最近の憲法関連判例まとめ(2019~2023)

見返してみたので。

 

 

幸福追求権・私生活上の自由・法の下の平等など

性同一性障害特例法の生殖腺除去要件

  • 「現時点では、憲法13条、14条1項に違反するものとはいえない」(法廷意見)、「本件規定は、現時点では、憲法13条に違反するとまではいえないものの、その疑いが生じていることは否定できない」(鬼丸=三浦補足意見)とした。

平成31年1月23日・2小

 

GPS装着行為のストーカー規制法による処罰

  • 別居中の妻の自動車にGPSトラッカーを密かに取り付けた行為について、「「住居等の付近において見張り」をする行為に該当するためには,機器等を用いる場合であっても,上記特定の者等の「住居等」の付近という一定の場所において同所における上記特定の者等の動静を観察する行為が行われることを要する」として、ストーカー規制法違反を否定した。
  • 後述の死体遺棄罪や医師法違反(タトゥー)のケースは、一見犯罪に該当するが当罰性がない行為を、規制目的に照らした解釈により不処罰としたケースであるのに対し、本決定は、当罰性がある行為(実際にその後法改正がなされている)を、文理解釈により不処罰としたケースである。かつての最高裁は、このような場合、多少無理をしてでも被告人を処罰していたと思われる。
  • しかしながら、そのようなやり方は、(人権保障もさることながら)国会の役割を、国会のような政策的な判断能力・包括的な問題解決手段を持たない裁判所が侵害することであり、適切ではない。最高裁は、既に刑事手続においてはそのような立場に移行していると思われるが(強制採尿事件GPS捜査事件における最高裁の対照的な態度に表れている)、実体法でもそのような立場を取り入れつつあるのではないか(はっきりと示唆されているわけではないものの)。

令和2年7月30日・1小

 

夫婦同氏制

  • 多数意見は平成27年大法廷判決を引用する簡潔なものであったが、個別意見は最高裁内部での議論の深まりを示すものであった(それこそが大法廷回付の狙いだったのではないかと思う)。
  • 深山=岡村=長嶺補足意見(それぞれ異なる小法廷に属しており、バックグラウンドは職業裁判官、検事、外交官である)は多数派の考え方を示すものであり、婚姻制度を「法制度のパッケージ」と表現したが、そこには平成27年の寺田補足意見のような同氏制を積極的に擁護する姿勢はもはや見られない(と感じた)。
  • 宮崎=宇賀反対意見、草野反対意見、三浦意見は違憲としている。特に三浦意見は同氏制を婚姻の自由に対する制約として位置付けた上で(なお、この点は宮崎=宇賀反対意見も同様である)、将来の多数意見となりうる洗練されたロジックを示している。

令和3年6月23日・大法廷

 

マイナンバー制度

  • 行政機関等が番号利用法に基づき特定個人情報(個人番号をその内容に含む個人情報。言い換えればマイナンバーに結び付けられた情報)の利用、提供等をする行為が上告人らの 個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものであるか否かを、住基ネット判決に従って判断し、「番号利用法に基づく特定個人情報の利用、提供等に関して法制度上又はシステム技術上の不備があり、そのために特定個人情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということもできない」として侵害を否定した。
  • マイナンバー制度の弊害としてより重要なのは濫用(目的外利用や誤用)であり、個人データの保護に対する権利に基づく主張をした場合、異なる判断がされるのではないかと思われる。

令和5年3月9日・1小

 

孤立出産後の行為の死体遺棄罪による処罰

  • 被告人が孤立出産後、嬰児が死亡し、「自室において、本件各えい児の死体を、タオルで包み、段ボール箱に入れ、その上に別のタオルをかぶせ、更に被告人が付けた本件各えい児の名前、生年月日のほか、おわびやゆっくり休んでくださいという趣旨の言葉を書いた手紙を置いてその段ボール箱に接着テープで封をし、その段ボール箱を別の段ボール箱に入れ、接着テープで封をしてワゴン様の棚の上に置いた」事案において、「習俗上の埋葬等とは認められない態様で死体等を放棄し又は隠匿する行為が死体遺棄罪の「遺棄」に当たる」、「他者が死体を発見することが困難な状況を作出する隠匿行為が「遺棄」に当たるか否かを判断するに当たっては…その態様自体が習俗上の埋葬等と相いれない処置といえるものか否かという観点から検討する必要がある」とした上で、上記の行為はそのような処置とまではいえないとした。
  • 憲法的側面は薄いものの、後述のタトゥー事件と同様に、規制目的から限定的な解釈を加え、無罪とした事案の一つである。

令和5年3月24日・2小

 

経産省職員の女性トイレの使用制限

  • 生物学的な性別が男性であり性同一性障害である旨の医師の診断を受けている経産省職員に対し、執務階とその上下の階の女性トイレの使用を認めない処遇がなされた。当該職員が人事院に対し、勤務条件に関する行政措置の要求として、女性トイレの使用を認めること等の措置を要求したところ、人事院はこれを認めない判定をしたため、当該職員が取消訴訟を提起した。
  • 最高裁は、当該職員が「日常的に相応の不利益を受けている」とした上で、それを甘受させるだけの具体的な事情が見当たらないとして、考慮要素の過大評価・過小評価を認め、裁量の逸脱・濫用を認めた。
  • 一般来客が少ない職場でのトイレ使用に関する判断であること、「自認に係る性に従って扱われる権利」のようなものを認めたものではないことには注意を要する。

 令和5年7月11日・3小

 

性同一性障害特例法の生殖腺除去要件

  • 平成31年の事件と同種の事件において、「本件規定は、治療としては生殖腺除去手術を要しない性同一性障害者に対して、性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けるという重要な法的利益を実現するために、同手術を受けることを余儀なくさせるという点において、身体への侵襲を受けない自由を制約するもの」であり、そのような制約は、「性同一性障害を有する者一般に対して生殖腺除去手術を受けることを直接的に強制するものではないことを考慮しても、身体への侵襲を受けない自由の重要性に照らし、必要かつ合理的なものということができない限り、許されない」とした上で、具体的事情に照らして、制約の必要性が低減し、また、合理的関連性を欠くに至っていることを認め、全員一致で上記規定を違憲とし、破棄差戻しとした。
  • ところが、本決定には、三浦、草野、宇賀各裁判官の反対意見が付されている。申立人は4号要件(生殖前除去)と5号要件(変更後の性別の性器に近似する外観)の両方を違憲と主張していたところ、原審は4号要件についてのみ判断したため、最高裁では4号要件のみが義務的な判断事項となっていた。3人の裁判官は、それにとどまらず、5号についても職権で判断し、これを違憲・無効とし、直ちに申立てを認めるべきだと主張した。もっとも、多数意見が示したロジックは、三浦反対意見に最もよく表れているように、5号の憲法適合性についても相当強い疑いを生じさせている(なお、仮に最高裁が遠くないうちに5号についても違憲判断を示すのであれば、多数意見と反対意見の対立点は、主として5号について抗告審の審理を経させるべきかどうかであったことになる。しかし、性別変更事件は当事者対立構造ではなく、なぜそのようなことをする必要があるのかと言われると、よく分からない)。
  • 本判決はいわばダブルバインドの構造を認定することで権利の制約を認めているが、これは「給付条件による権利の制約」とでも言うべき問題群(夫婦同氏制もここに含まれる。令和3年大法廷決定の三浦補足意見参照)との関係で重要な意味を持つと思われる。
  • 一方、「自認に係る性に従って扱われる権利」のようなものを認めたものではないことには注意を要する(宇賀反対意見参照。この点は経産省事件と共通である)。

令和5年10月25日・大法廷

 

なお、他に性同一性障害特例法の未成年子なし要件(令和3年11月30日・3小)がある。

 

表現の自由

「表現の不自由展かんさい」会場の使用許可取消処分

  • 「あいちトリエンナーレ」以来の一連の事件の一部。大阪府の指定管理者は抗議活動(大阪府知事の吉村洋文氏は彼らに同調する意見を繰り返していた)による混乱を主張したが、大阪地裁は7月9日、泉佐野市民会館事件上尾市民会館事件を引用して使用許可取消処分の執行停止を命じた。指定管理者は即時抗告を行ったが、大阪高裁は7月15日これを棄却し、指定管理者はさらに特別抗告を行ったが、最高裁は翌日これを棄却した(最高裁の決定文は公開されていない)。
  • 極めて迅速な判断がなされたが、それほどに明白な違法処分を(実質的には)大阪府が行ったということでもあり、時代背景を反映していると感じる。また、最高裁は特別抗告に対して応答義務を負わないが、それでも即日で棄却したのは、裁判官の危機意識の表明なのではないかと感じる。

(令和3年7月16日・3小)

 

Coinhiveへの不正指令電磁的記録の罪の適用

  • Coinhiveは、Webサイトにおいて、広告に代えて、閲覧者のリソースを使用してマイニングを行うプログラムである。このプログラムを保管していたプログラマが不正指令電磁的記録保管罪で起訴されたが、最高裁は、上記プログラムは不正指令電磁的記録に当たらないとして、無罪とした。
  • 不正指令電磁的記録の2つの要件(「①意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせるべき②不正な指令」)のうち、不正性について、「社会的に許容し得ないプログラムについて肯定される」とし、①「保護法益に照らして重要な事情である電子計算機の機能や電子計算機による情報処理に与える影響」が極めて小さいこと、②広告との同等性、③マイニング自体も「社会的に許容し得ないものとはいい難い」ことから、これを否定した。
  • 不正性について、立案担当者・控訴審最高裁とでは、原則と例外が逆転している(立案担当者・控訴審は、社会的に許容されるプログラムを除外するものとする)。反意図性が容易に認められてしまう結果、不正性という極めてオープンな要件を積極的・実質的な要件と位置付けざるを得なかったのではないかと思われる。
  • 最高裁は、憲法21条1項、31条(明確性)違反を欠前提としているが、そうであるとすれば、翻って、今後は最高裁が示した考慮要素を要件に近づけ、電子計算機の機能や電子計算機による情報処理に実質的な影響を与えない場合には事実上本罪成立しないとの運用を確立することが求められるのではないか。

 令和4年1月20日・1小

 

金沢市庁舎前広場使用不許可処分

  • 憲法施行70周年集会」について、金沢市が庁舎前広場の使用を不許可としたが、合憲とされた。多数意見と宇賀反対意見の対立点は、形式的には、庁舎前広場を庁舎に準ずるものと見るか、公の施設に準ずるものと見るかの点にある(なお、完全に個人的な感想であるが、金沢に旅行した際にたまたま現場の前を通過したが、庁舎に準ずるとまではいえないのではないかと思った)。
  • しかしながら、真の対立点は、(「表現の不自由展かんさい」に典型的に見られるように)対話を拒否し、「敵」と見た勢力の言論を圧力で封じ込めることを是とする政治的雰囲気の中で、金沢市の対応を「市民の集会の内容について被上告人自身がその内容を協賛・後援していると誤解し、被上告人が説明を行ってもその誤解が解けず、被上告人に抗議をしたり、被上告人に非協力的になったりして、被上告人の事務又は事業に支障を生じさせるような市民を一般的市民として措定し、高度にパターナリスティックな規制を行う」ものと見るのか(宇賀反対意見)、それとも、実際にそのような市民が一定数いる以上、金沢市が「外見上の政治的中立性」を追求することもやむを得ないと考えるのか(多数意見)というところにあるのではないかと思う。

 令和5年2月21日・3小

 

「宮本から君へ」助成金不交付決定

  • 補助金交付の裁量について、「芸術的な観点からは助成の対象とすることが相当といえる活動についても、本件助成金を交付すると一般的な公益が害されると認められるときは、そのことを、交付に係る判断において、消極的な事情として考慮することができる」としつつ、萎縮効果は助成金の趣旨と憲法21条1項の趣旨の双方を損なうことから、「消極的な考慮事情として重視し得るのは、当該公益が重要なものであり、かつ、当該公益が害される具体的な危険がある場合に限られる」とした上で、具体的事情に照らしてこれに当たらないとして、考慮要素の過大評価を認め、裁量の逸脱・濫用を認めた。
  • 裁量審査に関しては、神戸高専事件呉市立中学校使用不許可事件等を通じて判断過程審査が定着しつつある一方、どのようにすれば過大評価・過小評価を検証可能な形で論証できるかが課題であったように思われるが、経産省事件と本件を通じて徐々にそれが示されているように思う。

令和5年11月17日・2小

 

なお、他に大阪府ヘイストスピーチ条例(令和4年2月15日・3小)がある。

 

職業の自由

かなりの部分が医事・薬事でもある。

 

タトゥー施術行為の非医師の医業としての処罰

  • 医師法は医師でない者が医業(医行為を業として行うこと)を禁止している。本決定は、医師法の目的と建付けに照らして、医行為を限定的に解釈し、タトゥー施術行為は医行為に当たらないとした(したがって、憲法22条1項を引用しているわけではない)。
  • 一審は有罪、控訴審が破棄・無罪としていたが、控訴審は、医行為該当性について最高裁と類似の判断を示した上で、傍論として仮に本件に医師法17条を適用するとすれば憲法22条1項に違反することをも示していた(資格制は制約が弱いと言われてきたが、控訴審判決は「医師の免許制は各種の資格制の中でも極めて強力な制限であることは明らかで、医師免許を要求することはタトゥー施術業にとって禁止的ともいえる制約になる」ことを指摘し、LRAを厳格に審査している)。
  • 草野補足意見は「医療関連性を要件としない解釈はタトゥー施術行為に対する需要が満たされることのない社会を強制的に作出しもって国民が享受し得る福利の最大化を妨げる」と述べているが、需要者の拡散的利益を供給者の自由に読み込むことは、国民の知る権利に奉仕するものとして報道の自由に一定の保障を与えた博多駅事件を想起させる。
  • なお、本決定後、厚労省アートメイク施術行為は医行為に当たるとの見解を表明している。本決定は、医療関連性の判断に当たって、現に医師が行っているかどうかを考慮しているが、それでは結局医師にとって収益性で規制対象範囲が決まってしまうのではないかと思われる。疾病の診断・治療・予防(で医師が行うのでなければ危険性がある行為)としたのでは美容外科が医行為非該当となってしまうとの配慮があるのだと思われるが(控訴審判決参照。個人的には控訴審判決の該当箇所は無理があると感じる)、狭義の医行為は疾病の診断・治療・予防としつつ、それらに類似する行為(美容外科など。一般化すれば、医師の知識・技能が当該行為を行う上で有用であり、かつ、当該行為に通常伴うリスクを低減する上で医師の知識・技能や医師としての規律が有効であると考えられるような行為ということになろうか)を医行為とみなすのが適切なのではないか(金商法のみなし有価証券のように)。

令和2年9月16日・2小

 

薬機法上の要指導医薬品規制

  • 要指導医薬品規制は、平成25年1月11日で違法・無効とされた対面での情報提供(・服薬指導)を範囲を限定した上で法律上位置付けたもの(ちなみに本件の原告は平成25年の事件の原告が商号変更したもの)。
  • 薬事法違憲判決の比較衡量基準(第一次的には立法府の権限と責務であり、裁判所は合理的裁量の範囲にとどまる限りその判断を尊重すること、その範囲には事の性質上自ずから広狭がありうることを含む)を引用し、具体的な当てはめを行った上で、合憲とした。

令和3年3月18日・1小

 

不正な医学論文掲載行為の虚偽誇大な薬事広告としての処罰

  • ディオバン事件として知られる研究不正事件から派生した事件。なお、その後臨床研究法が制定され、利益相反の可能性のある臨床研究は同法の規制を受けている。
  • 薬事法(現在は薬機法)66条1項は「何人も、医薬品…の…効能、効果又は性能に関して…虚偽又は誇大な記事を広告し、記述…してはならない」としており、広告については誘引性が要求されている。検察は、記事の「記述」にはそれが必要なく、学術論文の投稿も処罰対象に含まれる旨主張したが、三審級全てで排斥され、無罪とされた。
  • 判決は、虚偽誇大広告の趣旨に照らして「記述」にも誘引性が必要との解釈を導いているが(したがって、憲法21条1項や22条1項を引用しているわけではない。この点でタトゥー事件と共通する)、山口補足意見は、検察が主張する解釈を取るとすれば、「それら(注:学術論文の作成・投稿・掲載)が学術活動の中核に属するものであり、加えて、同項が虚偽のみならず誇大な「記事の記述」をも規制対象とするものであることから、学術活動に無視し得ない萎縮効果をもたらし得る」「その結果として、憲法が保障する学問の自由との関係で問題を生じさせる」旨述べている。
  • 裁判所が憲法判断を回避していること自体は妥当だと思われるが、この種の事案では、裁判官に問題状況を理解してもらい、精緻な個別法の解釈を試みなければならないと思わせるトリガーとして、憲法上の主張が実際上重要な意味を持つのではないか。

令和3年6月28日・1小

 

あはき師法の視覚障害者配慮規定

  • 憲法22条1項に関する判例法理の到達点。
  • 本判決は、薬事法違憲判決の比較衡量基準を引用し、さらに許可制についての「重要な公共の利益のために必要かつ合理的」基準を引用した上で、①対象となる社会経済等の実態についての正確な基礎資料の収集、②多方面にわたりかつ相互に関連する諸条件について将来予測を含む専門的技術的な評価を加えること、③これに基づく社会福祉、社会経済、国家財政等の国政全般からの総合的な政策判断を行うことの必要性を指摘した上で、「このような規制措置の必要性及び合理性については、立法府の政策的、技術的な判断に委ねるべき」として、小売市場判決相当の明白性基準を導き、 結論として合憲とした。
  • 薬事法違憲判決、小売市場判決が示したルールの内容やその相互関係はこれまで明らかでなかったが、①薬事法違憲判決の一般論部分の前半である比較衡量基準は職業規制全般に妥当すること、②薬事法違憲判決の一般論部分の後半である「重要な公共の利益のために必要かつ合理的」基準は許可制にのみ適用されること、③小売市場判決は「事の性質」に応じた薬事法違憲判決の「当てはめ」の一例として、許可制であっても広範な裁量が認められる場合を示したものであること、④小売市場判決が広範な裁量を認めたのは、基礎資料収集、専門的技術的評価、総合的な政策的判断の必要性という裁判所の審査能力の限界に起因していること、⑤小売市場判決も目的の審査基準を緩和するものではないこと等が明らかになった。
  • 制約に関して、問題の規定は「上記養成施設等の設置者の職業の自由を、間接的には、上記養成施設等において教育又は養成を受けることにより、免許を受けてあん摩、マッサージ又は指圧を業としようとする視覚障害者以外の者の職業の自由を、それぞれ制限する」ものと認定したことは参考になる。タトゥー事件と対比すると、あんま師等どなろうとする者の利益が拡散的利益としてではなく、権利として位置付けられている。

令和4年2月7日・2小

 

景品表示法の不実証広告規制

  • 不実証広告規制は、優良誤認表示規制の迅速な執行のため、内閣総理大臣消費者庁長官)が事業者に裏付け資料の提出を命じ、期間内に合理的な根拠を示す資料が提出されなかった場合、優良誤認とみなすもの(消費者庁取消訴訟における立証負担が軽減される)。職業の自由との関係では、要指導医薬品規制と同じ、警察目的の行為規制(非参入規制)の事案である。
  • 判決は、判断基準を特に示すことなく具体的な当てはめを行い、「目的が公共の福祉に合致することは明らか」、手段は「必要かつ合理的」として憲法21条1項、22条1項適合性を認めた。
  • なお、その際、「同項が適用される場合の措置命令は、当該事業者が裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を備えた上で改めて同様の表示をすることについて、何ら制限するものではない」という解釈を示している。

令和4年3月8日・3小