金融法委員会「「為替取引」の実務対応に関する論点整理」について

金融法委員会のペーパー「「為替取引」の実務対応に関する論点整理」が公表されていたので、それについて書いていきます。

 

本ペーパーの構成

  • 本ペーパーは、大きく分けて、背景の説明(I)、判断枠組み(II)、事例への当てはめ(III、IV)からなっている。
  • IIは、これまでの議論の整理(1)と、本ペーパー自身の考え方(2)からなっている。
  • 当てはめのうち、IIIは、為替取引該当性が正面から問題となる事例(収納代行、立替払、振込代行、販売代理店業務等)、IVは、他の規制枠組みの対象となっていることをもって為替取引とは考えられない事例(前払式支払手段、クレジットカード、電子決済手段)を対象としている。

 

紹介とコメント

  • 本ペーパーは、信用リスクを「「為替取引」の判断に際しては…最も重視すべき考慮要素」(24頁)とする一方、ML/FTリスクについては、明確に、「「ML/FTリスクが高いこと」を過度に重視して「為替取引」と評価することには慎重な検討を要する」(26頁)とする。このように、保護法益の(類型的な)重み付けを行っていることが、本ペーパーの特徴の一つである。
  • この帰結として、例えば、本ペーパーは、「信用リスクが生じない立替払スキームに関し、オペレーショナルリスクだけを強調して「為替取引」とする議論を行う場合、その外延が不当に拡大する可能性もあり、慎重な検討を要する」とする(25頁)。一つの明快な立場だと言える。
  • 一方、信用リスク(やオペリスク)だけで全てが解決するわけではない。債権債務関係(それは信用供与に他ならない。)があれば、信用リスクはあると言えるからである。つまり、為替取引該当性が正面から問題となる多くの事例では、信用リスクの有無ではなく、その性質が問題である。これに対する本ペーパーの回答は明快であり、「「為替取引」該当性の判断に当たっては、信用リスクの有無を出発点としつつ、当該リスクの発生原因やリスク負担者の要保護性の観点から評価される信用リスクの性質に照らして、金融規制としての「為替取引」規制を及ぼすべき必要性が低い取引領域があり、かかる領域に含まれる取引については「為替取引」に該当しないとする考え方もあり得る」、「信用リスクの有無及び性質は、当該サービスにおける資金移動の方法や資金仲介者が受任する事務の内容を含む事実関係及び法律関係に基づき個別具体的に判断される」(34頁)としている。この判断枠組みがどのように機能するかは、IIの各事例を通じて示されている。専門家間では、しばしば「資金移動それ自体を受託しているわけではない」、「自己の債務の履行である」といった言い回しがされるが、これらは上記の判断枠組みに回収される(30頁〜31頁)。
  • その他、「従来の議論との関係では、資金の移動に関する仕組みが複雑になることに起因してオペレーショナルリスクが高まる傾向があるという議論が行われてきた」(24頁)、「取立為替において、受取人たる債権者は、送金人たる債務者の倒産手続等の開始により当該債権の弁済を受けることが困難になるリスクを元々負っていたのであるから、受取人たる債権者が資金仲介者たる銀行等の信用リスクを負担するとしても、債務者の信用リスクが銀行等の信用リスクに置き換わったに過ぎない(33頁)といった指摘は、従来の取扱いや議論がうまく位置づけられていると感じた。
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