2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧

なりすまし広告に対する様々なアプローチ:保護法益の切り分けと規制スキームの選択

人格権や詐欺についてはいろいろ考えてきたところ、ホットなトピックになっているようなので書いてみます。 概要 問題状況については、例えばフェイスブックなどSNSなりすまし、メタほぼ無回答 自民党「広告停止を」 - 日本経済新聞。 この問題は、なりすま…

個人情報保護法の原理と体系:利用目的による/実体的な適正化、データ品質、データセキュリティ、本人の権利

後輩弁護士向けに所内セミナーを実施したときの個人的メモその3です(その1:個情法27条5項1号の趣旨/受託者による混合・突合の禁止の根拠 - Mt.Rainierのブログ/その2:GDPRのJoint controlと個情法の共同利用は全くの別物であること/共同利用の限界 - M…

GDPRのJoint controlと個情法の共同利用は全くの別物であること/共同利用の限界

後輩弁護士向けに所内セミナーを実施したときの個人的メモその2です(その1:個情法27条5項1号の趣旨/受託者による混合・突合の禁止の根拠 - Mt.Rainierのブログ)。 第三者提供、委託、共同利用は、EU法と日本法でかなり問題状況が異なっており、それゆえ…

裁量的減免と確約手続は独占禁止法をどのように変質させているか?

独占禁止法の法執行が変質してきているなと思ったので書いてみます。個人情報保護法のエンフォースメントを議論するに当たっても参考となるのではないかと思います。 裁量的減免と確約手続を通じた「共同規制」化 独占禁止法の法執行(企業結合審査を含まな…

総務省のLINEヤフー株売却要求は正当化されるか?/互換性確保義務を課すという選択肢について

背景 2023年10月、「貴社(注:LINEヤフー)のITインフラの運用に係る業務委託先であるNAVER Cloud社及び貴社が、それぞれセキュリティに係るメンテナンス業務を委託していた会社(以下単に「業務委託先会社」という。)においてマルウェア感染が生じたこと…

金融規制の「入口」となる概念の文理と実質的判断について

金融規制を勉強していて思ったことがあるので書きます(特に答えは出ないです)。法律の技術的側面はそれほど重要ではないので言葉遣いはざっくりめです。 1 Fintechに関わる金融規制の入口概念(業規制の規制対象行為を、規制の入口となるという意味でこの…

「AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ(案)」の概要

4月22日の「AI時代の知的財産権検討会」に「AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ(案)」が提出されていたので、紹介します。筆者コメントは(区別した方が分かりやすい場合には)青字としています。 中間取りまとめ案は、「I はじめに」「II 基本的視…

電気通信事業法のガイドライン等(まとめ)

文献 多賀谷一照監修・電気通信事業法研究会編著『電気通信事業法逐条解説改訂版』(2019、情報通信振興会)…当局者による逐条解説。 「電気通信事業法について」…総務省によるスライド。なお、2018年10月作成のため、その後の制度の変遷に留意する必要があ…

個情法27条5項1号の趣旨/受託者による混合・突合の禁止の根拠

後輩弁護士向けに所内セミナーを実施したのですが、その過程でいろいろと発見(あるいは思いつき)があったのでメモしていきます。 前提 個情法27条1項は、第三者提供の同意原則を定めている。同条は、利用目的による制限を定める18条1項の特則であり(園部…

Google Mapsの個人情報DB等該当性を否定した判決の含意/個情法18条~21条は散在情報を対象としていない可能性について

伊藤先生のグーグルマップは個人情報データベース等か 東京地判令5.10.4(令4ワ26758) - IT・システム判例メモを読んで、気になったことがあったのでメモしておきます。 前提 個人情報保護法の条文等 個人情報保護法は、概ね、個人に関する情報で特定の個人…

Tech Lawアップデート(2024年3月9日~3月31日)

2024年3月1日~3月31日のテクノロジー関係の政府の動きをまとめます。筆者コメントは(区別した方が分かりやすい場合には)青字としています。 サマリー 個人情報保護委員会 総務省 NISC 内閣官房・内閣府(経済安全保障関係) 公正取引委員会(デジタル市場…