金融商品取引法はいかなる意味で情報法か

まだリサーチが足りていないですが、標記について、現時点のメモを書いていきます。

なお、証券取引とデジタル技術・ソーシャルメディアに関するIOSCOの4文書の紹介 - Mt.Rainierのブログもご参照ください。また、関連する重要文書として、Report on Retail Distribution and Digitalisation Final Reportがあります。

 

  • 金融商品取引法は、開示規制、業規制、不公正取引規制からなっている。開示規制は有価証券の発行体、業規制は有価証券の取引の仲介者(自ら販売者となることもあれば、媒介にとどまることもある。)、不公正取引規制は、有価証券の取引者に適用されるルールである。
  • 開示規制は、投資家と企業(経営者)の間の情報の非対称性を前提に、それを解消するために、企業内容等の開示(つまり金融論でいう情報生産)を義務付けるものである。これは、情報法そのものだと言えるが、発信者が一人(=有価証券の発行体である企業)に限定されており、監査法人による監査を通じて情報の信頼性が一定程度担保され、流通経路もEDINETに一応は一元化されている点で、最近のいわゆる「情報法」とは問題状況が異なるかもしれない。
  • 業規制は、それ自体は情報法ではないが、サブセットの一つとして販売・勧誘規制があり、これは、情報法としての側面がある。販売・勧誘規制においては、概ね、一対多のコミュニケーションが広告、一対一のコミュニケーションが勧誘とされ、両者についてdos and dont'sと体制整備義務(後者については外務員の資格制を含む。)が課されてきた。もっとも、現在、パーソナライズド広告(最近は人に応じた出し分けだけでなく、内容自体をその場で生成する/組み合わせる手法も表れている。)、(生成AIがそうであるように)機械によるインタラクティブなコミュニケーションといったものが一般化している。これらは、現時点では金商業への応用は極めて限定的だと思われるが、代替的な規制(例えば透明性とモデルの適切性;金商業者には利益相反管理体制が課されており、implementationに向けた素地はあると言える)の下であれば、(事実上)禁止する必要まではないと思われ、今後、規制の見直しがありうるかもしれない。
  • 不公正取引規制も、それ自体は情報法ではないが、情報流通によって市場が歪曲される場面で、情報法の問題となる。「情報流通と民主主義」の問題については、情報法分野で一定の議論の蓄積が形成されつつあるが、それは証券規制にも一定程度応用可能であり、将来的には、証券規制のエンフォースメントにおいて、SNSや動画共有サイトに重要な役割が期待される時代が来る可能性もある。
  • また、無登録業者への対処においては、彼らの主要な活動の場がSNSや動画共有サイトとなっていることから、不公正取引規制と併せたエンフォースメントが行われるかもしれない。