最近の憲法関連判例まとめ(2019~2023)

見返してみたので。 幸福追求権・私生活上の自由・法の下の平等など 性同一性障害特例法の生殖腺除去要件 夫婦同氏制 マイナンバー制度 経産省職員の女性トイレの使用制限 性同一性障害特例法の生殖腺除去要件 表現の自由 「表現の不自由展かんさい」会場の…

なりすまし広告に対する様々なアプローチ:保護法益の切り分けと規制スキームの選択

人格権や詐欺についてはいろいろ考えてきたところ、ホットなトピックになっているようなので書いてみます。 概要 問題状況については、例えばフェイスブックなどSNSなりすまし、メタほぼ無回答 自民党「広告停止を」 - 日本経済新聞。 この問題は、なりすま…

個人情報保護法の原理と体系:利用目的による/実体的な適正化、データ品質、データセキュリティ、本人の権利

後輩弁護士向けに所内セミナーを実施したときの個人的メモその3です(その1:個情法27条5項1号の趣旨/受託者による混合・突合の禁止の根拠 - Mt.Rainierのブログ/その2:GDPRのJoint controlと個情法の共同利用は全くの別物であること/共同利用の限界 - M…

GDPRのJoint controlと個情法の共同利用は全くの別物であること/共同利用の限界

後輩弁護士向けに所内セミナーを実施したときの個人的メモその2です(その1:個情法27条5項1号の趣旨/受託者による混合・突合の禁止の根拠 - Mt.Rainierのブログ)。 第三者提供、委託、共同利用は、EU法と日本法でかなり問題状況が異なっており、それゆえ…

裁量的減免と確約手続は独占禁止法をどのように変質させているか?

独占禁止法の法執行が変質してきているなと思ったので書いてみます。個人情報保護法のエンフォースメントを議論するに当たっても参考となるのではないかと思います。 裁量的減免と確約手続を通じた「共同規制」化 独占禁止法の法執行(企業結合審査を含まな…

総務省のLINEヤフー株売却要求は正当化されるか?/互換性確保義務を課すという選択肢について

背景 2023年10月、「貴社(注:LINEヤフー)のITインフラの運用に係る業務委託先であるNAVER Cloud社及び貴社が、それぞれセキュリティに係るメンテナンス業務を委託していた会社(以下単に「業務委託先会社」という。)においてマルウェア感染が生じたこと…

金融規制の「入口」となる概念の文理と実質的判断について

金融規制を勉強していて思ったことがあるので書きます(特に答えは出ないです)。法律の技術的側面はそれほど重要ではないので言葉遣いはざっくりめです。 1 Fintechに関わる金融規制の入口概念(業規制の規制対象行為を、規制の入口となるという意味でこの…

「AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ(案)」の概要

4月22日の「AI時代の知的財産権検討会」に「AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ(案)」が提出されていたので、紹介します。筆者コメントは(区別した方が分かりやすい場合には)青字としています。 中間取りまとめ案は、「I はじめに」「II 基本的視…

電気通信事業法のガイドライン等(まとめ)

文献 多賀谷一照監修・電気通信事業法研究会編著『電気通信事業法逐条解説改訂版』(2019、情報通信振興会)…当局者による逐条解説。 「電気通信事業法について」…総務省によるスライド。なお、2018年10月作成のため、その後の制度の変遷に留意する必要があ…

個情法27条5項1号の趣旨/受託者による混合・突合の禁止の根拠

後輩弁護士向けに所内セミナーを実施したのですが、その過程でいろいろと発見(あるいは思いつき)があったのでメモしていきます。 前提 個情法27条1項は、第三者提供の同意原則を定めている。同条は、利用目的による制限を定める18条1項の特則であり(園部…

Google Mapsの個人情報DB等該当性を否定した判決の含意/個情法18条~21条は散在情報を対象としていない可能性について

伊藤先生のグーグルマップは個人情報データベース等か 東京地判令5.10.4(令4ワ26758) - IT・システム判例メモを読んで、気になったことがあったのでメモしておきます。 前提 個人情報保護法の条文等 個人情報保護法は、概ね、個人に関する情報で特定の個人…

Tech Lawアップデート(2024年3月9日~3月31日)

2024年3月1日~3月31日のテクノロジー関係の政府の動きをまとめます。筆者コメントは(区別した方が分かりやすい場合には)青字としています。 サマリー 個人情報保護委員会 総務省 NISC 内閣官房・内閣府(経済安全保障関係) 公正取引委員会(デジタル市場…

【最高裁】同性の者が犯罪被害者給付法の「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に当たりうるとした判決について

26日の最高裁判決について書いていきます。 本ノートはディスカッションを目的としており、かなり簡略な表現によっているので、少なくとも、犯罪被害者給付法の条文、控訴審判決、最高裁判決をお読みになってからお読みいただくのがよいと思います。 mainich…

「AIと著作権に関する考え方について」の概要/ 『AIと著作権』の感想

文化審議会著作権分科会において「AIと著作権に関する考え方について」(パブコメ後の版)が提出され、文化庁Webサイトでも公開されていましたので、紹介します。 「考え方」は丁寧な説明と(想像するに)様々な政治的配慮で要点が掴みにくくなっているので…

「AI規制後」のAI不法行為責任について

AI不法行為責任(AIの使用によって生じた損害に関する不法行為責任)については、自動運転を中心に様々に議論されてきましたが、特に過失に関する状況は、各国でAI規制が導入された後は大きく変わるのではないかと思ったので、それについて書きたいと思いま…

AI規則の概要

3月13日、欧州議会がAI規則を可決しました。同議会が採択した法案が公開されていますので(Texts adopted - Artificial Intelligence Act - Wednesday, 13 March 2024)、それに基づいて、AI規則の概要を説明します。なお、本記事では、事業者の義務に関係す…

WP29・EDPBの意見書・ガイドライン(まとめ)

GDPRの解釈にあたって参考となる、WP29(EDPBの前身)、EDPB、欧州委員会の意見書、ガイドライン、Webページのまとめです。 基本的にGDPRの体系に沿って配列していますが、より関連性の強いと思われる箇所がある場合にはそちらに配列しています。 総則 地理…

十徳ナイフを携帯する行為を無罪とした判決について

十徳ナイフを携帯する行為を無罪とした判決が出たとのことで、思うところがあったので書くことにします。 1 報道によれば以下のとおりです。 十徳ナイフを車内に置いていたとして、軽犯罪法違反の罪に問われた30代男性を無罪とした新潟簡裁の差し戻し審の…

Tech Lawアップデート(2024年1月1日~3月8日)

2024年1月1日~3月8日のテクノロジー関係の政府の動きをまとめます。筆者コメントは(区別した方が分かりやすい場合には)青字としています。 サマリー 個人情報保護委員会 総務省 NISC 内閣官房・内閣府(経済安全保障関係) 公正取引委員会(デジタル市場…

那須翔「電子計算機使用詐欺罪における「虚偽の情報」の解釈・適用」の紹介

司法修習中に原案を書いた論文「電子計算機使用詐欺罪における『虚偽の情報』の解釈・適用」が、早稲田大学法科大学院のローレビューであるLaw and Practiceの第17号に掲載されましたので、紹介させていただきます。 電算機詐欺罪は、昭和62年(インターネッ…

【最高裁】「宮本から君へ」助成金不交付決定の取消判決について

昨日付の映画「宮本から君へ」に対する助成金不交付決定を取り消した判決について書いていきます。 本ノートはディスカッションを目的としており、かなり簡略な表現によっています(画面分割して横に判決文を開いた上でお読みいただくのがよいと思います)。…

Webスキミングでの初の逮捕例(不正指令電磁的記録供用罪・割賦販売法違反)について

「Webスキミング」について、不正指令電磁的記録供用罪と割賦販売法違反による逮捕がなされたようです。 https://mainichi.jp/articles/20231114/k00/00m/040/338000c 1 記事によれば以下のとおりです。 捜査関係者によると、男性は2022年、音楽コンサートの…

暴力団員であることを秘してマイルを取得する行為の電算機詐欺罪による摘発例について

暴力団員が、暴力団員であることを秘してマイルを取得したことについて、電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕されたとのことです。 https://mainichi.jp/articles/20231030/k00/00m/040/069000c 1 報道によれば以下のとおりです。 暴力団組員であることを隠して…

【最高裁】性同一性障害特例法3条1項4号違憲決定について

本日付の性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(「特例法」)3条1項4号違憲決定について、主に憲法の観点から書いていきます。 本ノートはディスカッションを目的としており、かなり簡略な表現によっています。 https://www.nikkei.com/article/D…

個人情報DB等提供罪による初の法人の摘発例について

四谷大塚の事件で、株式会社四谷大塚が個人情報保護法違反で書類送検されたとのことです。書類送検なので、公権的判断がされたわけではないですが、おそらく初ではないかと思います。 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231002/k10014212661000.html 1 報…

個人情報DB等提供罪の初の逮捕例について

個人情報DB等提供罪で初の逮捕がなされたようです。 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE1421N0U3A910C2000000/ 1 記事によれば次のとおりです。 …警視庁によると、都内の同業他社から転職する直前の2021年6月、転職元の名刺情報管理システムにログイン…