該当する場合をいう。

  1. 法第6条第1項による人工知能基本計画(以下「基本計画」という。)の基本方向、戦略及び目標が変更されない範囲で基本計画に含まれた細部課題の推進体系、推進日程、主管機関又は関係機関を変更する場合
  2. 基本計画の基本方向、戦略及び目標が変更されない範囲で「知能情報化基本法」第6条第1項による知能情報社会総合計画及び同法第7条第1項による知能情報社会実行計画との一貫性のある運営のために変更する場合
  3. 単純な誤謬、誤記(誤記)、脱落又は明白な誤りを訂正する場合
  4. 法令の制定・改正・廃止によりその内容を反映するために変更する場合

② 科学技術情報通信部長官は法第6条第1項により基本計画を樹立し又は変更した場合には、その内容を科学技術情報通信部のインターネットホームページに公告し、関係中央行政機関の長及び地方自治団体の長に通報しなければならない。

第4条(国家人工知能戦略委員会の構成等)

① 法第7条第4項第1号で「大統領令で定める関係中央行政機関」とは、次の各号の中央行政機関をいう。

  1. 財政経済部
  2. 科学技術情報通信部
  3. 教育部
  4. 外交部
  5. 法務部
  6. 国防部
  7. 行政安全部
  8. 文化体育観光部
  9. 産業通商部
  10. 保健福祉部
  11. 気候エネルギー環境部
  12. 雇用労働部
  13. 中小ベンチャー企業部
  14. 企画予算処
  15. 放送メディア通信委員会
  16. 個人情報保護委員会

② 法第7条第4項第4号に該当する者であって同条第3項により副委員長となった1名は常勤(常勤)とする。

③ 法第7条第4項第4号による委員の辞任等により新たに委嘱された委員の任期は前任委員任期の残余期間とする。

④ 法第7条第4項第4号による委員は同条第7項による任期が満了した場合にも後任(後任)委員が委嘱されるまでその職務を遂行できる。

⑤ 法第7条第1項による国家人工知能戦略委員会(以下「委員会」という。)の委員長(以下「委員長」という。)は同条第4項第4号による委員が次の各号のいずれか一つに該当する場合には該当委員を解嘱(解嘱)できる。

  1. 心身衰弱等により職務を遂行できなくなった場合
  2. 職務と関連した非違事実がある場合
  3. 職務怠慢、品位損傷又はその他の事由で委員として適合しないと認められる場合
  4. 法第9条第3項に該当するにもかかわらず回避しなかった場合
  5. 委員自ら職務を遂行することが困難であると意思を表明する場合
第5条(委員会の運営)

① 委員会は委員会の業務を遂行するために必要な場合には関係専門家の意見を聞き又は関係行政機関及びその他の機関・法人・団体等に資料提出又は意見提示等の協力を要請できる。

② 委員会は業務を遂行するために必要な場合には関係専門家又は機関・法人・団体等に調査又は研究を依頼できる。

③ 委員会は業務を遂行するために必要な場合には世論調査、公聴会及びセミナー開催等を通じて世論を収斂できる。

④ 委員会の委員、法第10条第1項による分科委員会(以下「分科委員会」という。)の委員、同条第2項による特別委員会(以下「特別委員会」という。)の委員、関係公務員及び関係専門家等には予算の範囲で手当、旅費とその他に必要な経費を支給できる。ただし、公務員が所管業務と直接関連して委員会に出席する場合には支給しない。

⑤ 第1項から第4項までで規定した事項以外に委員会運営に必要な事項は委員会の議決を経て委員長が定める。

第6条(国家人工知能戦略委員会支援団)

① 法第7条第12項による支援団(以下この条で「支援団」という。)には団長1名を置き、団長は次の各号の者の中から委員長が指名する。

  1. 大統領秘書室の人工知能に関する業務を補佐する秘書官
  2. 第3項により派遣され又は兼任する公務員(中央行政機関所属高位公務員団に属する公務員に限定する。)

② 支援団の団長は委員長の指揮を受けて支援団の事務を総括し所属職員を指揮・監督する。

③ 委員会は委員会又は支援団の運営等のために必要な場合中央行政機関及び地方自治団体の長又は関係機関・法人・団体等の長に所属公務員又は役職員の派遣又は兼任を要請できる。

④ 委員会は委員会又は支援団の業務遂行等のために必要な場合には予算の範囲で関連分野専門家を任期制公務員として置くことができる。

第7条(改善勧告の履行)

① 法第8条第3項により委員会から法令・制度の改善又は実践方案の樹立等に対する勧告又は意見の表明を受けた国、地方自治団体及び「公共機関の運営に関する法律」第4条による公共機関(以下「国家機関等」という。)の長は勧告又は意見の表明を受けた日から3ヶ月以内に法令・制度等の改善方案と実践方案等を樹立して委員会に報告しなければならない。

② 国家機関等の長はやむを得ない事由で第1項による期間内に改善方案と実践方案等を樹立して報告することが困難な場合には委員会にその事由を疎明し報告期間の延長を要請できる。

第8条(分科委員会等)

① 分科委員会の委員長と特別委員会の委員長は委員会の委員の中から委員長が指名する。

② 分科委員会の委員は法第7条第4項第4号による委員の中から委員長が指名する。ただし、必要な場合には副委員長(第4条第2項による常勤副委員長をいう。以下この条で同じ。)が該当分野で専門知識と経験が豊富な民間の専門家を分科委員会委員として追加委嘱できる。

③ 特別委員会の委員は委員会の委員の中から委員長が指名し又は次の各号の者の中から該当特別委員会の委員長の意見を聞いて副委員長が任命又は委嘱する。

  1. 特別委員会で議論する事案に関して学識と経験が豊富な専門家
  2. 特別委員会で議論する事案と関連した中央行政機関の長又は所属公務員
  3. 特別委員会で議論する事案と関連した公共機関(「公共機関の運営に関する法律」第4条による公共機関をいう。)の長又は所属役職員

④ 法第10条第3項による諮問団は人工知能、人工知能技術、人工知能産業及び人工知能社会(以下「人工知能等」という。)と関連した専門性があると認められる民間専門家の中から副委員長が委嘱する者で構成する。

⑤ 法第10条第4項による人工知能責任官は次の各号の者の中から委員会の要請により該当号の機関の長が指名する。

  1. 第4条第1項各号による中央行政機関の次官又は次官級公務員
  2. 特別市・広域市・特別自治市・道・特別自治道の副市長又は副知事
  3. 第1号による者以外に法第10条第4項による人工知能責任官協議会(以下「協議会」という。)の議長が協議会運営のために必要であると認める関係中央行政機関の次官又は次官級公務員(高位公務員団に属する一般職公務員又はこれに相当する公務員である副機関長を含む。)

⑥ 協議会の議長は委員会の委員の中から委員長が指名する。

⑦ 第1項から第4項までで規定した事項以外に分科委員会、特別委員会、諮問団の構成・運営等に必要な事項は委員会の議決を経て委員長が定める。

⑧ 第5項及び第6項で規定した事項以外に協議会の構成・運営等に必要な事項は協議会の議決を経て協議会の議長が定める。

第9条(人工知能政策センターの指定)

① 科学技術情報通信部長官は法第11条第1項により次の各号のいずれか一つに該当する機関・法人又は団体を人工知能政策センター(以下「人工知能政策センター」という。)として指定する。

  1. 「知能情報化基本法」第12条第1項による韓国知能情報社会振興院
  2. 次の各目のいずれか一つに該当する機関・法人又は団体であって科学技術情報通信部長官が人工知能に関する専門性を備えたと認める機関・法人又は団体
    • ア.「高等教育法」第2条による学校の付設研究所
    • イ.「公共機関の運営に関する法律」第4条による公共機関
    • ウ.「民法」第32条により設立された非営利法人であって人工知能関連政策の開発と国際規範定立・拡散のための業務を遂行する法人
    • エ.「政府出捐研究機関等の設立・運営及び育成に関する法律」第2条による政府出捐研究機関

② 科学技術情報通信部長官は第1項により人工知能政策センターを指定したときにはその事実を科学技術情報通信部のインターネットホームページに公告しなければならない。

第10条(人工知能安全研究所の運営等)

① 法第12条第2項第7号で「大統領令で定める事業」とは次の各号の事業をいう。

  1. 法第12条第1項による人工知能安全(以下「人工知能安全」という。)関連諮問及び教育
  2. 人工知能安全関連評価システムの構築及び運営
  3. 人工知能安全関連データ(「データ産業振興及び利用促進に関する基本法」第2条第1号によるデータをいう。)の確保及び公開
  4. 人工知能安全関連統計及び情報の分析・提供・共有
  5. その他に人工知能安全のために科学技術情報通信部長官が必要であると認める事業

② 科学技術情報通信部長官は法第12条第1項による人工知能安全研究所(以下「安全研究所」という。)の専門的で効率的な運営及び優秀な専門人力の確保等のために次の各号の事項が含まれた運営規定の基準を定めることができる。

  1. 組織及び人事に関する事項
  2. 研究保安及び倫理に関する事項
  3. 国内外協力体系構築及び運営に関する事項
  4. 予算及び会計に関する事項
  5. その他に安全研究所の専門的で効率的な運営のために必要な事項

③ 安全研究所は法第12条第2項各号の事業を遂行するために必要な場合には国家機関等に関連資料の提供を要請できる。

④ 安全研究所は前年度事業実績と該当年度の事業計画を毎年1月31日まで科学技術情報通信部長官に提出しなければならない。

第3章 人工知能技術開発及び産業育成

第1節 人工知能産業基盤造成

第11条(人工知能技術開発及び安全な利用支援)

法第13条第1項第5号で「大統領令で定める事業」とは次の各号の事業をいう。

  1. 人工知能技術の開発・研究・調査のためのインフラ構築及び活用支援
  2. 外国の人工知能技術の開発・研究・調査専門団体又は国際機構との協業・共同研究
  3. その他に中央行政機関の長が人工知能技術の開発・研究・調査と関連して必要であると認める事業
第12条(人工知能学習用データ支援対象事業等)

① 中央行政機関の長は法第15条第2項により次の各号の事業を支援対象事業として選定できる。

  1. 学習用データの生産及び加工技術開発事業
  2. 人工知能サービス(法第2条第6号による人工知能サービスをいう。以下同じ。)開発のための学習用データの生産・収集・管理・流通・活用促進及び品質水準確保等に関する事業
  3. 関連法制度研究及び学習用データ活用等に必要なガイド・標準契約書開発等に関する事業
  4. その他に中央行政機関の長が学習用データの生産・収集・管理・流通・活用促進及び品質水準確保のために必要であると認める事業

② 中央行政機関の長は第1項による支援対象事業を選定するときには次の各号の事項を考慮しなければならない。

  1. 法第15条第1項により推進する施策との連係性
  2. 学習用データの生産・収集・管理・流通・活用促進及び品質水準確保等に対する寄与度
  3. 人工知能産業でのデータ活用度向上、人工知能産業活性化、創業・雇用創出等予想される経済的波及効果
  4. 制度的・技術的実現可能性及び関連法令遵守如何
  5. その他に学習用データの生産・収集・管理・流通・活用促進及び品質水準確保等に関する施策の効率的推進のために必要な事項

③ 中央行政機関の長は法第15条第3項による学習用データ構築事業の円滑な施行のために必要な場合には国家機関等、法人、機関及び団体と官民協議体を構成・運営できる。

④ 第1項から第3項までで規定した事項以外に支援対象事業を選定するための評価の細部基準と評価手続等に関して必要な事項は科学技術情報通信部長官が定めて告示する。

第13条(学習用データ統合提供システムの構築及び管理)

① 科学技術情報通信部長官は法第15条第4項による統合提供システム(以下「統合提供システム」という。)が次の各号の機能を遂行できるよう構築・管理しなければならない。

  1. 学習用データの統合検索
  2. 学習用データの体系的分類
  3. 学習用データ出処提供
  4. 統合提供システムと国家機関等及び民間団体等が運営する他のデータプラットフォームとの連係
  5. 学習用データの価値評価及び品質管理関連情報の提供
  6. その他に科学技術情報通信部長官が学習用データ構築事業の効率的遂行のために必要であると認める機能

② 科学技術情報通信部長官は中央行政機関の長、地方自治団体の長又は公共機関(「知能情報化基本法」第2条第16号による公共機関をいう。以下同じ。)の長に統合提供システムと各機関が保有した個別システム及びデータとの連係、統合提供システムの運営のために必要な情報及び資料の提出等協力を要請できる。この場合要請を受けた機関の長は特別な事由がない限りこれに従わなければならない。

③ 科学技術情報通信部長官は統合提供システムを通じて提供する学習用データの最新性、正確性及び相互連係性が維持されるよう努力しなければならない。

第14条(費用の徴収)

① 科学技術情報通信部長官は法第15条第5項により統合提供システムを利用する者に対して費用を徴収でき、学習用データの種類及び活用目的により利用料を差等適用できる。

② 科学技術情報通信部長官は第1項にもかかわらず次の各号のいずれか一つに該当する場合には統合提供システムの利用料を減免できる。

  1. 中央行政機関、地方自治団体又は公共機関が利用する場合
  2. 非営利研究機関又は教育機関が学術研究又は教育目的で利用する場合
  3. その他に科学技術情報通信部長官が学習用データの種類及び活用目的を考慮して減免が必要であると認める場合

③ 統合提供システムの利用料賦課基準、減免対象及び賦課手続等に関する細部事項は科学技術情報通信部長官が定めて告示する。

第2節 人工知能技術開発及び人工知能産業活性化

第15条(人工知能技術導入・活用支援)

① 法第16条第2項第5号で「大統領令で定める事項」とは次の各号の事項をいう。

  1. 人工知能システムと人工知能システム構築・実行のための機器・装備又は基盤施設の構築及び提供
  2. 人工知能技術及び国家機関等の人工知能技術導入・活用事例に関する情報提供
  3. 利用者又は影響を受ける者を保護するために必要な教育及び技術支援
  4. その他に人工知能技術導入及び活用を促進するために中央行政機関の長又は地方自治団体の長が必要であると認める事項

② 科学技術情報通信部長官は関係中央行政機関の長又は地方自治団体の長と協議して法第16条第2項各号による支援の具体的方案を樹立して支援できる。

③ 科学技術情報通信部長官は第2項により支援の具体的方案を樹立したときには科学技術情報通信部のインターネットホームページに公告し又は案内資料を製作して企業及び公共機関等に提供しなければならない。

第16条(国際協力及び海外市場進出支援委託)

① 中央行政機関の長は法第22条第3項により同条第2項各号の事業を委託し又は代行させようとする場合には人工知能産業の振興、研究開発及び国際協力関連業務を遂行する公共機関又は団体の中から選定しなければならない。

② 中央行政機関の長は法第22条第3項により業務を委託し又は代行させる場合には委託を受け又は代行する機関又は団体と委託又は代行する業務の内容を該当中央行政機関のインターネットホームページに公告しなければならない。

第17条(人工知能集積団地指定等)

① 科学技術情報通信部長官又は地方自治団体の長は法第23条第2項により人工知能集積団地(以下「人工知能集積団地」という。)を指定するときには次の各号の事項を考慮しなければならない。

  1. 基本計画符合如何
  2. 人工知能産業の地域的集積化及び競争力強化効果
  3. 雇用創出等地域経済発展に対する寄与可能性
  4. 他の人工知能集積団地との地域的・機能的重複性、連係性、接近性及び効率性
  5. その他に専門人力確保と持続発展可能性等科学技術情報通信部長官が定めて告示する事項

② 科学技術情報通信部長官又は地方自治団体の長は人工知能集積団地を指定したときには次の各号の事項を該当機関のインターネットホームページに公告しなければならない。

  1. 人工知能集積団地の指定事実
  2. 人工知能集積団地の位置、範囲及び区域
  3. 人工知能集積団地の専担機関(法第23条第4項による専担機関をいう。以下同じ。)がある場合には専担機関の連絡先、所在地及び専担機関の長の氏名
  4. 人工知能集積団地の運営に関する基本的な事項

③ 科学技術情報通信部長官又は地方自治団体の長は法第23条第3項により人工知能集積団地の指定を取消した場合にはその事実を該当機関のインターネットホームページに公告しなければならない。

第18条(人工知能集積団地専担機関)

① 科学技術情報通信部長官は法第23条第4項により専担機関を設置し又は次の各号の要件をすべて備えた機関又は団体を専担機関として指定できる。この場合地方自治団体の長が人工知能集積団地を指定した場合にはその地方自治団体の長の申請を受けて専担機関を指定できる。

  1. 次の各目のいずれか一つに該当する機関又は団体であること
    • ア. 公共機関
    • イ.「地方自治団体出資・出捐機関の運営に関する法律」第5条により指定・告示された地方自治団体出資・出捐機関
    • ウ. その他に「民法」又は他の法律により設立された機関・団体の中で科学技術情報通信部長官が人工知能集積団地支援に関する専門性を備えたと認める機関・団体
  2. 人工知能集積団地の支援のための専担人力を5名以上常時雇用すること
  3. 人工知能集積団地として指定され又は指定される地域内又は隣接特別市、広域市、特別自治市、道、特別自治道に位置すること
  4. 業務を遂行するための事務室及び会議室を確保すること
  5. 業務を遂行するための会計・人事管理等情報システムを確保すること

② 専担機関は毎会計年度が始まる前まで次の会計年度の事業運営計画と予算に関して科学技術情報通信部長官に報告しなければならない。

③ 科学技術情報通信部長官又は地方自治団体の長が法第23条第3項により人工知能集積団地の指定を取消したときには該当人工知能集積団地の専担機関はその指定が取消されたものとみなす。

④ 科学技術情報通信部長官は第1項により指定した専担機関が次の各号のいずれか一つに該当する場合にはその指定を取消すことができる。ただし、第1号に該当する場合にはその指定を取消さなければならない。

  1. 虚偽又はその他の不正な方法で指定を受けた場合
  2. 第1項による指定基準に6ヶ月以上適合しなくなった場合

⑤ 科学技術情報通信部長官は専担機関が第4項第2号に該当する場合には同項により指定を取消す前に30日以上の期間を定めて違反事項を是正するようにできる。

第19条(人工知能実証基盤造成)

① 法第24条第2項で「大統領令で定める機関」とは次の各号のいずれか一つに該当する機関をいう。

  1. 「公共機関の運営に関する法律」第5条第4項第1号による公企業
  2. 「科学技術分野政府出捐研究機関等の設立・運営及び育成に関する法律」第2条による科学技術分野政府出捐研究機関
  3. 「産業技術革新促進法」第42条第1項による専門生産技術研究所
  4. 「地方公企業法」第3条第1項による地方公企業
  5. 「地方自治団体出捐研究院の設立及び運営に関する法律」第2条による地方自治団体出捐研究院
  6. 「特定研究機関育成法」第2条による特定研究機関
  7. 国公立大学

② 中央行政機関の長又は地方自治団体の長は第1項各号による機関に法第24条第2項による開放に必要な次の各号の資料提出を要請できる。

  1. 法第24条第1項による実証基盤等(以下「実証基盤等」という。)の種類及び位置
  2. 実証基盤等の利用条件、開放時間及び利用手続
  3. その他に実証基盤等の開放・活用のために必要な資料

③ 中央行政機関及び地方自治団体は法第24条第2項により開放する実証基盤等を保有している機関及び実証基盤等を活用しようとする者に必要な行政的・財政的・技術的支援をすることができる。

④ 科学技術情報通信部長官は法第24条第1項により構築し又は同条第2項により開放した実証基盤等の種類、利用条件及び利用費用を科学技術情報通信部のインターネットホームページに公開しなければならない。

第20条(韓国人工知能振興協会の設立認可・指定等)

① 人工知能等と関連した研究及び業務に従事する者は法第26条第1項により韓国人工知能振興協会(以下「協会」という。)を設立しようとする場合には人工知能等と関連した研究及び業務に従事する者50名以上が発起人となって定款を作成した後発起人総会の議決を経て科学技術情報通信部長官に認可を申請しなければならない。

② 第1項により認可を申請しようとする者は次の各号の書類を添付して科学技術情報通信部長官に提出しなければならない。

  1. 定款
  2. 発起人の名簿及び履歴書
  3. 事業計画書と予算の収入・支出計画書

③ 協会の定款には次の各号の事項が含まれなければならない。

  1. 目的
  2. 名称
  3. 事務所の所在地
  4. 協会の業務とその執行に関する事項
  5. 会員の資格、加入・脱退、権利・義務に関する事項
  6. 役員に関する事項
  7. 会費に関する事項
  8. 総会に関する事項
  9. 財政・会計に関する事項
  10. 定款の変更に関する事項
  11. 解散と残余財産の処理に関する事項

④ 第1項から第3項までにもかかわらず「民法」第32条により設立し人工知能等と関連した研究及び業務に従事する者50名以上の会員を保有した非営利法人であって法第26条第1項により協会として指定を受けようとする者は次の各号の書類を添付して科学技術情報通信部長官に申請しなければならない。

  1. 定款(第3項各号の事項が含まれた定款をいう。)
  2. 会員の名簿及び履歴書
  3. 事業計画書と予算の収入・支出計画書

第4章 人工知能倫理及び信頼性確保

第21条(人工知能倫理原則の制定及び公表)

① 科学技術情報通信部長官は法第27条第1項による人工知能倫理原則(以下「倫理原則」という。)を関係中央行政機関と協議して制定し又は改正できる。

② 科学技術情報通信部長官及び関係中央行政機関は第1項により制定し又は改正された倫理原則を該当機関のインターネットホームページ等に公表しなければならない。

第22条(人工知能安全性・信頼性検・認証等支援)

① 法第30条第1項第5号で「大統領令で定める事項」とは次の各号の事項をいう。

  1. 法第30条第1項による検証・認証活動(以下「検・認証等」という。)の基準、方法及び手続等の普及
  2. 検・認証等関連教育及びコンサルティング
  3. 検・認証等の品質診断及び管理
  4. 検・認証等関連研究・開発及び国際協力
  5. その他に検・認証等を支援するために科学技術情報通信部長官が必要であると認める事業

② 科学技術情報通信部長官は法第30条第2項により次の各号の情報を科学技術情報通信部のインターネットホームページ等を通じて提供できる。

  1. 検・認証等の基準、方法及び手続
  2. 検・認証等を提供する機関
  3. 検・認証等関連支援事業
  4. 検・認証等の国際基準及び活用等に関する事項
  5. その他に検・認証等と関連して科学技術情報通信部長官が必要であると認める情報

③ 科学技術情報通信部長官は法第30条第2項により検・認証等を受けようとする中小企業等(法第16条第2項第3号による中小企業等をいう。)に対して予算の範囲で検・認証等に必要な費用の全部又は一部を支援できる。

第23条(人工知能透明性確保義務)

① 法第31条第1項により人工知能事業者は高影響人工知能又は生成型人工知能を利用した製品又はサービス(以下「製品等」という。)を提供する場合次の各号のいずれか一つに該当する方法で製品等が該当人工知能に基づいて運用されるという事実を利用者に事前に告知しなければならない。

  1. 製品等に直接記載し又は契約書、使用説明書、利用約款等に記載
  2. 利用者の画面又は端末機等に表示
  3. 製品等を提供する場所(該当場所と合理的に関連した範囲の場所を含む。)に認識しやすい方法で掲示
  4. その他に製品等の特性を考慮して科学技術情報通信部長官が認める方法

② 人工知能事業者が法第31条第2項による表示をするときには次の各号のいずれか一つに該当する方法でできる。

  1. 人が認識できる方法
  2. 機械が読取できる方法。この場合その結果物が生成型人工知能により生成されたという事実を1回以上案内文句・音声等で提供しなければならない。

③ 法第31条第3項による告知又は表示は人工知能事業者が次の各号の事項を考慮して利用者が明確に認識できる方式でしなければならない。

  1. 利用者が視覚、聴覚等を通じ又はソフトウェア等を利用して容易に内容を確認できる方法で告知又は表示すること
  2. 主たる利用者の年齢、身体的・社会的条件等を考慮して告知又は表示すること

④ 第1項から第3項までの規定にもかかわらず次の各号のいずれか一つに該当する場合には第1項から第3項までの規定の中で全部又は一部を適用しないことができる。

  1. 製品・サービス名、利用者画面又は製品外面及び結果物に表示された文句等を考慮するとき高影響人工知能又は生成型人工知能を活用した事実が明白な場合
  2. 人工知能事業者の内部業務用途でのみ使用される場合
  3. その他に製品等の類型・特性又は結果物の内容、利用形態及び技術水準等を考慮して法第31条第1項から第3項までの規定の中で全部又は一部に対する適用例外が必要であると科学技術情報通信部長官が定めて告示する場合
第24条(人工知能安全性確保義務)

① 法第32条第1項で「大統領令で定める基準以上である人工知能システム」とは次の各号の基準をすべて充足する人工知能システムをいう。

  1. 学習に使用された累積演算量が10の26乗浮動小数点演算以上であること
  2. 人工知能技術の発展水準を考慮するとき現在人工知能システムに活用される人工知能技術の中で最先端の人工知能技術を適用して構成・運営されていること
  3. 人工知能システムの危険度が人の生命、身体の安全及び基本権に広範で重大な影響を及ぼす懸念があること

② 第1項第1号による学習に使用された累積演算量の具体的な算定方式は科学技術情報通信部長官が定めて告示する。

第25条(高影響人工知能の確認手続等)

① 人工知能事業者が法第33条第1項により高影響人工知能に該当するかに対して確認を要請しようとする場合には別紙書式の高影響人工知能確認要請書に次の各号の書類を添付して科学技術情報通信部長官に提出しなければならない。

  1. 該当人工知能製品又は人工知能サービスの概要書
  2. 該当人工知能システムの開発及び学習に使用された学習用データの概要
  3. 該当人工知能システムを活用する過程及び結果を確認できる資料
  4. その他に高影響人工知能該当如何の確認に参考になり得る書類

② 第1項による要請を受けた科学技術情報通信部長官は次の各号の事項を考慮して高影響人工知能該当如何を判断しなければならない。

  1. 人工知能が法第2条第4号各目のいずれか一つの領域で活用されるか如何
  2. 人の生命、身体の安全及び基本権に招来し得る危険の影響、重大性、頻度及び活用領域別特殊性
  3. 法第33条第1項により人工知能事業者が事前に検討した結果
  4. 法第33条第2項による専門委員会(以下「専門委員会」という。)の諮問を受けた場合にはその諮問結果
  5. その他に高影響人工知能の該当如何を確認するのに必要な事項であって科学技術情報通信部長官が定めて告示する事項

③ 科学技術情報通信部長官は第1項による要請を受けた場合には要請を受けた日から30日以内にその結果を回信しなければならない。ただし、製品等の複雑性及び重要性等を考慮して30日以内に回信できない場合には30日の範囲で一度延長でき、この場合確認を要請した者に延長事由と延長期間を文書で知らせなければならない。

④ 第3項により回信を受けた人工知能事業者は回信結果に異議があるときには回信を受けた日から10日以内に科学技術情報通信部長官に別紙書式の高影響人工知能再確認要請書に次の各号の書類を添付して科学技術情報通信部長官に提出しなければならない。

  1. 既存確認要請により科学技術情報通信部長官が回信した結果
  2. その他に高影響人工知能該当如何の再確認に参考になり得る書類

⑤ 第4項による再確認要請を受けた科学技術情報通信部長官は専門委員会の諮問を受けて高影響人工知能に該当するかを再確認し、再確認要請を受けた日から30日以内にその結果を回信しなければならない。

⑥ 科学技術情報通信部長官は第1項による要請又は第4項による再確認要請と関連して必要な場合には関係機関に意見提出を要請できる。

第26条(専門委員会の設置及び運営)

① 専門委員会は50名以上の委員で構成し、次の各号の者の中から科学技術情報通信部長官が任命し又は委嘱する。

  1. 人工知能関連業務を担当する中央行政機関所属公務員であって該当中央行政機関の長が推薦した者
  2. 人工知能関連技術・倫理・法律等の分野で学識と経験が豊富な者
  3. 法第2条第4号各目の分野に専門性があると中央行政機関の長が推薦した者

② 専門委員会の委員長は委員の中から科学技術情報通信部長官が指名する。

③ 専門委員会委員の任期は2年とし、一度だけ連任できる。

④ 専門委員会は法第33条第2項による高影響人工知能に対する諮問業務を効率的に遂行するために5名の委員で構成される小委員会を置くことができる。

⑤ 専門委員会委員長は専門委員会の会議案件と関連して必要な場合関連専門家を会議に出席させて発言させることができる。

⑥ 第1項から第5項までで規定した事項以外に専門委員会運営に必要な事項は科学技術情報通信部長官が定めて告示する。

第27条(高影響人工知能と関連した事業者の責務)

① 人工知能事業者は法第34条第1項各号の措置の中で次の各号に該当する内容を人工知能事業者の事務所・事業場又はインターネットホームページ等に掲示しなければならない。ただし、「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」第2条第2号による営業秘密に該当する事項は除外できる。

  1. 危険管理政策及び組織体系等法第34条第1項第1号による危険管理方案の主要内容
  2. 法第34条第1項第2号による説明方案の主要内容
  3. 法第34条第1項第3号による利用者保護方案
  4. 法第34条第1項第4号による該当高影響人工知能を管理・監督する者の氏名及び連絡先

② 人工知能事業者は法第34条第1項各号の措置を履行しその根拠を文書で5年間保管(電子的方法を通じた保管を含む。)しなければならない。

③ 法第34条第1項第1号から第3号までの措置をすべて又は一部履行した人工知能事業者から人工知能システムを提供を受けた人工知能利用事業者が該当人工知能システムの本来目的又は用途を顕著に変更する等重大な機能変更をしなかった場合には法第34条第1項第1号から第3号までの措置をすべて又は一部履行したものとみなす。

④ 人工知能利用事業者は人工知能開発事業者に法第34条第1項による責務を履行するために必要な資料の提供を要請でき、人工知能開発事業者はこれに協力するよう努力しなければならない。

⑤ 法第34条第3項により人工知能事業者が同条第1項による措置を履行したものとみなす場合は別表1の通りである。

第28条(高影響人工知能影響評価)

① 法第35条第1項による影響評価(以下「影響評価」という。)には次の各号の事項が含まれなければならない。

  1. 該当高影響人工知能を利用した製品等により人の生命、身体の安全及び基本権に影響を受ける可能性がある個人又は集団に対する識別
  2. 該当高影響人工知能と関連して影響を受け得る基本権類型の識別
  3. 該当高影響人工知能により発生し得る人の基本権に対する社会的・経済的影響の内容及び範囲
  4. 該当高影響人工知能の使用行態
  5. 影響評価で活用した定量的又は定性的評価指標及び結果算出方式
  6. 該当高影響人工知能による危険の予防・緩和・損失復旧等に関する事項
  7. 影響評価の結果改善が必要な場合にはその履行計画に関する事項

② 人工知能事業者は直接又は第三者に依頼して影響評価を実施できる。

③ 第1項及び第2項で規定した事項以外に影響評価に必要な事項は科学技術情報通信部長官が定めて告示する。

第29条(国内代理人指定事業者の基準)

① 法第36条第1項各号外の部分で「大統領令で定める基準に該当する者」とは次の各号のいずれか一つに該当する人工知能事業者をいう。

  1. 前年度(法人である場合には前事業年度をいう。)売上額が1兆ウォン以上である人工知能事業者
  2. 人工知能サービス部門前年度(法人である場合には前事業年度をいう。)売上額が100億ウォン以上である人工知能事業者
  3. 前年度末基準該当人工知能事業者の人工知能製品及び人工知能サービスに対する直前3ヶ月間国内利用者数が1日平均100万名以上である人工知能事業者
  4. 法第43条第1項第3号による過怠料を賦課を受けた事実がある人工知能事業者

② 第1項第1号及び第2号による売上額は前年度(法人である場合には前事業年度をいう。)平均為替レートを適用してウォンに換算した金額を基準とする。

第5章 補則

第30条(実態調査、統計及び指標の作成)

① 法第38条第1項による実態調査(以下「実態調査」という。)と統計及び指標の作成範囲は次の各号の通りである。

  1. 人工知能産業の現況と国内外市場規模
  2. 人工知能事業者の売上実績及び事業現況
  3. 人工知能産業従事者の人力現況及び需要・供給現況
  4. 人工知能産業関連施設現況及び運営現況
  5. 人工知能産業関連技術動向及び研究開発現況
  6. 人工知能技術及び人工知能産業関連国際動向
  7. 人工知能産業関連国内外主要法・制度動向
  8. 人工知能産業関連投資誘致現況
  9. その他に科学技術情報通信部長官が基本計画及び人工知能等に関する施策と事業の企画・樹立・推進のために必要であると認める事項

② 実態調査、統計及び指標の作成は現場調査、文献調査及び世論調査等の方法で実施するが、必要な場合には情報通信網及び電子メールを活用した電子的方式で実施できる。

③ 実態調査の結果、統計及び指標は科学技術情報通信部のインターネットホームページ等を通じて公表しなければならない。

第31条(業務の委託)

① 法第39条第2項第7号で「大統領令で定める事務」とは次の各号の事務をいう。

  1. 法第19条第2項による人工知能融合製品及びサービスの開発支援
  2. 法第25条第2項第2号による人工知能データセンター利用支援
  3. 法第33条第2項による専門委員会運営支援
  4. 法第38条による実態調査、統計及び指標の作成

② 科学技術情報通信部長官は法第39条第2項により同項各号及びこの条第1項第1号・第2号・第4号の業務を公共機関又は協会に委託できる。

③ 科学技術情報通信部長官は法第39条第2項によりこの条第1項第3号に関する業務を人工知能政策センター又は安全研究所に委託できる。

④ 科学技術情報通信部長官は第2項及び第3項により業務を委託した場合には委託を受けた機関又は団体と委託する業務の内容を科学技術情報通信部のインターネットホームページに公告しなければならない。

第32条(過怠料の賦課基準)

法第43条第1項による過怠料の賦課基準は別表2の通りである。

第33条(規制の再検討)

科学技術情報通信部長官は次の各号の事項に対して2026年1月1日を基準として3年ごとに(毎3年になる年の1月1日前までをいう。)その妥当性を検討して改善等の措置をしなければならない。

  1. 第18条による人工知能集積団地専担機関の指定及び指定取消基準
  2. 第24条による人工知能安全性確保義務対象システムの基準
  3. 第29条による国内代理人指定事業者の基準

附則 <第36053号,2026. 1. 21.>

第1条(施行日)

この令は2026年1月22日から施行する。ただし、別表1の中でデジタル医療機器に関する部分は2026年1月24日から施行する。

第2条(他の法令の廃止)

「国家人工知能戦略委員会の設置及び運営に関する規定」は廃止する。

第3条(専担機関に関する特例)

法律第20676号人工知能発展と信頼基盤造成等に関する基本法附則第3条で「組織、人力等大統領令で定める要件」とは第18条第1項各号の要件をいう。

第4条(国家人工知能戦略委員会の事務移管等に関する経過措置)

① この令施行当時従前の「国家人工知能戦略委員会の設置及び運営に関する規定」第2条による国家人工知能戦略委員会(以下「従前国家人工知能戦略委員会」という。)は法第7条による国家人工知能戦略委員会とみなす。

② この令施行当時従前国家人工知能戦略委員会の所管事務は法第7条による国家人工知能戦略委員会が承継する。

③ この令施行前に従前の「国家人工知能戦略委員会の設置及び運営に関する規定」により行われた従前国家人工知能戦略委員会の審議・議決及びその他の行為又は従前国家人工知能戦略委員会に対する行為は法第7条による国家人工知能戦略委員会の審議・議決及びその他の行為又は法第7条による国家人工知能戦略委員会に対する行為とみなす。

④ この令施行前に従前の「国家人工知能戦略委員会の設置及び運営に関する規定」第3条第3項第4号により委嘱された委員は法第7条第4項第4号により委嘱されたものとみなし、委嘱された委員の任期はその残余期間とする。

第5条(国家人工知能戦略委員会支援団に関する経過措置)

① この令施行当時従前の「国家人工知能戦略委員会の設置及び運営に関する規定」第10条により設置された国家人工知能戦略委員会支援団は第6条による国家人工知能戦略委員会支援団とみなす。

② この令施行当時従前の「国家人工知能戦略委員会の設置及び運営に関する規定」第10条により設置された国家人工知能戦略委員会支援団の所管事務及び予算は第6条による国家人工知能戦略委員会支援団が承継する。

第6条(派遣公務員等に関する経過措置)

この令施行当時従前の「国家人工知能戦略委員会の設置及び運営に関する規定」第11条により国家人工知能戦略委員会支援団に派遣され又は兼任中である公務員又は役職員は第6条第3項により国家人工知能戦略委員会支援団に派遣され又は兼任中である公務員又は役職員とみなす。

 

韓国「人工知能発展と信頼基盤造成等に関する基本法」の仮訳(若干の解説付き)

韓国の「人工知能発展と信頼基盤造成等に関する基本法」(인공지능 발전과 신뢰 기반 조성 등에 관한 기본법)の仮訳をClaudeで作成しましたので、公開します。

全体として、「日本のAI推進法を大幅に詳細化したものとEUのAI法を大幅に簡略化したものの折衷」という印象を受けました。第2章、第3章は、日本のAI法に類似します(ただし、日本のAI推進法より先に制定されているので、日本のAI推進法を真似したというよりは、韓国にも日本と同じような「基本法」の立法パターンがあり、それに沿って作ったのではないかと推察します。)。第4章は、規制法的であり、①透明性義務(31条)、②先端的AIシステム(累積演算量で判定)のリスク評価・低減とリスクマネジメント義務(32条)、③高影響AI(2条4項で定義され、列挙された分野と安全性・基本権への影響の二重の基準で判定)のリスクマネジメント義務・基本権影響評価義務(33条〜35条)を定めています(いずれもProvider相当の者とDeployer相当の者の双方に適用。両者の役割分担は法律上は明示されず)。これらの義務はEU法を想起させますが、EU法と比べると相当に概括的であり、大統領令に委任されている部分も多いのが特徴的です。これらの実効性確保のため、第5章では、科学技術情報通信部長官に調査権限と措置命令権限が与えられ(40条)、第6章では、透明性義務違反と措置命令違反について3千万ウォン(約323万円)以下の罰金が定められています(透明性義務違反は、直罰と措置命令違反罪の双方が定められていることになります)。

※本記事は法律の仮訳です。大統領令の仮訳はこちらにあります。

 

 

第1章 総則

第1条(目的)

この法律は、人工知能の健全な発展と信頼基盤造成に必要な基本的事項を規定することにより、国民の権益と尊厳性を保護し、国民の生活の質の向上と国家競争力を強化することに寄与することを目的とする。

第2条(定義)

この法律で使用する用語の意味は次のとおりである。

  1. 「人工知能」とは、学習、推論、知覚、判断、言語の理解等、人間が持つ知的能力を電子的方法で実現したものをいう。
  2. 「人工知能システム」とは、多様なレベルの自律性と適応性を持ち、与えられた目標のために実際及び仮想環境に影響を及ぼす予測、推薦、決定等の結果物を推論する人工知能基盤システムをいう。
  3. 「人工知能技術」とは、人工知能を実現するために必要なハードウェア・ソフトウェア技術又はその活用技術をいう。
  4. 「高影響人工知能」とは、人の生命、身体の安全及び基本権に重大な影響を及ぼすか危険を招くおそれがある人工知能システムとして、次の各目のいずれか一つの領域で活用されるものをいう。
    • a. 「エネルギー法」第2条第1号によるエネルギーの供給
    • b. 「飲用水管理法」第3条第1号による飲用水の生産工程
    • c. 「保健医療基本法」第3条第1号による保健医療の提供及び利用体系の構築・運営
    • d. 「医療機器法」第2条第1項による医療機器及び「デジタル医療製品法」第2条第2号によるデジタル医療機器の開発及び利用
    • e. 「原子力施設等の防護及び放射能防災対策法」第2条第1項第1号による核物質と同項第2号による原子力施設の安全な管理及び運営
    • f. 犯罪捜査や逮捕業務のための生体認識情報(顔・指紋・虹彩及び掌紋静脈等、個人を識別できる身体的・生理的・行動的特徴に関する個人情報をいう)の分析・活用
    • g. 採用、貸出審査等、個人の権利・義務関係に重大な影響を及ぼす判断又は評価
    • h. 「交通安全法」第2条第1号から第3号までによる交通手段、交通施設、交通体系の主要な作動及び運営
    • i. 公共サービス提供に必要な資格確認及び決定又は費用徴収等、国民に影響を及ぼす国家、地方自治体、「公共機関の運営に関する法律」第4条による公共機関等(以下「国家機関等」という)の意思決定
    • j. 「教育基本法」第9条第1項による幼児教育・初等教育及び中等教育での学生評価
    • k. その他、人の生命・身体の安全及び基本権保護に重大な影響を及ぼす領域として大統領令で定める領域
  5. 「生成型人工知能」とは、入力したデータ(「データ産業振興及び利用促進に関する基本法」第2条第1号によるデータをいう。以下同じ)の構造と特性を模倣して文章、音、絵、映像、その他の多様な結果物を生成する人工知能システムをいう。
  6. 「人工知能産業」とは、人工知能又は人工知能技術を活用した製品(以下「人工知能製品」という)を開発・製造・生産又は流通するか、これと関連したサービス(以下「人工知能サービス」という)を提供する産業をいう。
  7. 「人工知能事業者」とは、人工知能産業と関連した事業をする者として、次の各目のいずれか一つに該当する法人、団体、個人及び国家機関等をいう。
    • a. 人工知能開発事業者:人工知能を開発して提供する者
    • b. 人工知能利用事業者:aの事業者が提供した人工知能を利用して人工知能製品又は人工知能サービスを提供する者
  8. 「利用者」とは、人工知能製品又は人工知能サービスの提供を受ける者をいう。
  9. 「影響を受ける者」とは、人工知能製品又は人工知能サービスにより自身の生命、身体の安全及び基本権に重大な影響を受ける者をいう。
  10. 「人工知能社会」とは、人工知能を通じて産業・経済、社会・文化、行政等全ての分野で価値を創出し発展を導いていく社会をいう。
  11. 「人工知能倫理」とは、人間の尊厳性に対する尊重を基礎として、国民の権益と生命・財産を保護できる安全で信頼できる人工知能社会を実現するために、人工知能の開発、提供及び利用等全ての領域で社会構成員が守るべき倫理的基準をいう。

[施行日:2026. 1. 24.] 第2条第4号d目中デジタル医療機器に関する部分

第3条(基本原則及び国家等の責務)

① 人工知能技術と人工知能産業は、安全性と信頼性を向上させて国民の生活の質を向上させる方向で発展されなければならない。

② 影響を受ける者は、人工知能の最終結果導出に活用された主要基準及び原理等について、技術的・合理的に可能な範囲で明確で意味のある説明の提供を受けることができなければならない。

③ 国家及び地方自治体は、人工知能事業者の創意精神を尊重し、安全な人工知能利用環境の造成のために努力しなければならない。

④ 国家及び地方自治体は、人工知能がもたらす社会・経済・文化と国民の日常生活等全ての領域での変化に対応して、全ての国民が安定的に適応できるよう施策を講じなければならない。

第4条(適用範囲)

① この法律は、国外で行われた行為であっても国内市場又は利用者に影響を及ぼす場合には適用する。

② この法律は、国防又は国家安保目的のみで開発・利用される人工知能として大統領令で定める人工知能に対しては適用しない。

第5条(他の法律との関係)

① 人工知能、人工知能技術、人工知能産業及び人工知能社会(以下「人工知能等」という)に関して他の法律に特別な規定がある場合を除いては、この法律で定めるところによる。

② 人工知能等に関して他の法律を制定又は改正する場合には、この法律の目的に符合するようにしなければならない。

第2章 人工知能の健全な発展と信頼基盤造成のための推進体系

第6条(人工知能基本計画の樹立)

① 科学技術情報通信部長官は、関係中央行政機関の長及び地方自治体の長の意見を聴いて、3年ごとに人工知能技術及び人工知能産業の振興と国家競争力強化のために、人工知能基本計画(以下「基本計画」という)を第7条による国家人工知能委員会の審議・議決を経て樹立・変更及び施行しなければならない。ただし、基本計画中、大統領令で定める軽微な事項を変更する場合にはそうでない。

② 基本計画には次の各号の事項が含まれなければならない。

  1. 人工知能等に関する政策の基本方向と戦略に関する事項
  2. 人工知能産業の体系的育成のための専門人力の養成及び人工知能開発・活用促進基盤造成等に関する事項
  3. 人工知能倫理の拡散等、健全な人工知能社会実現のための法・制度及び文化に関する事項
  4. 人工知能技術開発及び人工知能産業振興のための財源の確保と投資の方向等に関する事項
  5. 人工知能の公正性・透明性・責任性・安全性確保等、信頼基盤造成に関する事項
  6. 人工知能技術の発展方向及びそれによる教育・労働・経済・文化等、社会各領域の変化と対応に関する事項
  7. その他、人工知能技術及び人工知能産業の振興と国際協力等、国家競争力強化のために科学技術情報通信部長官が必要と認める事項

③ 科学技術情報通信部長官は、基本計画を樹立するときには「知能情報化基本法」第6条第1項による総合計画及び同法第7条第1項による実行計画を考慮しなければならない。

④ 科学技術情報通信部長官は、関係中央行政機関、地方自治体及び公共機関(「知能情報化基本法」第2条第16号による公共機関をいう。以下同じ)の長に基本計画の樹立に必要な資料の提出を要請できる。この場合、資料の提出を要請された機関の長は、特別な事情がなければこれに従わなければならない。

⑤ 基本計画は、「知能情報化基本法」第13条第1項による人工知能及び人工知能産業分野の部門別推進計画とみなす。

⑥ 中央行政機関の長及び地方自治体の長は、所管主要政策を樹立し執行するときに基本計画を考慮しなければならない。

⑦ 基本計画の樹立・変更及び施行に必要な事項は大統領令で定める。

第7条(国家人工知能委員会)

① 人工知能発展と信頼基盤造成等のための主要政策等に関する事項を審議・議決するために、大統領所属として国家人工知能委員会(以下「委員会」という)を置く。

② 委員会は、委員長1名と副委員長1名を含む45名以内の委員で構成する。この場合、第4項第4号による委員が全体委員の過半数にならなければならず、特定性(性)のみで委員会を構成することはできない。

③ 委員会の委員長は大統領になり、副委員長は第4項第4号に該当する人の中から大統領が指名する人になる。

④ 委員会の委員は次の各号の人になる。

  1. 大統領令で定める関係中央行政機関の長
  2. 国家安保室の人工知能に関する業務を担当する次長
  3. 大統領秘書室の人工知能に関する業務を補佐する首席秘書官
  4. 人工知能関連専門知識と経験が豊富な人の中から大統領が委嘱する人

⑤ 委員会の委員長は、委員会を代表し委員会の事務を統括する。

⑥ 委員会の委員長は、必要な場合、副委員長にその職務を代行させることができる。

⑦ 第4項第4号による委員の任期は2年とするが、一度に限り再任できる。

⑧ 委員会に幹事委員1名を置き、幹事委員は第4項第3号の委員になる。

⑨ 委員会の委員は、その職務上知り得た秘密を他人に漏洩したり職務上目的外の用途で使用してはならない。ただし、他の法律に特別な規定がある場合にはそうでない。

⑩ 委員会の委員長は、委員会の会議を召集しその議長になる。

⑪ 委員会の会議は、委員過半数の出席で開議し、出席委員過半数の賛成で議決する。

⑫ 委員会の業務及び運営を支援するために、委員会に支援団を置く。

⑬ 委員会は、この法律施行日から5年間存続する。

⑭ その他、委員会と第12項による支援団の構成及び運営等に必要な事項は大統領令で定める。

第8条(委員会の機能)

① 委員会は次の各号の事項を審議・議決する。

  1. 基本計画の樹立・変更及び施行の点検・分析に関する事項
  2. 人工知能等関連政策に関する事項
  3. 人工知能等に関する研究開発戦略樹立に関する事項
  4. 人工知能等に関する投資戦略樹立に関する事項
  5. 人工知能産業発展と競争力を阻害する規制の発掘及び改善に関する事項
  6. 人工知能データセンター(「知能情報化基本法」第40条第1項によるデータセンターをいう。以下同じ)等、インフラ拡充方案に関する事項
  7. 製造業・サービス業等、産業部門及び公共部門での人工知能活用促進に関する事項
  8. 人工知能国際規範作成等、人工知能関連国際協力に関する事項
  9. 第2項による勧告又は意見の表明に関する事項
  10. 高影響人工知能規律に関する事項
  11. 高影響人工知能と関連した社会的変化様相と政策的対応に関する事項
  12. この法律又は他の法律で委員会の審議事項と定めた事項
  13. その他、委員会の委員長が必要と認めて委員会の会議に付する事項

② 委員会は、国家機関等の長及び人工知能事業者等に対して、人工知能の正しい使用と人工知能倫理の実践、人工知能技術の安全性・信頼性に関する勧告又は意見の表明をすることができる。

③ 委員会が国家機関等の長に法令・制度の改善又は実践方案の樹立等について第2項による勧告又は意見の表明をしたときには、該当国家機関等の長は法令・制度等の改善方案と実践方案等を樹立しなければならない。

第9条(委員の除斥・忌避及び回避)

① 委員会の委員は、業務の公正性確保のために次の各号のいずれか一つに該当する場合には、該当案件の審議・議決から除斥される。

  1. 委員又は委員が属する法人・団体等と直接的な利害関係がある場合
  2. 委員の家族(「民法」第779条による家族をいう)が利害関係人である場合

② 審議対象案件の当事者(当事者が法人・団体等である場合にはその役員及び職員を含む)は、委員に公正な職務執行を期待し難い事情があれば委員会に忌避申請をすることができ、委員会は忌避申請が妥当と認めれば議決で忌避を決定しなければならない。

③ 委員は、第1項又は第2項の事由に該当すれば自ら該当案件の審議を回避しなければならない。

第10条(分科委員会等)

① 委員会は、委員会の業務を専門分野別に遂行するために必要な場合、分科委員会を置くことができる。

② 委員会は、人工知能等関連特定懸案を討議するために必要な場合、特別委員会を置くことができる。

③ 委員会は、人工知能等関連事項を専門的に検討するために、関係専門家等で構成された諮問団を置くことができる。

④ その他、分科委員会、特別委員会及び諮問団の構成・運営等に必要な事項は大統領令で定める。

第11条(人工知能政策センター)

① 科学技術情報通信部長官は、人工知能関連政策の開発と国際規範定立・拡散に必要な業務を総合的に遂行するために、人工知能政策センター(以下「センター」という)を指定できる。

② センターは次の各号の事業を遂行する。

  1. 基本計画の樹立・施行に必要な専門技術の支援
  2. 人工知能と関連した施策の開発及び関連事業の企画・施行に関する専門技術の支援
  3. 人工知能の活用拡散による社会、経済、文化及び国民の日常生活等に及ぼす影響の調査・分析
  4. 人工知能及び人工知能技術関連政策開発を支援するための動向分析、社会・文化変化と未来予測及び法・制度の調査・研究
  5. 他の法令でセンターの業務と定めるか、センターに委託した事業
  6. その他、国家機関等の長が委託する事業

③ その他、センターの指定等に必要な事項は大統領令で定める。

第12条(人工知能安全研究所)

① 科学技術情報通信部長官は、人工知能と関連して発生し得る危険から国民の生命・身体・財産等を保護し、人工知能社会の信頼基盤を維持するための状態(以下「人工知能安全」という)を確保するための業務を専門的かつ効率的に遂行するために、人工知能安全研究所(以下「安全研究所」という)を運営できる。

② 安全研究所は次の各号の事業を遂行する。

  1. 人工知能安全関連危険定義及び分析
  2. 人工知能安全政策研究
  3. 人工知能安全評価基準・方法研究
  4. 人工知能安全技術及び標準化研究
  5. 人工知能安全関連国際交流・国際協力
  6. 第32条による人工知能システムの安全性確保に関する支援
  7. その他、人工知能安全に関する事業として大統領令で定める事業

③ 政府は、安全研究所の運営と事業推進等に必要な経費を予算の範囲で出捐又は支援できる。

④ その他、安全研究所の運営等に必要な事項は大統領令で定める。

第3章 人工知能技術開発及び産業育成

第1節 人工知能産業基盤造成

第13条(人工知能技術の開発及び利用の促進等)

① 政府は、人工知能技術の競争力と人工知能サービス品質を向上させるために、次の各号の事業を推進できる。

  1. 人工知能技術、人工知能製品又は人工知能サービスの研究開発及び標準化
  2. 人工知能技術に関する創業及び企業成長支援
  3. 人工知能基盤の新製品・新技術・新サービスの開発及び実証事業
  4. 人工知能技術の活用促進のための公共部門及び民間部門への拡散事業
  5. 人工知能技術、人工知能製品又は人工知能サービスの国際標準の開発
  6. その他、人工知能技術、人工知能製品又は人工知能サービスの開発及び利用促進のために必要な事業

② 政府は、第1項各号の事業を効率的に推進するために必要と認めれば、人工知能関連基盤施設・装備を構築し支援できる。

③ 政府は、第1項各号の事業を推進する者に対して予算の範囲で必要な経費の全部又は一部を支援できる。

第14条(人工知能インフラ拡充)

① 政府は、人工知能技術及び人工知能産業の発展を促進するために、次の各号の人工知能インフラの拡充に関する政策を樹立し推進しなければならない。

  1. 「クラウドコンピューティング発展及び利用者保護に関する法律」第2条第2号によるクラウドコンピューティングサービス
  2. 人工知能データセンター等、人工知能開発に必要な計算インフラ
  3. 「知能情報化基本法」第2条第9号による知能情報技術及び同条第10号による知能情報サービス
  4. その他、人工知能技術及び人工知能産業の発展のための必要なインフラとして大統領令で定めるもの

② 政府は、第1項に規定した政策を効率的に推進するために必要な場合には予算の範囲で必要な経費を支援できる。

第15条(学習用データの構築・活用等)

① 政府は、人工知能技術及び人工知能産業の競争力を強化するために学習用データ(人工知能の開発及び性能向上等のために活用されるデータをいう。以下同じ)の構築・活用に関する次の各号の施策を推進できる。

  1. 学習用データの収集・生産、管理・保存、流通・利用、連携・統合に関する事項
  2. 学習用データの品質向上及び高度化に関する事項
  3. 学習用データの安全な構築及び活用に関する事項
  4. 学習用データの円滑な構築及び活用のための法令・制度の改善に関する事項
  5. その他、学習用データの構築・活用の活性化のために大統領令で定める事項

② 政府は、学習用データの円滑な構築を支援するために学習用データの生産・収集・管理・流通及び活用等に関する事業を推進できる。

③ 政府は、第2項による事業を効率的に遂行するために学習用データの構築事業を推進できる。

④ 政府は、第1項から第3項までの規定による施策及び事業を推進するために必要な場合には予算の範囲で必要な経費の全部又は一部を支援できる。

⑤ 第2項及び第3項による学習用データ関連事業の推進等に必要な事項は大統領令で定める。

第16条(学習用データ統合提供システムの構築・運営)

① 科学技術情報通信部長官は、第15条第2項及び第3項による学習用データ構築事業の成果物を含む学習用データを体系的に管理し多様な需要者が円滑に利用できるようにするために、学習用データ統合提供システム(以下「統合提供システム」という)を構築・運営できる。

② 科学技術情報通信部長官は、統合提供システムの構築・運営のために関係中央行政機関、地方自治体及び公共機関の長に学習用データの提供を要請できる。この場合、関係中央行政機関、地方自治体及び公共機関の長は、特別な事情がなければこれに従わなければならない。

③ その他、統合提供システムの構築・運営等に必要な事項は大統領令で定める。

第17条(人工知能人材養成)

① 政府は、人工知能技術を専門的に研究開発する人材を養成し、人工知能関連産業に従事する人材を育成するための事業を推進できる。

② 政府は、第1項による事業を効率的に推進するために必要な場合には予算の範囲で関連事業に対する必要な経費を支援できる。

第18条(人工知能産業の創業活性化)

① 政府は、人工知能産業での創業を促進し、人工知能を活用した創業を活性化するために、人工知能技術に基づいた創業及び事業化の支援に関する政策を樹立し推進しなければならない。

② 政府は、第1項による事業化の支援のために予算の範囲で人的・物的資源を供給できる。

第19条(人工知能産業の中小企業等の支援)

① 政府は、人工知能産業の中小企業等(「中小企業基本法」第2条による中小企業、「中堅企業成長促進及び競争力強化に関する特別法」第2条第1号による中堅企業及び「中小企業創業支援法」第2条第2号による創業者をいう。以下同じ)が成長できるよう支援するために、次の各号の事業を推進できる。

  1. 人工知能関連技術支援及びコンサルティング
  2. 人工知能関連技術事業化支援
  3. 人工知能技術を活用した製品及びサービスの海外進出支援
  4. 人工知能産業投資財源の拡大及び投資連携支援
  5. その他、人工知能産業の中小企業等の支援に必要な事項として大統領令で定める事項

② 政府は、第1項による事業を推進するために必要な場合には予算の範囲で必要な経費を支援できる。

第20条(租税減免等)

政府は、人工知能産業の発展を促進するために、人工知能関連技術開発及び人工知能製品・人工知能サービスの生産・供給・利用促進等に必要な租税減免及び財政・金融上の支援施策を講じることができる。

第21条(公共調達)

政府及び地方自治体は、人工知能産業の活性化及び中小企業等の人工知能製品の販路拡大のために、人工知能製品の優先購買等、必要な施策を講じることができる。

第2節 人工知能産業の集積化支援

第22条(人工知能融合集積地の指定)

① 科学技術情報通信部長官は、人工知能産業の体系的育成及び人工知能開発・活用のための基盤造成等のために、既存の産業集積地域を人工知能融合集積地(以下「集積地」という)として指定できる。

② 第1項による集積地の指定基準、指定手続等に必要な事項は大統領令で定める。

第23条(集積地の育成)

① 科学技術情報通信部長官は、集積地の効率的造成及び運営・管理のために専門機関(以下「専担機関」という)を指定できる。

② 専担機関は、集積地の効率的造成及び運営・管理を支援するために、次の各号の事業を推進できる。

  1. 集積地の運営・管理に関する事項
  2. 集積地入居機関・企業の支援に関する事項
  3. 集積地の施設及び装備の構築・運営に関する事項
  4. 集積地と関連した国際交流・協力に関する事項
  5. その他、集積地の効率的造成及び運営・管理のために科学技術情報通信部長官が必要と認める事項

③ 政府は、専担機関の運営に必要な経費の全部又は一部を予算の範囲で支援できる。

④ 専担機関の指定基準、指定手続、指定取消等に必要な事項は大統領令で定める。

第24条(人工知能融合地区の指定)

① 科学技術情報通信部長官は、人工知能製品及び人工知能サービスの開発・実証を支援するために、一定地域を人工知能融合地区(以下「融合地区」という)として指定できる。

② 融合地区では、人工知能製品及び人工知能サービスの開発及び実証のために、関係中央行政機関の長との協議を経て、既存法令の全部又は一部を適用しないか、異なる基準を適用する実証特例を与えることができる。

③ 第2項による実証特例の付与手続等に関しては「産業融合促進法」第10条から第16条までの規定を準用する。この場合「産業通商資源部長官」は「科学技術情報通信部長官」と、「産業融合促進計画」は「基本計画」と、「産業融合新製品等」は「人工知能製品又は人工知能サービス」とみなす。

④ 第1項による融合地区の指定基準、指定手続等に必要な事項は大統領令で定める。

第25条(人工知能中核研究開発インフラの構築)

① 政府は、人工知能技術の研究開発、人工知能製品の開発及び人工知能サービスの試験・実証のために、人工知能中核研究開発インフラ(以下「中核インフラ」という)を構築・運営できる。

② 中核インフラには次の各号の施設及び装備を含むことができる。

  1. 人工知能研究開発に必要な施設及び装備
  2. 人工知能製品の開発のために必要な試験・認証施設及び装備
  3. 人工知能サービスの試験・実証のために必要な施設及び装備
  4. その他、人工知能中核研究開発のために大統領令で定める施設及び装備

③ 政府は、中核インフラの構築・運営のために必要な経費を予算の範囲で支援できる。

④ その他、中核インフラの構築・運営等に必要な事項は大統領令で定める。

第26条(韓国人工知能振興協会)

① 人工知能等と関連した研究及び業務に従事する者は、人工知能の開発・利用促進、人工知能産業及び人工知能技術の振興、人工知能等に対する教育・広報等のために、大統領令で定めるところにより科学技術情報通信部長官の認可を受けて韓国人工知能振興協会(以下「協会」という)を設立するか、協会として指定を受けることができる。

② 協会は法人とする。

③ 協会は次の各号の業務を遂行する。

  1. 人工知能技術、人工知能製品又は人工知能サービスの利用促進及び拡散
  2. 人工知能等に対する現況及び関連統計調査
  3. 人工知能事業者のための共同利用施設の設置・運営及び専門人力養成のための教育等
  4. 人工知能事業者及び人工知能関連専門人力の海外進出支援
  5. 安全で信頼できる人工知能の開発・活用のための教育及び広報
  6. この法律又は他の法律により協会が委託を受けた事業
  7. その他、協会の設立目的を達成するのに必要な事業として定款で定める事業

④ 国家及び地方自治体は、人工知能産業の発展と信頼基盤造成のために必要な場合、予算の範囲で協会の事業遂行に必要な資金を支援するか、運営に必要な経費を補助できる。

⑤ 協会会員の資格と役員に関する事項、協会の業務等は定款で定め、その他、定款に含めるべき事項は大統領令で定める。

⑥ 科学技術情報通信部長官は、第1項による認可をしたときには、その事実を公告しなければならない。

⑦ 協会に関してこの法律に規定されたことを除いては、「民法」中社団法人に関する規定を準用する。

第4章 人工知能倫理及び信頼性確保

第27条(人工知能倫理原則等)

① 政府は、人工知能倫理の拡散のために、次の各号の事項を含む人工知能倫理原則(以下「倫理原則」という)を大統領令で定めるところにより制定・公表できる。

  1. 人工知能の開発・活用等の過程で人の生命と身体、精神的健康等に害にならないようにする安全性と信頼性に関する事項
  2. 人工知能技術が適用された製品・サービス等を全ての人が自由かつ便利に利用できる接近性に関する事項
  3. 人の生活と繁栄への貢献のための人工知能の開発・活用等に関する事項

② 科学技術情報通信部長官は、社会各界の意見を収斂して、倫理原則が人工知能の開発・活用等に関与する全ての人により実現されるよう実践方案を樹立し、これを公開及び広報・教育しなければならない。

③ 中央行政機関又は地方自治体の長が人工知能倫理基準(その名称及び形態を問わず、人工知能倫理に関する法令、基準、指針、ガイドライン等をいう)を制定又は改正する場合、科学技術情報通信部長官は、倫理原則及び第2項による実践方案との連携性・整合性等に関する勧告又は意見の表明をすることができる。

第28条(民間自律人工知能倫理委員会の設置等)

① 次の各号の機関又は団体は、倫理原則を遵守するために民間自律人工知能倫理委員会(以下「民間自律委員会」という)を置くことができる。

  1. 人工知能技術研究及び開発を遂行する人が所属する教育機関・研究機関
  2. 人工知能事業者
  3. その他、大統領令で定める人工知能技術関連機関

② 民間自律委員会は次の各号の業務を自律的に遂行する。

  1. 人工知能技術研究・開発・活用において倫理原則の遵守有無確認
  2. 人工知能技術研究・開発・活用の安全及び人権侵害等に関する調査・研究
  3. 人工知能技術研究・開発・活用の手続及び結果に関する調査・監督
  4. 該当機関又は団体の研究者及び従事者に対する倫理原則教育
  5. 人工知能技術研究・開発・活用に適合した分野別人工知能倫理指針作成
  6. その他、倫理原則具現に必要な業務

③ 民間自律委員会の構成・運営等に必要な事項は、該当機関又は団体等で自律的に定める。ただし、その構成を特定の性(性)のみでできず、社会的・倫理的妥当性を評価できる経験と知識を備えた人及びその機関又は団体に従事しない人をそれぞれ含めなければならない。

④ 科学技術情報通信部長官は、民間自律委員会の公正かつ中立的な構成・運営のために標準指針等を作成して普及できる。

第29条(人工知能信頼基盤造成のための施策の作成)

政府は、人工知能が国民の生活に及ぼす潜在的危険を最小化し、安全な人工知能の利用のための信頼基盤を造成するために、次の各号の施策を作成しなければならない。

  1. 安全で信頼できる人工知能利用環境造成
  2. 人工知能の利用が国民の日常生活に及ぼす影響等に関する展望と予測及び関連法令・制度の整備
  3. 人工知能の安全性・信頼性確保のための安全技術及び認証技術の開発及び拡散支援
  4. 安全で信頼できる人工知能社会実現及び人工知能倫理実践のための教育・広報
  5. 人工知能事業者の安全性・信頼性関連自律的な規約の制定・施行支援
  6. 人工知能事業者、利用者等で構成された人工知能関連団体(以下「団体等」という)の人工知能の安全性・信頼性増進のための自律的な協力、倫理指針制定等、民間活動の支援及び拡散
  7. その他、人工知能の安全性・信頼性確保のために大統領令で定める事項

第30条(人工知能安全性・信頼性検・認証等支援)

① 科学技術情報通信部長官は、団体等が人工知能の安全性・信頼性確保のために自律的に推進する検証・認証活動(以下「検・認証等」という)を支援するために、次の各号の事業を推進できる。

  1. 人工知能の開発に関するガイドライン普及
  2. 検・認証等に関する研究の支援
  3. 検・認証等に利用される装備及びシステムの構築・運営支援
  4. 検・認証等に必要な専門人力の養成支援
  5. その他、検・認証等を支援するために大統領令で定める事項

② 科学技術情報通信部長官は、検・認証等を受けようとする中小企業等に対して、大統領令で定めるところにより関連情報を提供するか、行政的・財政的支援をすることができる。

③ 人工知能事業者が高影響人工知能を提供する場合、事前に検・認証等を受けるよう努力しなければならない。

④ 国家機関等が高影響人工知能を利用しようとする場合には、検・認証等を受けた人工知能に基づいた製品又はサービスを優先的に考慮しなければならない。

第31条(人工知能透明性確保義務)

① 人工知能事業者は、高影響人工知能や生成型人工知能を利用した製品又はサービスを提供しようとする場合、製品又はサービスが該当人工知能に基づいて運用されるという事実を利用者に事前に告知しなければならない。

② 人工知能事業者は、生成型人工知能又はこれを利用した製品又はサービスを提供する場合、その結果物が生成型人工知能により生成されたという事実を表示しなければならない。

③ 人工知能事業者は、人工知能システムを利用して実際と区分し難い仮想の音響、イメージ又は映像等の結果物を提供する場合、該当結果物が人工知能システムにより生成されたという事実を利用者が明確に認識できる方式で告知又は表示しなければならない。この場合、該当結果物が芸術的・創意的表現物に該当するか、その一部を構成する場合には、展示又は享有等を阻害しない方式で告知又は表示できる。

④ その他、第1項による事前告知、第2項による表示、第3項による告知又は表示の方法及びその例外等に関して必要な事項は大統領令で定める。

第32条(人工知能安全性確保義務)

① 人工知能事業者は、学習に使用された累積演算量が大統領令で定める基準以上である人工知能システムの安全性を確保するために、次の各号の事項を履行しなければならない。

  1. 人工知能ライフサイクル全般にわたる危険の識別・評価及び緩和
  2. 人工知能関連安全事故をモニタリングし対応する危険管理体系構築

② 人工知能事業者は、第1項各号による事項の履行結果を科学技術情報通信部長官に提出しなければならない。

③ 科学技術情報通信部長官は、第1項各号による事項の具体的な履行方式及び第2項による結果提出等に必要な事項を定めて告示しなければならない。

第33条(高影響人工知能の確認)

① 人工知能事業者は、人工知能又はこれを利用した製品・サービスを提供する場合、その人工知能が高影響人工知能に該当するかについて事前に検討しなければならず、必要な場合、科学技術情報通信部長官に高影響人工知能に該当するか否かの確認を要請できる。

② 科学技術情報通信部長官は、第1項による要請がある場合、高影響人工知能該当有無を確認しなければならず、必要な場合、専門委員会を設置して関連諮問を受けることができる。

③ 科学技術情報通信部長官は、高影響人工知能の基準と例示等に関するガイドラインを樹立して普及できる。

④ その他、第1項による確認手続等に関して必要な事項は大統領令で定める。

第34条(高影響人工知能と関連した事業者の責務)

① 人工知能事業者は、高影響人工知能又はこれを利用した製品・サービスを提供する場合、高影響人工知能の安全性・信頼性を確保するために、次の各号の内容を含む措置を大統領令で定めるところにより履行しなければならない。

  1. 危険管理方案の樹立・運営
  2. 技術的に可能な範囲での人工知能が導出した最終結果、人工知能の最終結果導出に活用された主要基準、人工知能の開発・活用に使用された学習用データの概要等に対する説明方案の樹立・施行
  3. 利用者保護方案の樹立・運営
  4. 高影響人工知能に対する人の管理・監督
  5. 安全性・信頼性確保のための措置の内容を確認できる文書の作成と保管
  6. その他、高影響人工知能の安全性・信頼性確保のために委員会で審議・議決された事項

② 科学技術情報通信部長官は、第1項各号による措置の具体的な事項を定めて告示し、人工知能事業者にこれを遵守するよう勧告できる。

③ 人工知能事業者が他の法令により第1項各号に準ずる措置を大統領令で定めるところにより履行した場合には、第1項による措置を履行したものとみなす。

第35条(高影響人工知能影響評価)

① 人工知能事業者が高影響人工知能を利用した製品又はサービスを提供する場合、事前に人の基本権に及ぼす影響を評価(以下「影響評価」という)するために努力しなければならない。

② 国家機関等が高影響人工知能を利用した製品又はサービスを利用しようとする場合には、影響評価を実施した製品又はサービスを優先的に考慮しなければならない。

③ その他、影響評価の具体的な内容・方法等に関して必要な事項は大統領令で定める。

第36条(国内代理人指定)

① 国内に住所又は営業所がない人工知能事業者として、利用者数、売上額等が大統領令で定める基準に該当する者は、次の各号の事項を代理する者(以下「国内代理人」という)を書面で指定し、これを科学技術情報通信部長官に申告しなければならない。

  1. 第32条第2項による履行結果の提出
  2. 第33条第1項による高影響人工知能該当有無確認の要請
  3. 第34条第1項各号による安全性・信頼性確保措置の履行に必要な支援(同項第5号による文書の最新性・正確性に対する点検を含む)

② 国内代理人は、国内に住所又は営業所がある者とする。

③ 国内代理人が第1項各号と関連してこの法律に違反した場合には、該当国内代理人を指定した人工知能事業者がその行為をしたものとみなす。

第5章 補則

第37条(人工知能産業の振興のための財源の拡充等)

① 国家は、基本計画及びこの法律による施策等を効果的に推進するために必要な財源を持続的かつ安定的に拡充できる方案を作成しなければならない。

② 科学技術情報通信部長官は、人工知能産業の振興のために必要な場合には、公共機関に人工知能産業の振興に関する事業等に必要な支援をするよう勧告できる。

③ 国家及び地方自治体は、企業等民間が積極的に人工知能産業の振興と関連した事業に投資できるよう必要な措置を作成しなければならない。

④ 国家及び地方自治体は、人工知能産業の発展段階等を総合的に考慮して投資財源を効率的に執行するよう努力しなければならない。

第38条(実態調査、統計及び指標の作成)

① 科学技術情報通信部長官は、統計庁長と協議して、基本計画及び人工知能等関連施策と事業の企画・樹立・推進のために、国内外人工知能等に関する実態調査、統計及び指標を「科学技術基本法」第26条の2による統計と連携して作成・管理し公表しなければならない。

② 科学技術情報通信部長官は、第1項による統計及び指標の作成のために、関係中央行政機関の長、地方自治体の長及び公共機関の長に資料の提出等、協力を要請できる。この場合、協力を要請された機関の長は、特別な事情がなければこれに従わなければならない。

③ その他、第1項による実態調査、統計及び指標の作成・管理及び公表等に必要な事項は大統領令で定める。

第39条(権限の委任及び業務の委託)

① 科学技術情報通信部長官又は関係中央行政機関の長は、この法律による権限の一部を大統領令で定めるところにより所属機関の長又は特別市長・広域市長・特別自治市長・道知事・特別自治道知事(以下この条で「市・道知事」という)に委任できる。この場合、市・道知事は委任を受けた権限の一部を市長(「済州特別自治道設置及び国際自由都市造成のための特別法」第11条第2項による行政市長を含む)・郡守・区庁長(自治区の区庁長をいう)に再委任できる。

② 政府は次の各号の業務を大統領令で定めるところにより関連機関又は団体に委託できる。

  1. 第13条による人工知能技術開発及び利用関連事業に対する支援
  2. 第15条第2項及び第3項による学習用データの生産・収集・管理・流通及び活用等に関する支援対象事業の選定・支援と学習用データ構築事業の推進
  3. 統合提供システムの構築・運営及び管理
  4. 第18条による創業活性化のために科学技術情報通信部長官が必要と認める事項
  5. 第30条第2項による検・認証等関連支援
  6. 第38条による実態調査、統計及び指標の作成
  7. その他、人工知能産業の育成及び人工知能倫理の拡散のために大統領令で定める事務

第40条(事実調査等)

① 科学技術情報通信部長官は、次の各号のいずれか一つに該当する場合には、人工知能事業者に対して関連資料を提出させるか、所属公務員に必要な調査をさせることができる。

  1. 第31条第2項・第3項、第32条第1項・第2項又は第34条第1項に違反する事項を発見したり嫌疑があることを知った場合
  2. 第31条第2項・第3項、第32条第1項・第2項又は第34条第1項の違反に対する申告を受けたり苦情が接受された場合

② 科学技術情報通信部長官は、第1項による調査のために必要な場合、所属公務員に人工知能事業者の事務所・事業場に出入りして帳簿・書類、その他の資料や物件を調査させることができる。この場合、調査の内容・方法及び手続等に関してこの法律で定める事項を除いては「行政調査基本法」で定めるところによる。

③ 科学技術情報通信部長官は、第1項及び第2項による調査結果、人工知能事業者がこの法律に違反した事実があると認められれば、人工知能事業者に該当違反行為の中止や是正のために必要な措置を命じることができる。

第41条(罰則適用で公務員擬制)

① 委員会の委員中、公務員でない委員は「刑法」第129条から第132条までによる罰則を適用するときには公務員とみなす。

② 第39条第2項により委託を受けた業務に従事する機関又は団体の役職員は、「刑法」第127条及び第129条から第132条までによる罰則を適用するときには公務員とみなす。

第6章 罰則

第42条(罰則)

第7条第9項に違反して職務上知り得た秘密を他人に漏洩したり職務上目的外の用途で使用した者は、3年以下の懲役又は3千万ウォン以下の罰金に処する。

第43条(過怠料)

① 次の各号のいずれか一つに該当する者には3千万ウォン以下の過怠料を賦課する。

  1. 第31条第1項に違反して告知を履行しなかった者
  2. 第36条第1項に違反して国内代理人を指定しなかった者
  3. 第40条第3項による中止命令や是正命令を履行しなかった者

② 第1項による過怠料は、大統領令で定めるところにより科学技術情報通信部長官が賦課・徴収する。

附則 <第20676号, 2025. 1. 21.>

第1条(施行日)

この法律は公布後1年が経過した日から施行する。ただし、第2条第4号d目中デジタル医療機器に関する部分は2026年1月24日から施行する。

第2条(この法律施行のための準備行為)

この法律を施行するために必要な委員会委員の委嘱、分科委員会、特別委員会、諮問団及び支援団の構成等は、この法律施行前にできる。

第3条(専担機関に関する特例)

この法律施行当時、第23条第1項による集積化を地域に効果的に定着させるために政府から関連予算を支援されて運営中の機関中、組織、人力等、大統領令で定める要件を充足した機関は、第23条第4項にもかかわらず、この法律により専担機関として指定されたものとみなす。

EU AI法はなぜ失敗したか

EU AI法は失敗したという評価については、薄々コンセンサスが形成されつつあると思いますが、なぜ失敗したのかは、あまり分析されていないように思います。この点について、初期的なメモを掲載します。

 

 

ハイリスクAIシステム関係(第3章)

  • 第3章は、ハイリスクAIシステムを対象とする。ハイリスクAIシステムは、組込み型AIシステム(①(a)Annex IのEU整合(調和)法令の対象となっている製品の安全コンポーネントとして使われることが意図された、又は(b)当該製品それ自体であるAIシステムで、②当該製品の上市に当たり第三者による適合性評価が要求されているもの)と、スタンドアロン型AIシステム(Annex IIIに列挙されたAIシステム)に分けられる。組込み型AIシステムでは、主として製品安全上のリスクが問題となり、スタンドアロン型AIシステムでは、主として個人データ保護を含む基本権に対するリスクが問題となる。
  • AI法は、組み込み型AIシステムとスタンドアロン型AIシステムに一律に製品安全の規制枠組み(NLF)を適用しているが、設計→出荷→(流通→)利用というライフサイクルをたどる「製品」(product)と、ProviderからDeployer (User)に直接提供され、常にアップデートされ続ける「役務」(service)では、適切な規制のあり方は違って然るべきであり、基本的に後者に当たるスタンドアロン型AIシステムに製品安全の規制枠組みを適用したこと自体が、失敗に繋がっているのではないか。
    • なお、企業Aが企業Bにスタンドアロン型のAIシステムを提供し、企業Bがこれを利用して個人データ処理を行う場合、AI法上は企業AがProvider、企業BがDeployerとなり、GDPR上は企業BがController、企業AがProcessorとなることが多いと思われる。この場合、企業Bは、GDPRを遵守する上で必要な情報、能力、(企業Aに対する)交渉力を持たない可能性があり、その限りで、AIという(個人データ処理の)手段に着目した規制は有効でありうる。しかしながら、そのことは、製品安全の規制枠組みをスタンドアロン型AIシステムの提供者に及ぼすことの適切性を基礎づけない。
  • また、前者に当たる組込み型AIシステムについても、製品の性質や流通・利用形態によって求められる要件は異なるはずであり、一律の規制を課したことが、失敗に繋がっているのではないか(AI法は、製品ごとの整合規格を予定しているが、それならば、最初から製品ごとに規範形成すれば足りたはずである。機械学習技術の特性は共通であり、それを分析することは有益であるが、そのことは、機械学習技術の応用について共通のルールを形成する必要性を基礎づけない。)。

 

透明性義務関係(50条)

  • 第50条、特に第2項と第4項は、一部のユースケースのみを念頭に、詳細かつ広範な(≒射程の広い)な義務を課しすぎているのではないか。

 

GPAIモデル関係(第5章)

  • AI法は、GPAIモデルの提供者に対し、GDPR / DSAのようなリスク評価・低減義務を課している。しかしながら、GDPRのDPIA / DPbDDは個人データ処理に適用され、DSAはオンラインプラットフォーム(≒SNS・動画共有サイト等とオンラインマーケットプレイス)に適用されるため、リスクはある程度特定可能だが、GPAIモデルは、まさにgeneral-purposeであるがゆえに、単に同様の義務を課すのでは、事実上無限定の義務を課すことになってしまう(実際、CoPのSafety and Security章のAppendix 1では、そのことが確認されていると言える。)。このような違いを踏まえない立法が、失敗の原因の一つとなっているのではないか。
  • AI法のCode of Practiceのような共同規制は、柔軟性(規制対象者側の知識の活用、迅速な意思決定)と民主的正統性・法的強制力を両立できる点が長所とされる。共同規制は、事前に一定のルールを設定する点では、直接規制や(業界レベルでの)自主規制を共通しているが、risk assessment and mitigation義務(「メタ規制」と呼ばれることがある。)は、そもそもそのような事前のルール設定が困難となっているか、適切でなくなっているがゆえに広まりつつある可能性があある。このような違いを踏まえない立法が、失敗の原因の一つとなっているのではないか。
  • AI法は、直接的には著作権をrisk assessment and mitigationの対象とはしていないが、Code of PracticeのCopyright章は、リスクマネジメント的な実務を要求している。しかしながら、著作権は、もともと創作物利用の対価回収の保障の必要性と、第三者の自由の保障の必要性のバランスの下に、政策的にその保護範囲が設定されているものであり、そもそもAI法のような「業法」による保護には適さないのではないか。

 

関連文献

「リーガルテック業法」の可能性について

第6回 デジタル・AIワーキング・グループ 資料を見て思ったことを書いていきます。

 

  • 弁護士法上、報酬を得る目的での法律事件に関する法律事務の取り扱いは、弁護士又は弁護士法人でなければ行うことができない(同法72条)。ところが、弁護士法人は、所有と経営の一致した無限責任法人なので(同法30条の4第1項、30条の12、30条の15)、弁護士法人は、リーガルテックサービス(=高度な情報処理技術を用いた法律事務処理サービス。多義的なので、このように読み替えることとしたい。)の提供主体としてはおよそ不適格である。
  • 一方で、「法律事務取扱業」としての弁護士の業務独占の範囲を定めた弁護士法72条の解釈のみによってリーガルテックサービスの品質や適切なサービス提供体制を担保することは、もとより無理があり、適切ではない。厚労省は医師法17条に関してそれを試みてきたとも言えるが、著しく法的安定性を欠いており、真似するべきではない。
  • この問題に関して、解決の糸口を提供しうるのは、ソフトウェア医療機器の提供行為が医業に該当するかという問題がどのように解決されているかであると思われる。
    • 医師法は、医業について免許制を定め、免許要件として、医師国家試験(臨床上必要な医学・公衆衛生に関する知識・技能を試験するものとされている。)への合格、成年であること、欠格事由(心身の障害、薬物中毒、罰金以上の刑に処せられたこと、医事に関する犯罪・不正行為)を定め、医師について、研修や行政処分(実質は懲戒処分であるが、そのようには呼ばれない。)などの、知識・技能と職業倫理を担保するための制度を定めている。当然ながら、医師は自然人である。
      • なお、医療法上、医療法人制度があるが、医療法人は、医師が医業を行う場所である病院・診療所の開設を目的とする法人であり、医療法人の医業というものは観念されない。
    • 一方、薬機法は、疾病の診断・治療・予防に使用されることが目的とされている機械器具等(ソフトウェアを含む)(極めて簡略化したので注意)である医療機器について、製造販売業者の許可制、(個別の)医療機器の製造販売の承認・認証制(届出制もあるが、ソフトウェアには適用されない。)を定め、各種の体制整備義務(GCP/GQP/GVP/GPSP等)、副作用等の報告義務、広告規制(ただし「何人も」規制として。なお、厚労省通達である医薬品等適正広告基準が実務上の基準となっている。)を課している。医療機器の製造販売業者は、通常、株式会社である。
    • 薬機法がない世界では、医学的なアドバイスをするスマホアプリの提供は、通常、医業に該当するはずであるが、医療機器として薬機法の規制を遵守して提供されている限りは、通常は、医業とはみなされない。
  • 仮にリーガルテックサービスについて法制度を整備するのであれば、薬機法の医療機器規制のような制度を設けることが考えられる。この場合、リーガルテックサービスについては、①医療機器のような承認・認証基準が確立されていないこと、②医療機器と異なり生命・身体への被害が生じる蓋然性は高くないこと、③法務省が高度な情報処理技術を用いた法律事務処理サービスたるリーガルテックサービスに対し、日常的に適時かつ適切なエンゲージメントを行うことは期待し難く、イノベーション阻害を回避するためには、現実に権利侵害が多発したような場合に限って権限を行使すべきと考えられることからすれば、法制度を整備する場合でも、業規制は最低限のものとすべきである。具体的には、例えば、届出制、包括的な体制整備義務、包括的な情報提供義務、調査権限(報告徴求命令、立入検査)、是正権限(業務改善命令、業務禁止命令等)のみを定めることが考えられる。
    • なお、医療機器規制は、事実上、医家向けと家庭用で異なる扱いがなされている(他の例として、金商法も、機関投資家と一般投資家を区別している。)。リーガルテックサービスについても、そのような区別は有用であるが、それを法律自体に書き込み、義務規定を分けると、イノベーションを阻害する可能性が高く、あくまで事業者が体制整備義務を履行する上で自主的に考慮しうる要素と位置づけておくのがよいのではないか。
  • なお、以上に対し、(本記事で定義したような)リーガルテックサービスではないAIサービスが法律について回答する事態をどうするかは、別の問題として、併せて考える必要がある。例えば、ChatGPTに具体的な紛争について専門性に基づく回答を期待する人は少ないであろうし、仮にいたとしても、政府のリソースによって保護する必要まではなく、自己責任としてよい(事業者の立場から見れば、自らリーガルテックサービスとして訴求する者は、相応の責任を果たすべきであるが、ChatGPTのような売り方をするに過ぎないのであればそうとは言えない)、と考えるのであれば、少なくとも現時点で規制の対象とする必要はないであろう。その場合でも、誤認防止措置(情報提供義務)を課すべきかは問題となりうるが、例えばLLMの回答に毎回注意喚起文言を入れることは、ユーザー体験を損ない、サービス提供コストを引き上げること(全ての業法が同種の注意喚起を要求する事態を考えれば明らかであろう。)を考慮すれば、適切ではなく(EUのAI法50条がどうなっているかはよく考えるべきである。)、現時点では自主的取組に委ねることでもよいかもしれない。