暴力団員であることを秘してマイルを取得する行為の電算機詐欺罪による摘発例について

暴力団員が、暴力団員であることを秘してマイルを取得したことについて、電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕されたとのことです。

https://mainichi.jp/articles/20231030/k00/00m/040/069000c

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報道によれば以下のとおりです。

暴力団組員であることを隠して航空会社のマイルを不正に取得したとして、警視庁多摩中央署は30日、指定暴力団・浪川会傘下組織幹部の谷川英二容疑者(56)=熊本県荒尾市上平山=を電子計算機使用詐欺容疑で逮捕したと発表した。警視庁によると、暴力団組員によるマイルの不正取得の摘発は全国初とみられる。…暴力団員が(マイル会員に)入会できないとは知らなかった」と容疑を否認しているという。

航空会社がどこかは分かりませんが、例えばANAJALのマイルの利用規約は次のようになっています。

45条 暴力団等反社会的勢力の排除
会員は、JALに対し、自らまたは指定利用者が、暴力団暴力団員および暴力団員でなくなったときから5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治運動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団、その他これらに準ずる反社会的勢力(以下、「暴力団等反社会的勢力」という)に該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約するものとします。
(第2段落以下省略)

JMB一般規約 - JALマイレージバンク

29条 暴力団等反社会的勢力の排除
1. 会員は、弊社に対し、自らまたは特典利用者が、暴力団暴力団員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治運動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団、その他反社会的勢力(以下、「暴力団等反社会的勢力」という)に該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約するものとします。
(2項以下省略)

ANAマイレージクラブ会員規約|ANAマイレージクラブ

暴力団等反社会的勢力」の範囲が異なりますが、現在それらに該当しないことの表明と、将来にそれらに該当しないことの確約からなる点は共通です。

登録画面(ANA/JAL)では、利用規約が表示され、利用規約に同意する旨のチェックボックスにチェックを入れる必要があるものの、利用規約自体かなり狭いフレームの中に表示され、中でも表明・確約条項はかなり下までスクロールしないと見えないようになっており、また、暴力団員等に該当しないこと等について個別のチェックボックスは用意されていません

JALの入会画面。同意した上で会員情報を入力する。表明・確約条項はこのフレーム内部でさらにスクロールしないと現れない。
ANAの入会画面。会員情報を入力し、そのまま下までスクロールすると「会員規約」が現れる。表明・確約条項はこのフレーム内部でさらにスクロールしないと現れない。

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電算機詐欺罪は(実務上重要な機能を果たしているものの、判例法理が未発達であり、司法試験でもスルーされがちという意味で)比較的マイナーな犯罪なので、先に同罪の一般的な説明をすることにします。

電算機詐欺罪の規定は以下のようになっています。

(電子計算機使用詐欺)
第246条の2 前条に規定するもののほか、①人の事務処理に使用する電子計算機に(a)虚偽の情報若しくは(b)不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は②財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。

電算機詐欺罪は、処分権者の意思に基づかない点で詐欺罪(・恐喝罪)と区別され、行為客体が財産的利益である点で窃盗罪と区別されます。

電算機詐欺罪には①作出型②供用型があり、現在では、キセル乗車のケースを除き基本的には①作出型が適用されています。本件でどちらが適用されたのか報道からは読み取れませんが、おそらく①作出型だろうと思います(ただ、この区別にあまり実益はありません)。

①作出型には、(a)虚偽情報入力によるものと、(b)不正指令入力によるもの(これらは不実電磁的記録作出の手段です)があります。これもどちらが適用されたのか報道からは読み取れませんが、おそらく虚偽情報入力だろうと思います(ただ、この区別にもあまり実益はありません)。

電算機詐欺罪の「虚偽の情報」とは、電子計算機を使用する当該事務処理システムにおいて予定されている事務処理の目的に照らし、その内容が真実に反する情報をいうとされています(立案担当者平成5年の東京高裁判決(高刑集搭載です))。

電算機詐欺罪に関する最高裁判例は平成18年の1件のみです。同決定は事例判断ですが、刑集においては、次のように要約されています。

窃取したクレジットカードの名義人氏名,番号等を冒用して,これらを,インターネットを介し,クレジットカード決済代行業者の使用する電子計算機に入力送信して名義人本人が電子マネーの購入を申し込んだとする虚偽の情報を与え,その購入に関する不実の電磁的記録を作成し,電子マネーの利用権を取得した行為は,電子計算機使用詐欺罪に当たる。

弁護人が、被告人が入力した名義人氏名、番号、有効期限は真正のものである旨主張したのに対し、最高裁は、引用部分太字のような情報を入力したと規範的に評価することで、電算機詐欺罪の成立を認めたものです。

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一方、詐欺罪については、様々な判例がありますが(2000年代以降、詐欺罪は暴力団排除のために発展してきたとさえ言えます)、特に、平成26年の3件の判例が重要です。

3件のうち2件は、(被告人又はその同伴者が)暴力団員であることを告げずにゴルフ場を利用した行為が問題となったもので、宮崎のゴルフ場の事件では無罪判決がされたのに対し、長野のゴルフ場の事件では原判決(有罪)を結論において正当とする決定がされました(何が結論を分けたのかは判文をご参照ください)。

残りの1件は、暴力団員が銀行窓口で暴力団員でないことを表明・確約して口座開設を申し込み、通帳等を受け取った行為が問題となったもので、原判決(有罪)を正当とする決定がされましたが、その際、単に約款に表明・確約の条項があっただけでなく、繰り返し目立つように表記されていたこと、行員による指差し確認が行われていたこと等が認定されています(詳細は判文をご参照ください)。

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本件のような事案においては、被疑者(被告人)が、自身は暴力団員等ではない旨の「虚偽の情報」を入力したと評価しうるかが問題となります。

これについて、電算機詐欺罪の成立を否定しようとする立場からは、例えば「虚偽の情報」たりうるのは詐欺罪における重要事項に相当する事項に限られるという主張がありえます。この立場からは、平成26年の3件の判例は(暴力団排除という目的の経済的合理性と合わせて)処分権者の合理的な努力を要求しているところ、利用規約に書いて狭いフレームの下の方に表示しただけ、しかも個別のチェックボックスもなく包括的にチェックさせるだけでは合理的な努力がなされたとはいえない、したがって被疑者は自身が暴力団員等ではない旨の「虚偽の情報」を入力したとはいえないと主張することになります。

上記の主張に対しては、電算機詐欺罪の成立を肯定しようとする立場からは、そもそもそのような限定はすべきでないという主張と、仮に限定すべきであるとしても、被疑者は単に暴力団員等である旨を申告しなかったのではなく、自ら暴力団員等ではない旨の表明・確約が記載された利用規約に同意していること、インターネットでは指差し確認等の措置は取り得ないこと(とはいえ強調表示や個別チェックはできると思いますが…)から、被疑者は自身が暴力団員等ではない旨の「虚偽の情報」を入力したものと評価できるとの主張が考えられます。

個人的には、解釈については第3の道があると思いつつ(近く論文が出ます)、結論としてはこのようなケースについてまで電算機詐欺罪の成立を認めるのはやり過ぎなのではないかと思いますが、いずれにせよ、詐欺罪と電算機詐欺罪のどこが同じでどこが違うのかを丁寧に分析し、前者に関して発展した解釈論を適切な形で後者に応用することが必要であると思います。

【最高裁】性同一性障害特例法3条1項4号違憲決定について

本日付の性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(「特例法」)3条1項4号違憲決定について、主に憲法の観点から書いていきます。

本ノートはディスカッションを目的としており、かなり簡略な表現によっています。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE17D8I0X11C23A0000000/

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92446


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  • 本件は家事審判事件です。

  • 生物学的には男性、心理的には女性であり、特例法3条1項4号、5号を充足しない申立人が、特例法に基づく性別変更審判を申し立てたところ、一審裁判所は4号不充足を理由に却下し、原審も抗告を棄却したため、特別抗告がされました。

  • 最高裁(大法廷)は、4号を違憲としつつ、5号については判断せず、5号について審理させるため、破棄差戻しとしました。

  • 三浦、草野、宇賀裁判官の各反対意見は、5号も違憲であり、破棄自判・原々審判取消し・認容決定をすべきとしています。これらの3人は、夫婦別姓に関する令和3年大法廷決定において、共同補足意見以外の個別意見を述べた4人(宮崎裁判官は退官)と一致します。

  • 多数意見の12人と反対意見の3人の対立が、実体的なものであったのか、それとも手続的なものであったのかは分からない気がします。一見、実体的なものに見えますが、多数意見のロジックからすれば5号の合憲性も相当に怪しいように思われ、実際、反対意見がそのことを指摘している(三浦反対意見など、まるで第2次特別抗告審決定のドラフトのようです)にもかかわらず、多数意見側から何ら反論がなされていないことからすると、手続的なものである可能性もあるように思われます。

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  • 多数意見は憲法13条から「身体への侵襲を受けない自由」を導き、生殖腺除去手術がこれに対する重大な制約であることを認め、諸般の事情を考慮して必要かつ合理的な制約とはいえないとして、違憲の結論を導いています。

  • この際、多数意見は4号が性同一性障害を有する者一般に対して同手術を受けることを直接的に強制するものではない」(p.6, para.4)ことを認めつつ、性同一性障害者がその性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けることは…個人の人格的存在と結び付いた重要な法的利益というべきである」(para.5)ことを理由に、なお「重大な制約」(para.3)であることを認めています。

    • また、多数意見はこのことを別の箇所で「身体への侵襲を受けない自由を放棄して強度な身体的侵襲である生殖腺除去手術を受けることを甘受するか、又は性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けるという重要な法的利益を放棄して性別変更審判を受けることを断念するかという過酷な二者択一を迫るもの」と表現しています(p.9, para.2)。

  • このロジックは、家族法(特にパートナーシップ法)の憲法的統制を考える上で極めて重要であると思います。家族法憲法問題は、しばしば多数派が自らの価値観の「代理変数」となる要素を家族法上の諸制度(典型的には婚姻)の利用条件として埋め込み、国家が提供する(したがってあまねく、公平に提供されるべき)サービスとしての諸制度を、自らと価値観を同じくする者の特権に変えてしまおうとすることから生じています。家族法上の諸制度は基本的に重要な権利に関わるため、上記のロジックを応用できる場面はけっこうあるのではないかと思います。

    • 実際、三浦裁判官は、令和3年大法廷決定(専ら裁量審査を行った平成27年大法廷判決を引用)に対する意見で「これは,法の定める婚姻の要件が,個人の自由な意思決定について,意思に反しても氏の変更をして婚姻をするのか,意思に反しても婚姻をしないこととするのかという選択を迫るものである。婚姻の際に氏の変更を望まない当事者にとって,その氏の維持に係る人格的利益を放棄しなければ婚姻をすることができないことは,法制度の内容に意に沿わないところがあるか否かの問題ではなく,重要な法的利益を失うか否かの問題である。これは,婚姻をするかどうかについての自由な意思決定を制約するといわざるを得ない。」と述べていました。

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  • トランスジェンダーの権利というと、経産省職員に関する令和5年第3小法廷判決が想起されますが、同判決ではトイレ使用という事実上の不利益が問題となったのに対し、本判決では法令上の性別の取扱いのいう法令上の不利益が問題とされており、場面が異なるように思います(なお、「身体への侵襲を受けない自由」はトランスジェンダーかどうかとはあまり関係がありません)。

  • 宇賀反対意見が言及するドイツ連邦憲法裁判所・欧州人権裁判所の判決(p.33, para.4)と比較すると、多数意見は、いわば「身体への侵襲を受けない自由」を主とし、性同一性障害者がその性自認に従った法令上の性別の取扱いを受ける…法的利益」を従とする判断枠組みを取っており、一歩引いたポジションであることが分かります。今後の発展を注視する必要があります。

個人情報DB等提供罪による初の法人の摘発例について

四谷大塚の事件で、株式会社四谷大塚個人情報保護法違反で書類送検されたとのことです。書類送検なので、公権的判断がされたわけではないですが、おそらく初ではないかと思います。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231002/k10014212661000.html

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報道によれば、以下のとおりです。

警視庁は森容疑者が講師としてのアクセス権限を利用し、データベースに載っていた被害に遭った児童などの名前や住所をSNSのグループチャットに投稿したとして、個人情報保護法違反の疑いで書類送検しました。

この事件をめぐっては、被害に遭った児童の名前や住所がSNSのグループチャットに投稿されていて、警視庁は情報管理が不十分だったとして、法人としての四谷大塚個人情報保護法違反の疑いで書類送検しました。

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「情報管理が不十分だった」というのは安全管理措置違反にも見えますが、これについて罰則はないので、講師個人に個人情報DB等提供罪が成立する前提で、株式会社四谷大塚両罰規定を適用できると判断したのではないかと思います。

両罰規定は、従業者の違反行為につき、法人に行為者の選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかつた過失の存在を推定した規定と解されており(最判昭和40年3月26日刑集19巻2号83頁外為法の両罰規定が責任主義に反し憲法31条等に違反する旨の主張に対する応答)、個情法上求められる安全管理措置を取っていたかどうかが事実上両罰規定の適否を左右するのだと思われます。

なお、個人情報DB等提供罪の法定刑は最大で懲役1年、罰金50万円(個情法179条)、両罰規定における法人の法定刑は最大で罰金1億円です(同法184条1項1号)。

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本件で個人情報DB等提供罪が成立するかですが、必ずしも明らかではないように思います。同罪の行為対象は、「その業務に関して取り扱った個人情報データベース等(その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。)」であり、必ずしもDB全体を提供したといえる事情が要求されているわけではないものの、極めて件数が少ない場合、もはやDBを加工(抽出)したものを提供したとはいえず、本罪は成立しない可能性もあります。

これに関して、立案担当者は、個人情報ではなく個人情報DB等を対象とした理由に言及する(①特定の個人情報を検索できない状態で含んでいるものを提供したとしても権利利益侵害のおそれは小さく、②それゆえ第三者提供規制の対象ではないこと等を述べています)一方、個人データではなく個人情報DB等を対象とした理由には言及していません。もっとも、後者にも何らかの理由があるはずで(②からはむしろ個人データを対象とすることが自然なはずです)、上記のような解釈が成り立つ余地は十分にあるように思われます。

仮にそのように解釈したとすると、手打ちで必ずしも大量とはいえない情報を漏洩させたと思われる本件では、DBをコピーして売ったり、DBにアクセス可能なID/PWを共有したりする事案と異なり、本罪が成立しないと解する余地も十分にあるように思われます。


個人情報DB等提供罪の初の逮捕例について

個人情報DB等提供罪で初の逮捕がなされたようです。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE1421N0U3A910C2000000/

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記事によれば次のとおりです。

…警視庁によると、都内の同業他社から転職する直前の2021年6月、転職元の名刺情報管理システムにログインするIDやパスワードを転職先のグループ会社の社員にチャットアプリで共有。営業先の名刺データを閲覧できるようにし、不正に提供した疑いが持たれている。
システムには数万件の名刺データが保管され、共有されたIDやパスワードを使えばすべて閲覧できた。実際に転職先の企業側で営業活動に使われ、成約事例もあったという。
…警視庁は今回、情報が営業秘密に該当しないと判断した。名刺は第三者に渡すことが前提で、記載された情報が非公知性の要件を満たす可能性が低いなどとみた。

個人情報DB等提供罪はベネッセ事件を受けて平成27年改正で導入されたもので、「個人情報取扱事業者…若しくはその従業者又はこれらであった者が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等…を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用」することで成立します(個情法179条)。

営業秘密侵害罪の行為対象である営業秘密は、秘密管理性、有用性、非公知性からなり、特に秘密管理性のハードルが高いのに対し、個人情報DB提供罪の行為対象である個人情報DB等は、(個人情報が)体系的に構成されていさえすればよく(個情法16条1項1号)、DBがどのように管理されていたかは問題となりません。

もっとも、その分、営業秘密侵害罪の法定刑が最大懲役10年、罰金2000万円(不競法21条1項)であるのに対し、個人情報DB等提供罪の法定刑は最大懲役1年、罰金50万円以下です。

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上記の事例ですが、警視庁の言うロジック(「名刺は第三者に渡すことが前提で…」のくだり)は、必ずしもクリティカルではないのではないかと思いました。名刺DBは、個々のデータ(DB用語でいうレコード)を見れば公知かもしれませんが、DB化したとき、保有企業の得意先一覧という価値(情報)が加わっており、この情報は通常非公知だと思います。

もちろん、非公知性が認められたとしても、秘密管理性というより高いハードルをクリアする必要があり、ID/PW自体が共有されていた場合には、PWの更新頻度、共有範囲、共有のプロセス等次第でそれを満たさない可能性が上がるのですが、それは別の問題です。

別記事には「アクセス履歴などで不審に思った転職元企業側がパスワードを22年12月に変更してからは不正アクセスがなくなり」とあり、ID/PW自体が共有されていた可能性があり(1人1IDなら当該アカウントのアクセス権を剥奪すればよいはずなので)、また、不審に思って初めてPWを変更するような運用だった可能性があります。このそのとおりであるとすれば、秘密管理性が認められない可能性は相当程度ある印象です。

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なお、仮に一つの行為に営業秘密侵害罪と個人情報DB等提供罪が成立する場合、両者は観念的競合となり、法定刑は営業秘密侵害罪のものが適用されると考えられます。

量刑においては、営業秘密侵害罪の保護法益事業者間の公正な競争(競争秩序)であること、個人情報DB等提供罪の保護法益個人の権利利益であることから、競争手段としての不公正さ個人の権利利益の侵害のおそれの両者が考慮されることになります。

もっとも、営業秘密侵害罪の法定刑と個人情報DB等提供罪の法定刑では、前者が圧倒的に重いこと、仮に名刺データが提供されただけであるとすれば、民事上は本人(データ対象者)のプライバシー侵害は成立しないと思われること(私事性、秘匿性、非公知性のいずれも満たさないと思われます)からすれば、考慮要素の圧倒的部分は営業秘密侵害に関するものとなると思われます。