「AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル型コード(仮称)(案)」に関するメモです。
- AI推進法との不整合
- AI推進法は、イノベーション促進とリスク対応の両立、国際整合性、政府の情報統制や過剰規制の回避を趣旨としており、EU法を移植することは同法全体の趣旨に反するのではないか。
- AI推進法13条の「国際的な規範の趣旨に即した指針の整備」を定めているが、EU法の透明性義務は世界的に特異なものであり、これのみを参照することは同条の趣旨に反するのではないか。
- AI推進法16条は、包括的な事前規制よりも、真に悪質な事案への対処を優先する趣旨と解されるところ、本コードを正当化するような態様で悪質事案が生じていることが示されたとは言えず、そのような状態でコードを策定することは同条の趣旨に反するのではないか。
- 機関投資家と生成AI事業者の立場の違い等
- 機関投資家は、顧客・受益者に対してフィデューシャリー・デューティーを負うが、生成AI事業者は、著作権者に対しては著作権を侵害しない義務を負うに過ぎないから、スチュワードシップ・コードを参照する合理性がないのではないか。
- スチュワードシップ・コードを参照したのは、OECD勧告にいう“stewardship”を意識したのかもしれないが、OECD勧告における"stewardship"は危険源の管理者としての責任を意味しており、機関投資家の顧客・受益者利益を最大化する義務とは異なるのではないか。
- 市場原理(競争)に言及があるが、生成AI利用者にとっては学習段階での権利侵害の有無は関係がない事柄であり、また、生成AI事業者と著作権者は当然には取引関係にはないから、市場原理が働くことはないのではないか。
- 生成AI事業者と権利者の相互理解に言及があるが、知的財産権は、文化の発展等の観点から、対価回収の機会の保障と第三者の自由の保障の比較衡量の上にその保護範囲が定められ、準物権又は法定債権として行使されるものである(これに対し、ファンドをどのように運用するかは基本的に市場に委ねられている。)から、相互理解を促進すべき場面とは異なるのではないか。
- 日EUの著作権法制の違い等
- EUのDSM著作権指令4条では、合法アクセスやオプトアウト尊重が要件とされており、開発過程の慣行(ペイウォールの尊重、robots.txtの尊重等)が侵害の成否に影響しやすい。これに対し、日本の著作権法30条の4では、非享受目的や権利者の利益を不当に害しないことが要件とされており、これらは規範的かつ外形的事実(そこから推認可能な事実を含む。)から判断だから、EUのように広範囲な開発過程の開示を求める必要性が乏しいのではないか。
- 特定URLが学習データに含まれるかについての回答は、EUでも求められておらず、出力から推認できるため必要性が乏しく、開発者負担が過大であるため相当性を欠くのではないか。
- 本コードは、学習データのログ保存について、AI事業者ガイドラインを引用しているが、被引用箇所は、出力(推論)に関するものであって、学習に関するものではないのではないか。