電気通信事業法のガイドライン等(まとめ)

文献

多賀谷一照監修・電気通信事業法研究会編著『電気通信事業法逐条解説改訂版』(2019、情報通信振興会)…当局者による逐条解説。

「電気通信事業法について」総務省によるスライド。なお、2018年10月作成のため、その後の制度の変遷に留意する必要がある。

「情報通信政策研究」総務省情報通信政策研究所の雑誌。2018年以降の改正については、立案担当者解説が掲載されるのが通例となっている。

 

通信の秘密の保護

通信の秘密は、電気通信事業法上、厳格に保護されている。4条1項は「何人」にも通信の秘密の侵害を禁止しており、また、通信の秘密の侵害は、事故報告、業務改善命令、罰則の対象となる。なお、4条1項は「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密」を対象とするところ、電気通信事業者以外の取扱中の通信の秘密についても、有線電気通信法9条又は電波法59条の適用がありうることに注意する必要がある。

ガイドライン等】

通信の秘密の確保に支障があるときの業務の改善命令の発動に係る指針

同意取得の在り方に関する参照文書

「立案担当者解説 通信の秘密の確保に支障があるときの業務の改善命令の発動に係る指針」及び「同意取得の在り方に関する参照文書」」

 

登録・届出義務

電気通信事業法は登録・届出制を中心とした規制を行っている。電気通信事業を営む者は、一定の規模以上の電気通信設備を設置する等の場合には登録を受ける義務があり(9条1項)、そうでない場合には届出をする義務がある(9条1項、16条1項)。なお、電気通信事業は「電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供すること」と広く定義されているが(2条3項)、このうち、電気通信設備を用いないものや他人の通信を媒介しないものは、基幹的・大規模なDNS検索エンジンSNSを除き、登録・届出を免除されている(164条1項3号)。

ガイドライン等】

電気通信事業参入・変更手続の案内 (Webページ)

申請・届出書類(登録電気通信事業)のダウンロード(Webページ)

届出書類(届出電気通信事業)のダウンロード(国内法人等向け)(Webページ)

電気通信事業参入マニュアル

電気通信事業参入マニュアル[追補版]

電気通信事業参入マニュアル(追補版)ガイドブック

ドメイン名電気通信役務の信頼性等の確保(Webページ)

 

利用者料金規制

電気通信事業法上、いくつかのサービスについて、利用者料金規制が課されている。

基礎的電気通信役務ユニバーサルサービスは、電話、公衆電話など国民生活に不可欠なサービスであり、契約約款の事前届出制の対象となる(19条)。

指定電気通信役務は、NTT東西の加入電話フレッツ光など「第1種指定電気通信設備」(ボトルネック設備)を用いて提供するサービスであり、保障契約約款の事前届出制の対象となる(20条)。

特定電気通信役務は、NTT東西の加入電話など指定電気通信役務のうち利用者の利益に及ぼす影響が大きいものであり、総務大臣定める上限額を超える部分が認可制の対象となる(21条。プライスキャップ規制)。

ガイドライン等】

電気通信事業法について(スライド)

ユニバーサルサービス制度(Webページ)

プライスキャップ制度(Webページ)

 

消費者保護ルール(販売代理店届出制度を含む)

電気通信事業法は、26条~28条の4において、一定の通信サービス等(条文によって異なるため要確認)について、電気通信事業者に対し、説明義務、書面交付義務、クーリングオフ(「初期契約解除」)、業務の旧廃止の周知等、苦情処理、不実告知等の禁止、通信サービスと端末の抱き合わせ等の禁止、販売代理店への指導義務を課しており、これらは消費者保護ルールと呼ばれる。

また、販売代理店(「届出媒介等業務受託者」)について、届出義務を課す(73条の2)とともに、上記の消費者ルールを準用している(73条の3)。

ガイドライン等】

電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン

電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドライン

媒介等業務受託者届出マニュアル

電気通信事業の利用者保護規律に関する監督の基本方針

 

利用者情報保護ルール・個人情報保護法

電気通信事業法は、利用者情報(27条の5第2号参照。個人情報の定義と比較すると、識別性が不要とされている)に関し、次の2種類の規律を行っている。

特定利用者情報の取扱いに関する規律(27条の5~27条の11、電気通信事業法施行規則22条の2の19~22条の2の26)は、個人情報保護法に比して厳格な管理体制を求めるもので、無料サービスの場合平均月間アクティブユーザー数1000万以上、有料の場合500万以上で、総務大臣に指定された者に適用される。

外部送信規律(27条の12、電気通信事業法施行規則22条の2の27~22条の2の31)は、サードパーティCookieやその類似技術について通知・公表義務を課すもので、電気通信事業者の全部と、3号事業者(164条1項3号の事業を営む者。届出義務が免除されている)に適用される。

また、個人情報保護法は、個人情報保護委員会が所管しているが、電気通信業については、執行権限の一部が総務省に委任されており、総務省と共同で、電気通信事業法上の非対称規制と合わせたガイドラインが策定されている。

ガイドライン等】

電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドライン 本文

電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドライン 解説

特定利用者情報の適正な取扱いに係る規律(Webページ)

外部送信規律FAQ

外部送信規律について ウェブサイトやアプリケーションを運営している皆様、御確認ください!

 

事故報告制度

電気通信事業法は、電気通信事業者に対し、通信の秘密の漏洩、特定利用者情報の漏洩、重大事故等について、総務大臣への報告を求めるとともに(28条)、重大事故に当たらない一定の事故について、総務大臣への四半期報告を求めている(報告規則7条の3)。

ガイドライン等】

事故報告制度の概要

電気通信サービスにおける障害発生時の周知・広報に関するガイドライン

電気通信事故等に係る電気通信事業法関係法令の適用に関するガイドライン

 

公正競争ルール・独占禁止法

電気通信事業法は、30条~39条の3において、支配的地位を有する通信事業者等について、具体的な行為を規制している(非対称規制と呼ばれる)。

固定系については、「第1種指定電気通信設備」(ボトルネック設備)の設置者(現在NTT東西が指定)について、接続業務に関して知り得た情報の目的外利用の禁止、接続業務における差別的取扱いの禁止、接続約款の認可等が課されている(30条、31条、33条、33条の2)。

移動系については、(a)MVNOへの卸売の適正化のため、「第2種指定電気通信設備」の設置者(MNO。現在NTTドコモKDDI沖縄セルラーソフトバンク、Wireless City Planning、UQコミュニケーションズが指定)について、接続約款の届出等の規制が課される(34条)とともに、(b)その中でも支配的地位を有する者(現在NTTドコモが指定)について、固定系の支配的事業者と同様の規制が課されている(30条1項)。

また、独占禁止法は、公正取引委員会が所管し執行するが、総務省と共同で、電気通信事業法上の非対称規制と合わせたガイドラインが策定されている。

ガイドライン等】

電気通信事業分野における競争の促進に関する指針

MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン

 

電気通信設備の規制(特に電気通信番号制度)

電気通信設備については、技術基準への適合とそのための管理体制(41条~49条)、個々の端末設備の技術基準適合認定等(52条~73条)の規制が課されている。電話番号などの「電気通信番号」については、その計画的な使用のため、電気通信事業者による「電気通信番号使用計画」の作成・総務大臣による認定、総務大臣による「電気通信番号計画」の作成・公示、使用状況の報告等が定められている(50条~51条、報告規則8条)。

ガイドライン等】

電気通信番号を使用するための手続(Webページ)

電気通信番号関係の制度改正について(スライド)

携帯電話・PHSの番号ポータビリティの実施に関するガイドライン

 

外国法人等への適用

電気通信事業法は一定の外国法人等(外国法に準拠して設立された法人など)にも適用され、この場合、日本における代理人を選任する必要がある。その要件は明文で規定されておらず、解釈によっている。なお、外国法人等が電気通信事業の届出を行う場合、合わせて外国会社登記会社法933条1項)を求められる場合があることに留意すべきである。

ガイドライン等】

届出書類(届出電気通信事業)のダウンロード(外国法人等向け)(Webページ)

外国法人等が電気通信事業を営む場合における電気通信事業法の適用に関する考え方

「立案担当者解説 外国法人等が電気通信事業を営む場合における電気通信事業法の適用に関する考え方」

法務省:外国会社の登記を忘れていませんか?(Webページ)